斉昭残したレシピ再現 料理本「食菜録」 茨城大教授ら 300種、HPで発信

ホームページ「食菜録」について、研究室で話し合う学生と荒木雅也教授(右)=水戸市文京

茨城大教授などで組織する団体が、幕末に活躍した水戸藩9代藩主・徳川斉昭が残したとされる料理本「食菜録」のレシピ再現に取り組んでいる。調理法が残る料理は約300種。専用ホームページ(HP)を立ち上げて紹介し、観光振興に役立てるため、情報発信を続けている。

斉昭が残したと伝えられる食菜録に記載された料理は「鴨(かも)てんぷら」「鮎(あゆ)のさしみ」など肉や魚の料理をはじめ、「くづそふめん」「味噌(みそ)納豆」、「かすてらほうろ」など。麺や納豆、菓子の作り方が、材料から調味料に至るまで幅広く記されていた。

2代藩主・徳川光圀の食生活については「日乗上人日記(にちじょうしょうにんにっき)」や「舜水朱氏談綺(しゅんすいしゅしだんき)」の文献を、茨城県水戸市柵町にあった料理店主の故大塚子之吉(ねのきち)さんが調査して再現。現代人の味覚に合わせた料理は「黄門料理」と呼ばれているが、食菜録について詳しくまとめたものはこれまでなかった。

食のブランド化に関する研究が専門の茨城大人文社会科学部の荒木雅也教授(50)が、食菜録の存在を知ったのは約15年前。同大図書館で手に取った1943年出版の書籍「水戸烈公の医政と厚生運動(下巻)」(日本衛生会刊)に、送りがなや注釈が付けられた食菜録の全編が収められていた。

斉昭がレシピをまとめた経緯は不明だが、荒木教授は「(斉昭は)当時の医学教育に関心が高く、食と健康を結びつけて力を入れていたのではないか」と推測する。

「斉昭が考えた料理として、水戸観光振興の後押しになればうれしい」。荒木教授は昨年4月、茨城県立歴史館や県内の郷土料理に詳しい専門家などに声をかけて「水戸食菜録研究会」を発足させ、書籍を詳しく読み解いたり、調理法再現の取り組みに着手。食菜録の調理法や再現料理の写真、映像を記録したHP「食菜録」を立ち上げた。

HPで300種のレシピを原文で紹介するほか、生地を薄く延ばして四角に切った「いばらきうどん」、タイの昆布締めを「鯛(たい)昆布秀吉」と名付けた食菜録特有の料理などの写真を公開している。中川学園調理技術専門学校(水戸市)の協力で「ソップ製法(スープ)」「蛤(はまぐり)はんぺん」など3品の調理動画も閲覧できるようにした。

荒木教授は「多くの人に見てもらいたい。水戸の名物料理が食菜録から生まれればいい」と期待を寄せた。

研究会は11月下旬、同市緑町の県立歴史館で、「徳川斉昭と食菜録」をテーマにしたシンポジウムを開く予定だ。

食菜録ホームページに掲載されている「蛤はんぺん」

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