【コラム】G2Eアジアが4年ぶりマカオ復帰もマシンメーカーの出展なし(WEB版)/勝部悠人

マカオ・コタイ地区にある統合型リゾート(IR)ヴェネチアンマカオ併設のコタイエキスポホールで7月11~13日の3日間、ゲーミング業界の国際見本市「G2Eアジア2023」が開催された。

同展は、アメリカゲーミング協会と国際見本市大手リード・エグジビションズの共催で2007年にスタートし、2019年まで13年(回)続けてマカオで開催されてきたが、コロナ禍による渡航制限などの影響を受けて2020年から2022年までリアル開催の見合わせが続き、今回ようやく4年ぶりに復帰するとあって大きな注目を集めた。

なお、G2Eアジアは早い段階でウィズコロナ政策に転換したシンガポールのマリーナベイサンズで2022年にスペシャルエディションと銘打って開催。今年もシンガポール(5月30日~6月1日)開催は継続となり、マカオの2拠点体制となった。

主催者は事前アナウンスの中で、今回のマカオ版の会場面積は約1.5万平米、出展社数は100超、推定来場者数(バイヤー及びトレードビジター)は5000人超で、コロナ前と比較して半分程度の規模にとどまるとしていた。これを頭に入れた上でエキジビション会場へ取材に訪れたが、まず驚いたのが例年巨大かつ華やかなブースを競い合うように出展していたカジノマシンメーカーのブースがひとつもなかったことだ。カジノ用品を扱うブースはいくつか出ていたものの、その数は指折り数えるほど。今回、初開催となるアジアンIRエキスポを併催するとあったが、残念ながらエキジビション会場でそれを感じることはできなかった。日系については、プレイングカードのエンゼルマカオとカジノ用品のマツイアジアがブース出展しており、エンゼルは会場でもひときわ目立つ大型ブースを展開し、多くの訪問者を集めているように見えた。両社ともシンガポールとマカオの両方にブースを出展したそうだ。

先行開催されたシンガポール版には日系を含む複数のカジノマシンメーカーが出展していたものの、規模そのものは往年のマカオと比べて見劣りしたと聞く。同じイベントでシンガポールとマカオの開催時期が近かったことから、常連の出展者が前年も開催があったシンガポールへシフトし、今回マカオは様子見と判断したのかもしれない。G2Eアジアそのものがコロナ禍からの回復途上にあるといえるだろう。

G2Eアジアは、エキジビション会場のブースのみならず、業界の専門家らによるカンファレンス(セミナー及びパネルディスカッション)もコアコンテンツとなっている。こちらについては、地元マカオや海外から業界のキーパーソンが登壇するなど、それなりに充実していた。日本市場に特化したものはなかったが、「IRとカジノ開発:今後のトレンドと課題」をテーマとしたパネルディスカッションに日本MGMリゾート代表執行役員社長CEOのエドワード・バウワーズ氏がIR事業者のパネリストの一人として登壇した。アジアンIRエキスポとしても独自にプログラムを用意したことで、テーマの幅が広がった感はある。

会場では、ネットワーキングのため会場を訪れたというカジノマシンメーカーの関係者や視察にやってきたという日本版IRの関係者とも会うことができた。この時期にマカオにいることに意味があるという言葉が印象に残った。規模としては明らかに縮小したものの、カジノ業界の情報・人材ハブとしての機能に期待されていることを実感した。

規模はさておき、マカオでのリアル開催が復活したことを素直に評価したい。来年についてはシンガポールとマカオの2都市体制が維持されるのか、いずれかに特化するのか現時点では未発表だが、いずれも中途半端な規模になるくらいなら1都市に絞っての開催がG2Eアジアの金看板を活かせるように思う。

目下、マカオのカジノ市場はインバウンド旅客の戻りと歩調を合わせるように急回復が進んでいる。マス(平場)が市場の回復を牽引しているとされ、マシンメーカーにとっては好機かもしれない。ただし、マカオでは改正カジノ法によりゲーミングテーブルとゲーミングマシンの台数に上限が設けられ、すでに上限いっぱい稼働している状況。このあたりが今後のマシンメーカーの出展にどう影響するのか気がかりだが、やはりG2Eアジアの花形的存在であり、再びエキジビション会場でけたたましいサウンドの洪水を浴びたいものだ。

4年ぶりにマカオでリアル開催された「G2Eアジア2023+アジアンIRエキスポ」のエキジビション会場の様子=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。

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