土まみれ新星に大声援 大の里、大関の胸借りる 大相撲金沢場所

土まみれになりながら貴景勝(右)とのぶつかり稽古に臨む大の里=金沢市総合体育館

  ●輝、正代破り喝采/朝乃山サイン攻め

 愛と期待あふれる「かわいがり」に、館内は「頑張れー」の大声援が響き渡った。26日、金沢市総合体育館で開かれた北國新聞創刊130年記念・大相撲金沢場所(北國新聞社主催)では、来月の秋場所で新十両の津幡町出身、大の里(二所ノ関部屋)が大関貴景勝に胸を借り、ぶつかり稽古に臨んだ。息も絶え絶えになるまでしごかれた角界期待の新星は「貴重な経験。光栄で、ありがたい」と受け止め、来場所の活躍を誓った。

 大の里と貴景勝のぶつかり稽古は、異例の7分ほどにおよんだ。転がされて土まみれになり、土俵下まで突き落とされた大の里は、地元ファンの声援や手拍子に後押しされるように、そのたびに立ち上がり、大関に向かっていった。

 「声援は、めちゃめちゃ聞こえてました。十両として土俵に上がるからには、情けない相撲は取れない、と思いました」

 稽古後の大の里は、汗まみれながらすっきりした笑顔だった。「(4勝3敗だった)先場所の反省を生かし、来場所は同じ失敗を繰り返さない。目標はまずは勝ち越し。どんどん番付を上げていく姿を地元の人に見せたい」と力強く語った。

 東十両筆頭、七尾市出身の輝(高田川部屋)は、番外取組で元大関の正代(しょうだい)(時津風部屋)を破り、大喝采を浴びた。

 「他と比べても金沢は相撲どころ。熱がすごい。地元の応援を力に変え、正々堂々とした相撲を見せられればと思う」と、再入幕を果たす来場所での活躍を誓った。

 お隣富山の雄、元大関の朝乃山(高砂部屋)にも、石川勢に負けない大歓声が送られた。公開稽古で胸を出した金沢学院大附属高・中相撲部の生徒について「ちびっ子と聞いていたら、体のでっかい子たちがぶつかってきて、びっくりした。さすが相撲どころで、みんな強いね」と笑っていた。

 館内では、力士たちがサインや記念撮影の求めに快く応じた。ファンは、力士と間近で触れ合える巡業ならではの楽しさを存分に味わった。

 津幡町の管理栄養士、川嶋優美香さん(32)は、25日に町内で開かれた大の里の十両昇進報告会に続き、土俵での勇姿を見ようと訪れた。一緒に記念撮影した長男一翔(いちか)ちゃん(6)、次男朝陽(あさひ)ちゃん(3)は「かっこよかったー」と笑顔を見せた。

 握手会で輝と対面した白山市千代野小5年の大森樹君(10)は「手が大きくて硬くて、力強かった。『大ファンです』と言ったら笑顔で『ありがとう』と言ってもらえてもっと好きになった」と顔をほころばせた。

  ●暴力団追放に一役

 石川県警から「一日暴力団排除対策官」に任命された輝と大の里は、開場時にロビーの一角でファンを出迎えた。2人は「暴力団追放」「特殊詐欺撲滅」と書かれたうちわを配り、地域の安全に一役買った。

ファンと記念撮影する輝
サインを求めるファンに囲まれる朝乃山

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