EPICレーベル45周年!異色の音楽番組「eZ」とはいったいなんだったのか?  MCや司会は存在せず!EPICソニー所属アーティストのPVやライブ映像を流す異色の音楽番組

伝説の音楽番組「eZ」で放送された珠玉の60曲以上が一気に配信

1988年4月から1992年10月までテレビ東京系列で放送されていた音楽番組『eZ』。今月21日、EPICレーベル創立45周年記念イベントの一つとして一夜限定でotonano YouTube Channelで復活を果たした。約5時間にわたりセレクトされた珠玉の60曲以上が一気に配信され、当時の音楽キッズたちの胸を熱くさせた。

配信後には、「初めてこのアーティストのことを知った。かっこよかった。改めて聴き直したい」、「この人もEPICソニーだったのか」など、多くの声が上がり、オンタイム組としては嬉しく思ったし、改めて色褪せない名曲達にも唸った。私自身もEPICソニーを愛する人間の1人として、ひとときも目が離せなかったし、とにかく懐かしさとともに自分の思い出もプレイバックされて、とても素敵な時間となった。

EPICソニーが制作した音楽番組「eZ」とは?

さて、音楽番組『eZ』について、改めておさらいとして書いておきたいと思う。

EPICソニーが制作した30分の音楽番組。MCや司会は一切存在せず、EPICソニー所属アーティストのPV(Promotion Video)やライブ映像が流される異色の音楽番組だった。

一つの舞台セットをアーティストたちが共有し、曲を披露していくようなスタイルも印象的だった。個人的に一番記憶に残っているのは、外国の少し荒れ果てたようなビルかアパートメントが舞台の1988年の回。ビルの隙間に入っていくとTHE MODS 「PLEASE DON'T LET ME DOWN」のPVに繋がっていったり、大江千里がビルの前で演奏し歌ったり。

TM NETWORKも遊佐未森も、同じビルのセットから物語のような延長で曲のPVへと繋がっていく。ただPV紹介として流すだけでなく、こうして大がかりなセットを作り、30分番組がまるで一つの物語のようでもあった。こういうオシャレで凝った遊び心たっぷりなところがEPICソニーらしさだ。EPICソニーのスタッフなら、ただPVを流すだけの番組作りなんて絶対しないだろう。それこそが、我らのEPICソニーなのだ。

渡辺美里のロックンロール! 松岡英明「WONDERLAND」

ここからは改めて配信番組で印象に残ったシーンについて書いてみたい。

パフォーマンスとして印象に残ったのは1988年に放送された渡辺美里「ライブダイジェスト」。ステージを所狭しと動き回る渡辺美里がとにかくアグレッシブ! 音に体を委ねて激しくダンスする美里。それなのにほとんど歌声がブレない。この若さで圧倒的な歌唱力。この頃の渡辺美里のライブはかなり足を運んだが、歌声もパフォーマンスも鋭いナイフのようで、シャウトするシーンはまさにロック! そして89年放送回の「虹を見たかい」も、とても見応えがあった。「虹を見たかい」の低音から入る歌声の迫力。この頃の渡辺美里のロックンロールは、とにかくとてつもなく凜々しくてカッコイイという言葉だけでは足りないほどだった。

そして当時から大好きでどれほどトークライブに足を運んだか分からない松BOWこと松岡英明の「WONDERLAND」。この曲が流れると自然と踊り出したくなってしまう。楽曲の素晴らしさはもちろんなので、また別の機会に書くとして(笑)、今回はこの曲の画面に注目してほしい。カラフルな英語の文字が並び、それらの文字が集合しEとZの文字を作りだしている3D仕様。曲が始まると、この文字を松BOWが元気いっぱいに飛び越えて… もう何度も見ているはずなのに、今回改めて「うわっ、これって手作り!」と思ってしまったという(笑)。 今の時代、CGに慣れているため、3Dに見せかける手作りセットに衝撃。そして、よーく見ると確かに手作り感満載なのだ! どれほどこのセットを手作りすることが大変な作業だっただろうかとしみじみ思った。

ほかにもTHE STREET SLIDERSの「Baby, Don't Worry」の手の込んだペインティングのサイケな背景しかり、とにかくそこかしこからアーティストと音楽への愛と、曲を売り出すためのスタッフの並々ならぬ情熱が伝わってきた。

80年代、90年代のEPICソニーとは、「eZ」とはなんだったのか!?

そして、改めて多くの人が愛して止まない80、90年代のEPICソニーとは一体なんだったのか考えてみたい。こうした手の込んだセット一つとっても、「遊び心の真剣さ」みたいなものを感じさせられる。そう、そうしたことこそが、私たちが夢中になったEPICソニーの心なのだ。もちろん魅力溢れるアーティストの存在はもちろんだが、さまざまな販促、プロモーション、仕掛けを作りあげたスタッフの一人ひとりの想いや情熱に私たちは魅了されてきた。「eZ」のような番組しかり、PVしかり、どの場面からもしっかりとスタッフの音楽に対する真摯な姿が私たちには伝わっていたし、だからこそアーティストの曲がさらに深く心に届き、夢中になることができたのだと思う。

「好きなものに対して、とことん情熱を注げ」という教えのような、スピリッツのようなものを、私は曲を通してEPICソニーのスタッフから教わったと思っている。音楽の素晴らしさ、音楽へのリスペクト、そして何事にも遊び心を忘れず真摯に取り組む姿勢みたいなものを教えてくれたのがEPICソニーなのだ。だから今でもEPICソニーに恋こがれる自分がいる。そして生きる上での指針や道しるべにもなっている。

最後になりましたが、愛するEPICソニーさん、45周年おめでとうございます! 昔も今も、そして死ぬまで永遠にEPICソニーっ子でいさせてください!

カタリベ: 村上あやの

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