山口組分裂から8年、際立つ勢力差 神戸山口組は千人未満、有力団体が相次ぎ離脱 暴排強化も背景に

今年6月末、ガソリンのような液体がまかれた神戸山口組の井上邦雄組長宅周辺を調べる捜査員ら=神戸市北区

 神戸市灘区に拠点を置く日本最大の暴力団「山口組」から、「神戸山口組」(兵庫県稲美町)が分裂して27日で丸8年になる。警察庁の全国統計によると、山口組の構成員らの2022年の人数は、取り締まりの強化などを背景に、15年から約4割減の8100人。中核団体の離脱が相次いだ神戸山口組は約9割減で千人を割り込み、勢力差が際立つ。

 「抗争を早く終わらせたかった」

 今年2月、神戸地裁。神戸市北区にある神戸山口組の井上邦雄組長宅に発砲し、建造物損壊などの罪に問われた男が証言した。

 男は神戸山口組と抗争状態にある山口組系の組員。何らかの指示を受けたわけではないとする一方で、「井上(組長)が引退すれば、抗争は自然と終わると思った」とも述べた。

 井上組長宅では6月末にも別の山口組系組員がガソリンのような液体をまき、放火予備罪で起訴された。発砲した男の説明には不明な点も残るが、捜査関係者は「幕引きを図るため、山口組が攻撃姿勢を強めている可能性はある」とみる。

   

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 警察庁の毎年末の全国統計によると、分裂があった15年の構成員らの人数は山口組が1万4100人で神戸山口組が6100人。その後、両組織とも20年まで減少傾向が続き、神戸山口組から離れた「絆会」(大阪市中央区)も18年の770人から減り続けている。

 21年、山口組が前年比300人増の8500人となったのに対し、神戸山口組は6割減の千人に急落、県内の人数も逆転した。神戸山口組の中核団体だった「山健組」の山口組への合流や「池田組」の独立の影響が大きいとされ、この1年でも、淡路市の有力団体「侠友(きょうゆう)会」が解散届を出すなど神戸山口組の退潮傾向が顕著になっている。

    

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 「暴力団対策法の規制などによる取り締まりの強化で、資金源の確保が難しくなっている」。山口組を含め暴力団全体で構成員らの離脱が進む背景を兵庫県警の幹部が分析する。

 住民、行政と連携した排除運動も活発化。尼崎市では、分裂時に8カ所あった暴力団関係施設が昨年9月にゼロになった。

 一方で、山口組と神戸山口組の抗争とされる事件は今年7月末現在で147件(警察庁調べ)に上る。昨年8月以降も7件起きており、県警は警戒態勢を保つ。

【山口組の分裂】現在の「6代目山口組」体制の組織運営や高額な上納金(会費)への反発から2015年8月、一部の直系団体が離脱して「神戸山口組」を結成した。両組織が衝突する事件が相次ぎ、20年には活動を厳しく制限する「特定抗争指定暴力団」に指定された。神戸山口組からは、17年に「絆会(旧・任侠山口組)」が離れ、18年に指定暴力団に。池田組については、昨年末に山口組との間で特定抗争指定暴力団に指定された。

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