NISA口座はどう選べばいい? 失敗しない選び方をお金のプロが解説

「神改正」と呼ばれるほどの大きな制度拡充が話題の新NISA。新NISAを利用するには、金融機関への口座開設が必要なのですが、新NISAの口座は1人1口座しか作れません。そして、金融機関によって新NISAのサービスは違います。となれば、自分に合った金融機関でNISA口座を開設したいですよね。

今回は、NISA口座をどこで開設するかを悩んでいる方に、失敗しないNISA口座の選び方のポイントを解説します。


「新NISAでどんな投資をするか」を考えよう

新NISAの口座選びで考えておきたいのは、新NISAでどんな投資をするかです。新NISAでは、現行NISAのつみたてNISA同様の「つみたて投資枠」と、一般NISA同様の「成長投資枠」を併用して投資ができます。なお、併用しなければならないわけではなく、どちらか片方だけを利用することもできます。

つみたて投資枠と成長投資枠の特徴を、簡単にまとめておきます。

【つみたて投資枠】
・年間120万円まで投資可能(生涯投資上限1,800万円)
・金融庁の基準を満たす投資信託・ETFに投資できる
・積立投資のみ

【成長投資枠】
・年間240万円まで投資可能(生涯投資上限1,200万円)
・上場株式・ETF・REIT・投資信託に投資できる
・一括投資も積立投資もできる

これからNISAを利用してお金を増やしていくならば、まずはつみたて投資枠を優先して使いましょう。堅実にお金を増やすことができるからです。

つみたて投資枠では、金融庁の基準を満たした、長期でお金が増やせると考えられる投資信託に少額から積立投資ができます。投資信託は1本で複数の投資先に分散投資できる商品ですから、つみたて投資枠を利用するだけで投資の王道である「長期・積立・分散投資」が手軽に実現します。そしてもちろん、運用益が無期限で非課税にできます。

新NISAでつみたて投資枠を利用する場合の金融機関はどう選ぶ?

新NISAでつみたて投資枠だけを利用する場合、金融機関は次の7つのポイントに着目して選ぶとよいでしょう。

1.積立の頻度が細かく設定できるか
多くの金融機関では、毎月決められた日に一定額購入する「毎月積立」ができます。しかし、金融機関の中には、それよりもさらに細かく「毎週積立」「毎日積立」ができるところもあります。実は検証してみると、そこまで劇的な差はないのですが、毎日積立のように積立頻度が細かい方が有利です。積立の頻度が細かく設定できる金融機関かをチェックしましょう。

2.少額から積立ができるか
つみたて投資枠での最低投資金額は、多くの金融機関が1000円程度に設定しています。これでも十分に少額ですが、ネット証券ではより少額で、100円から積立ができるところもあります。少額から投資を試したいのであれば、最低投資金額が少額の金融機関を選びましょう。

3.投資できる商品の数が多いか
つみたて投資枠で投資できる投資信託は、金融庁の基準を満たしたもののみ。しかし、実際に投資できる投資信託の種類は、金融機関によって異なります。ネット証券などでは大多数の投資信託を扱っているのに対し、店舗の銀行や証券会社では取り扱う商品を数本程度に絞っていることもあります。投資できる商品が多いか、また自分が投資したい商品をその金融機関が扱っているかを確認しましょう。

4.信託報酬の安い商品が揃っているか
つみたて投資枠の投資信託選びで大切なのは、投資信託の保有中にかかる信託報酬です。信託報酬は持っている間ずっとかかるため、投資期間が数十年に及ぶ投資信託の場合、わずかな差が大きな差となります。

投資信託の運用成績は、投資してみなければわかりません。しかし、信託報酬は必ず支払う手数料です。そして、信託報酬は安いものを自分で選べます。
つみたて投資枠の対象商品は、信託報酬も一定以下に抑えられていますが、そのなかでも安いものを金融機関が扱っているのかを確認しましょう。

5.クレカ投資のポイント還元率が高いか
金融機関のなかには、クレジットカードでつみたて投資枠の商品を購入できる「クレカ投資」ができるところもあります。クレカ投資のメリットは、なんといってもクレジットカードのポイントが貯まることです。金融機関によってクレカ投資のポイント還元率が異なります。当然、ポイント還元率が高い方がいいでしょう。

6.ポイントの種類と利用している経済圏が合うか
クレカ投資だけでなく、投資信託の保有などに対してポイントが貯まる金融機関もあります。貯まるポイントも、金融機関によって違います。自分が普段利用している経済圏で使えるポイントが貯まる金融機関を選べば、経済圏もお得に活用できるでしょう。

7.サイト等の使いやすさ・充実度はどうか
ネットで取引ができるネット証券やスマホ証券だけでなく、店舗を構える銀行や証券会社も今やウェブサイトでさまざまな情報をチェックできます。金融機関によっては本来有料の情報を無料で提供しているところもあります。たとえば楽天証券では「日経テレコン」を利用してスマホで日本経済新聞を読むことが可能。投資家のバイブル「会社四季報」の最新データも閲覧できます。

ウェブサイトが使いにくい金融機関、情報が少ない・わかりにくい金融機関では、投資を続けるのも嫌になってしまうかもしれません。ウェブサイトが使いやすいか、充実しているかを確認しましょう。

新NISAで成長投資枠を利用する場合の金融機関はどう選ぶ?

成長投資枠を使って「株式投資をしたい」「つみたて投資枠で投資できない投資信託やETFなどに投資したい」という方もいるでしょう。新NISAで成長投資枠も利用する場合には、次のような点に着目しましょう。

●ネット証券会社を選ぶ
そもそも銀行では、株式やETFに投資できません。成長投資枠で株式投資をしたり、ETFを購入したりするなら、新NISAの口座は証券会社に開きましょう。

証券会社のなかでも、おすすめなのは売買手数料が安いネット証券です。ネット証券の多くは、NISAでの株式投資にかかる売買手数料を無料にしています。街の中に店舗を構える店舗証券の場合NISAであっても売買手数料は無料ではありませんし、他の取引でも手数料が高くつく傾向があります。あえて店舗証券を選ぶメリットは少ないでしょう。

なお、すでにNISA口座を保有している方は、1年に1回、金融機関を変更できます。ただし、2023年に現行NISAで一度でも商品の買付を行っている人は、2023年中は金融機関の変更ができません。2024年から金融機関を変更したい場合、変更の手続きは2023年10月からできるようになります。

●米国株・米国ETFの扱いが多いか
日本株への投資は、どの証券会社でも大差なくできます。しかし、米国株・米国ETFの商品数は、証券会社によって大きく異なります。米国は世界経済の中心ですし、世界的な大企業もたくさんあります。日本株と違って、配当が年4回もらえるのもメリットです。今は日本株しか考えていなくても、将来的に米国株・米国ETFに投資したいと思うかもしれません。米国株・米国ETFの取り扱いが多い金融機関を選んでおくとよいでしょう。

●少額から投資できるか
日本株は原則100株単位で取引するルールですが、証券会社によっては「単元未満株」といって、1株単位で売買できるところもあります。少額から日本株の取引をしてみたい場合は、単元未満株の取引サービスのある証券会社を選ぶのがよいでしょう。

ネット証券3社を比較

以上の選ぶポイントをふまえて、新NISAの口座開設をする金融機関としておすすめなのは、SBI証券、楽天証券、マネックス証券です。

比較表もまとめておきました。

SBI証券、楽天証券、マネックス証券では、いずれもつみたて投資枠の対象商品の大部分を扱っています。その上、100円から投資信託を買うことができます。証券会社ですので、株式投資ももちろん可能。米国株・米国ETFもたくさん扱っています。

SBI証券では三井住友カードを利用したクレカ積立によってVポイントが貯められるうえ、投信マイレージサービスで投資信託残高に応じてTポイント・Vポイント・Pontaポイント・dポイント・JALのマイルが受け取れます。毎日・毎週積立にも対応しています。

楽天証券では楽天カードを活用した楽天キャッシュ決済・楽天カードクレジット決済によって毎月10万円までクレカ投資が可能。楽天ポイントももちろん貯まります。単元未満株サービス「かぶミニ」「かぶツミ」を利用すると、少額からの株式投資や株式の積立投資もできます。

マネックス証券でもマネックスカードによるクレカ積立に対応。Amazonギフト券や各種ポイントに交換可能なマネックスポイントの還元が受けられます。「米国株定期買付サービス」を使えば選択した日付に指定した金額で米国株・米国ETFに積立投資ができるうえ、「配当金再投資サービス」を利用すると、得られた配当金で自動的に同じ銘柄を購入できます。

NISA口座は後から変更することも可能ですが、手間も時間もかかって面倒です。ですから、今回紹介したポイントを参考に最初から自分に合った金融機関を選んで投資をスタートさせましょう。

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