”高級西成ホテル“JUNON Groupの基幹的存在「ホテルジパング」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(16)】

紫陽花が咲き始めた。菖蒲が咲き始めた。梅の木はとっくに花が無くなり、緑豊かな風貌へと変化している。北海道すら桜も終わり、もう誰も桜の話をしていない。

G7首脳が広島に来た。歌舞伎界では大変な事が起こった。日常が坦々と過ぎる。気がつけば、Yahoo!トップページから、コロナ関係のバーが無くなっている。

5月も関西へと向かった。前回からスカイマーク105便、13時羽田発、14時15分神戸着。案件が明石だったので、終えてから西成へと向かった。明石から大阪方面へはJRが一番便利だが、敢えて別ルートを選択した。

山陽線直通特急で阪神梅田駅、大阪メトロ四ツ橋線西梅田駅から大国町駅、大阪メトロ御堂筋線で動物園前駅。約1時間半弱、1,180円だが、ほぼ座って行けるという利点。

今回の宿泊は「ホテルジパング」。

JRと平行に走る大通り沿い。大阪メトロ動物園前駅と南海電鉄新今宮駅の間に位置し、交通便利&西成では特に安全な地域。

覚えているだろうか、連載第1回目の「HOTEL SUNPLAZAⅡANNEX(ホテルサンプラザ2アネックス)」の右隣(東側)で、奥で繋がっていて男性大浴場を紹介したのがこちら「ホテルジパング」。というよりこちらが「JUNON Group」の基幹的位置づけ。

創業40年とはいえ、館内はリノベーションされていて、清潔感が漂うのは、さすがJUNON Group。

大阪府の「全国旅行支援」も7月1日(土)チェックアウトまで延長され、1泊素泊まり3,100円(税込)が205引きの2,480円。平日なので2,000円クーポンが付くので、実質480円。

僕はワクチン接種を3回しているので接種証明があるが、現在はコロナワクチンの接種証明、陰性証明は不必要で、日本国内に住所があり本人確認ができる身分証明書の提示だけで恩恵を受けられるようになった。

1階フロント前には無料のレンタル傘が整然と並べられていた。ここからして、きちんとしたホテルなことが伺える。

耳栓も無償で提供されていて、西成特有の壁の薄さにも対応している。

そしてロビーには広々としたダイニングキッチンや、フリースペース。インバウンドの観光客も多く、和気あいあいとした雰囲気を醸し出していた。

素晴らしいのはコーヒーなどのフリードリンクのほか、氷まで無料提供。電子レンジやトースターも設置され、調理器具まで用意されている。ソフトドリンクやアルコールなどの自動販売機も館内に。門限は午後11時だが、夜間出入口があるので、実質は門限は無い。

数日~数週間、数か月の滞在も問題なく快適に過ごせる印象は、さすがだ。

チェックインし、これまた清潔感のあるエレベーターで部屋へと向かう。廊下も室内もモノトーンでまとめられて、シックな雰囲気。

重厚なドアを開けて、驚いた。

洋室に、布団類が2セットある。しかも、微妙に広い。改めて予約内容を確認すれば、4畳と書かれていた。

どうやら、ツインルームのシングルユースの模様。通常なら3,700円の部屋のようで、少しお得な設定だったようだ(通常は3畳シングルが3,100円らしい)。

早速、布団を敷いてみる。ブレスエアーマットで快適だが、2セット並べるのは可能ではあるが、ギリギリな感じ。

ふと見ると常備型のスリッパが2セットあるが、ハンガーは2本しか無かった。

とはいえ、テレビも冷蔵庫も独立型エアコンもフリーWi-Fiもあり、さらには洒落た照明器具も設置され、居心地さは抜群。コンセントもわりと多く、充電にもうってつけだ。

アメニティは、他の系列同様に、タオルとハブラシ、ティッシュだった。

部屋のドアには廊下が見えるドアアイ(のぞき穴)があり、蓋の無いタイプだったので持参しているシールを貼って隠し、僕は恒例の館内探検へと出かけた。

各フロアには、男女別のトイレがあった。もちろんウォシュレットタイプ。

非常階段も分かりやすく、火災など有事の際も安心。

1階のほか、2~4階にも共用のキッチンがあった。

シャワールームは4基設置されていた。JUNON Groupお揃いのオリジナルシャンプーなど。きちんと清掃も行き届いている姿に敬服すら覚えた。共用のドライヤーももちろんあり、その奥のドアを開ければ、洗濯機&乾燥機(ともに有料)も備え付けられていた。

シャワーを浴びてドライヤーで髪を乾かした後、僕はコンビニに夕食を買いに出かけた。

全国旅行支援の2,000円クーポンで、また居酒屋などに行くのも良いが、今回は復路がLCCのピーチで関西空港→成田空港なので、クーポンは関空第2ターミナルのゲート内でお土産を購入することにしたのだ。ピーチは手荷物がキロの制限があり、ゲート入場時に重量検査がある。ゲート内で購入することにした理由は書けない。

ホテルを出たのは午後7時前だった。ふと思いつき、東方向へと少し歩いた。

「大阪救霊会館」、西成に数か所存在するキリスト教の教会のひとつ。ウェブによると、日本ペンテコステ教団の運営で、プロテスタントのよう。

西成には、さまざまな方が居住している。日雇い労働者や生活保護受給者、皆それぞれ過去を抱えて生きている。その拠り所となっている教会のひとつがこちら。

ちょうど、礼拝が終わったのだろう。ぞろぞろと礼拝者たちが出てきた。

翌朝の西成も天気が良かった。部屋の窓を開ければ隣のビルで、眺望は何も期待できなかったが日の光も入るし、窓があるだけ何より。

「ホテルジパング」は大浴場があるのも魅力だ。

しかも男性大浴場は午前7時半〜10時と午後3時〜午前1時、隣接し奥で繋がっているHOTEL SUNPLAZAⅡANNEXにある女性大浴場は午前7時半〜10時と午後3時〜10時の営業なので、ともに朝に入浴することも可能。さすが1泊3,000円クラスの“高級西成ホテル”だ。

チェックアウト後、久々に西成の街を散策してみた。

2019年3月に老朽化のため閉鎖された「あいりん総合センター」の外側敷地内には、相変わらず路上生活者が何人もいた。近隣に星野リゾート系ホテルや煌びやかな”高級西成ホテル“が建ち、日々変わっていくように見えても、何も変わらない、何も変われない西成も、そこにあった。

■プロフィール

はんつ遠藤

1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊

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