生協が「産地で暮らす」移住提案 居住施設整備し、援農で地域貢献 山形県酒田市

東京から移住した朝倉夫妻。居住施設からは山居倉庫が見える(山形県酒田市で)

「産地で暮らす」をテーマにした生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(生活クラブ生協)の構想が、山形県酒田市で始動した。新たな居住施設をつくり、組合員を中心に首都圏から16世帯23人が移り住む。移住者は援農などをしながら暮らす。人口減少や高齢化が課題となる地域で、生協と産地が一体になった挑戦が始まった。

市民交流を重視

生活クラブ生協は、多様な暮らし方の一つとして、「産地で暮らす」を提案する。移住者が農業など地元産業の仕事に関わり、地域の人との交流を通じてまちづくりにも参加する。人口減少対策に取り組む酒田市と連携し、計画策定では地元大学とも連携する。6月に移住・交流拠点「TOCHiTO(とちと)」をオープンし、構想が始動した。

場所は、かつて日本の米流通の拠点で酒田市の象徴でもある山居倉庫(米の保管倉庫)の向かいだ。広さ2315平方メートルの敷地には、居住棟の他、レンタルオフィス、市民などと交流できる多目的広場を設けた交流棟がある。

入居者は50~70代が中心。JA庄内みどりの農作業や、選果場での作業や地元の養豚企業・平田牧場での豚の飼育などに携われる。パプリカやアスパラガス収穫のアルバイトに関わる人もいる。

東京都調布市から移住した朝倉深太郎さん(68)、富士子さん(67)夫妻は、居住棟で暮らしながら、パプリカの収穫などに携わる。生協歴約30年の組合員で、移住前から生活クラブ生協と同JA・遊佐町共同開発米部会が取り組む共同開発米を食べてきた。登山なども楽しむ中で愛着を抱き、移住を決断した。深太郎さんは「食べる側では気付かなったことを知ることができて面白い」と話す。

地域で自給狙う

生活クラブ生協は「食(Food)」「エネルギー(Energy)」「福祉(Care)」を可能な限り地域内で自給し、連携しながら、持続可能な社会づくりを目指す「FEC自給ネットワーク構想」を掲げる。

庄内、長野、栃木、紀伊半島に「地域協議会」を形成し、産地の課題に取り組み、今後も生産し続けられる地域を目指す。庄内では、生産者でつくる「庄内協議会」を発足。FEC自給を目指す一環が、同地方にある酒田市の移住・交流拠点プロジェクトになった。

同生協は「各地にある地域協議会でそれぞれの風土に合った地域づくりを地元生産者や組合員と進めていきたい」としている。 (大山知香)

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