EL人気健在!! 盛況の「国際鉄道模型コンベンション」を取材 伊藤桃さん、徳永ゆうきさんのトークもご紹介【レポート】

会場はビッグサイトの東1ホールすべて。鉄道模型のすそ野拡大を目指した「親子で楽しむジオラマ教室」、「鉄道模型・車両はんだ付け教室」といった講座も設けられました

鉄道模型愛好家を中心に、すべての鉄道ファン待望の真夏の祭典、22回目の「国際鉄道模型コンベンション(JAM)」が2023年8月18日から3日間、東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれ、盛況のうちに終了しました。今年のテーマは「電気機関車(EL)」。

客車列車がほとんどだった一昔前、先頭に立つELは文字通りの花形でした。電車が主流になった現代、貨物列車を除けばちょっぴり影が薄くなったような気がします。しかし会場には、EF58をはじめとする古今東西の名機が模型や写真で勢ぞろい、「EL人気いまだ健在」を強く印象付けました。

峠のシェルパは今――

「国際鉄道模型コンベンション(JAM)」は実行委員会方式のイベントで、実質主催者は東京都品川区の模型メーカー・井門コーポレーション。出展は愛好家(モデラー)が約70団体、模型メーカーが約50社で、JAMがメーカーとファンをつなぐイベントということが実感できます。

まずは今年のテーマ・ELにちなんだステージイベント。JAMおなじみの鉄旅タレント・伊藤桃さんのトークショー。「EF63体験運転」のタイトルで、ELをみずから走らせた体験談を熱く語りました。

あらためての説明は不要でしょうが、1997年の北陸(長野)新幹線開業まで、国鉄・JR屈指の難所だった群馬・長野県境の碓氷峠(信越線横川―軽井沢間)。最急66.7‰の急勾配を上り下りする列車の補機(補助機関車)として活躍したのが、〝峠のシェルパ〟ことEF63です。

新幹線開業で役目を終えましたが、今も複数両が動態保存され、群馬県安中市の横川運転区跡に開設された鉄道テーマパーク「碓氷峠鉄道文化むら」で、体験運転できます。

「うなるMGやコンプレッサーの振動音に感激」(伊藤さん)

EF63は約400メートルにわたる旧信越線の線路を自走します。しかし、体験運転といってもすぐにハンドルを握れるわけではありません。国鉄の機関士養成にならい、法規や機器類の講座を受講して合格すると、晴れて運転資格を取得できます。

文化むらでは、運転回数に応じ機関士見習、補助機関士、本務機関士、優良機関士、優秀機関士、名誉機関士と昇格します。「中には1000回以上、体験運転した方も」(伊藤さん)という話を聞けば、総重量100トンを超すELを動かす魅力が伝わってきますね。

ELを運転して感じたのは、「うなるMG(電動発電機)やコンプレッサー(ブレーキ用の空気圧縮機)の振動音」。年季を示す鉄道の音は、実機ならでは。運転シミュレーターにはありません。トークからは、伊藤さんが本物の鉄道ファンということが伝わりました。

「ルーツは大正年間創業の百貨店」(井門コーポレーション)

井門コーポレーションは「Models IMON 25年の軌跡」のタイトルで、鉄道模型進出後の四半世紀に送り出した模型を展示しました

次いで、2つの出展ブースを取材しました。1つ目はメーカー代表、JAMを運営する井門コーポレーション(ブース名は「Models IMON」)に話を聞きました。

井門グループのルーツは大正年間に創業した東京都品川区の百貨店。今も小売りから不動産管理、レストランと多彩な事業を手掛けます。

鉄道模型への本格進出は1997年の「モデルス井門原宿店」開店から。最近の同社で注目したいのは、鉄道模型界全体を下支えする活動です。

2015年に継続が難しくなったJAMの運営を引き継ぎ、その後も廃業した模型メーカーのスタッフや製品を継承します。2019年には、名門誌「鉄道模型趣味」を発行する機芸出版社が井門グループに加わりました。

盛況な鉄道模型界も、メーカーの多くは中小零細企業。後継者難は一般産業界と変わりません。井門コーポレーションは、家内工業的な一面を持つ模型界に新しいビジネスモデルを定着させつつあるのかもしれません。

最高齢91歳、模型製作で年齢知らずの「チームおやびん」

自作した国鉄・JRのワンマン車両でメンバーが共演した「チームおやびん」ブース。真偽は不明ですが「おやびん」のびんは「(ビール)瓶」とか。運転会の後の懇親会(飲み会)が楽しみな様子が伝わってきます

続いて、モデラー出展者から「チームおやびん」ブースを訪問。メンバーは、鉄道模型趣味などで多くの作品を発表してきた有名モデラー約20人です。チームは、2023年で結成約20年の歴史を持ちます。

JAMへの参加はメンバーの大きな活動目標で、今年は「国鉄・JRのワンマン運転車」がテーマ。ペーパー車体を基本に、北海道のキハ40系気動車やJR加古川線の103系電車などが集合しました。

メンバーは公募するわけでないので、年々高齢化が進みます。最高齢は91歳。でも「模型製作に没頭していると、年齢を忘れますね」と元気いっぱいに話してくれました。

EF66とEF510の写真を披露(徳永ゆうきさん)

ラストは、演歌歌手・徳永ゆうきさんのステージ「唄う鉄道」。Instagrmに2つのアカウントを持つ徳永さんは、鉄道のフォロワー数が歌のそれをはるかにしのぐという(ご本人談でジョークかもしれませんが)、熱心な鉄道ファンです。

トーク前半は、JAMのテーマにちなんで、タンカー(タンク貨車列車)の先頭に立つEF66と、コンテナ列車をけん引するEF510のマイ写真を披露。EF66は南武線尻手、EF510は東海道線清洲での撮影で、両機ともに長時間待機した「忍耐の一枚」だそうです。

鉄道VS飛行機、移動手段はどっち

徳永さんのトークで、思わず「あるある」とうならせされた一席。地方での公演やキャンペーンの際、マネージャーは当然、飛行機での移動を考えます。ところが徳永さんは迷わず列車での移動を主張。タレントとマネージャーの力関係が理由でもないのでしょうが、結局はマネージャーも列車に乗車することになります。私は思わず、「マネージャーさん、大変ですね」と同情したくなりました。

徳永さんのステージは、「上枝(ほずえ、高山線)」、「朝来(あっそ、紀勢線)」、「為栗(してぐり、飯田線)」などの珍名駅が歌詞に登場するオリジナル曲「恋は難読駅名」で幕。鉄道番組への出演も多い徳永さん、「これからも鉄道趣味の世界を盛り立ててほしい」と思いながら会場を後にしました。

記事:上里夏生

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