<ライブレポート>Mrs. GREEN APPLE、自身初のドームライブで見せた結成10年の集大成「これからも素敵なページをみんなと作っていけたら」

今年で結成10周年を迎えたMrs. GREEN APPLE。彼らが8月12日と13日の2日間、埼玉・ベルーナドームにて自身初のドームライブ【Mrs. GREEN APPLE DOME LIVE 2023“Atlantis“】を開催した。Billboard Japanでは、その2日目である8月13日のレポートをお届けする。

大きなドームの屋根の下には巨大な神殿のようなステージセットが組まれており、開演時刻の18時半ぴったりにスクリーンに映し出された懐中時計が針を巻き戻すと、「Welcome to ATLANTIS」の文字ともに、海底に沈んでいたアトランティスの神殿がかつての美しさを取り戻していく。ライザーでのせり上がりでステージに登場したのは藤澤涼架(Key.)と若井滉斗(Gt.)、続いて大森元貴(Vo./Gt.)。1曲目の「ANTENNA」でライブがスタートすると、大きな歓声と共にオーディエンスが手にしたライトスティックが一斉に青く光った。安定感のある歌声で、ひとつひとつのフレーズを丁寧に届けていく大森に、サポートメンバーの神田リョウ(Dr.)と森夏彦(Ba.)も加わったバンドサウンドに大きな会場が一気に彩られる。この日、集まった3万5000人が冒頭から心をギュッと掴まれるような見事な一体感。「楽しむ準備はできてますかー?」と大森が問いかけ、2曲目の「Speaking」へ。長い花道をドーム中央まで歩き、センターステージで歌う大森を色とりどりの光と吹き出すスモークが包み込む圧巻の演出だ。

「今日は水の都、アトランティスで最後まで楽しんでいってください」と大森のMCにもあったように、水を使った(しかもスケール感いっぱいの)演出が多く、夏気分を盛り上げてくれた。イントロが鳴った瞬間に大歓声が沸き起こった「サママ・フェスティバル!」ではオーディエンスの爽快なシンガロングもドームいっぱいに鳴り響くなど、1曲1曲、夏の思い出が増えていくような嬉しい瞬間が重なっていく。水を使った演出では他にも「umbrella」での雨が降りしきるような景色をバックに大森がしっとりと歌い上げる姿も印象的で、アッパーで爽快な夏のムードから一変。続く「Soranji」ではサビのメロディを美しいファルセットで歌うと全員がその「歌」に集中して耳を傾け、この空間を全て支配するようなMrs. GREEN APPLEの大きな音楽の底力を感じさせてくれた。

MCでは「元気ですかー?」「イエーイ!」とコール&レスポンスをしつつ、ドーム級の大会場だとステージに声が届くまでに少し時差が出てしまうようで「イエーイを早めに言って欲しい」と大森がお願いすると、3万5000人が前のめり気味の「イエーイ!」を響かせるなど、距離を感じさせないコミュニケーションでも楽しませてくれた。

きっとたくさんのオーディエンスがいくつもの夏を重ねて聴いていたであろう「青と夏」、キャストたちがダンスを繰り広げて楽しいムードを演出した「ロマンチシズム」。みんなの感動や楽しい気持ちはミセスの3人にも伝わったようで「素晴らしい景色です、ありがとう!」と大森。3人で再び花道を歩いて移動し、「じゃあ、ここで歌っていいですか?」と言うと、噴水に囲まれたセンターステージで「フロリジナル」を演奏。更に「BFF」を披露し、“アトランティス・バージョン”による「僕のこと」へ。冒頭は大森が歌う横顔がモノクロでスクリーンに映し出されて3人だけの音が奏でられ、そこからバンドサウンドが加わっていくドラマチックな展開。<努力も孤独も 報われないことがある/だけどね それでもね 今日まで歩いてきた>――まさに結成から10年でこうしてドーム公演を叶えた彼らの道のりを思わせる歌だった。人として、バンドとして、もがきながら歩む様を音楽にありのままに託してきた彼らだからこそ、ライブでも強い光と闇のコントラストを生み出せるのだ。

再び会場のテンションが爆上がりしたのが中盤の「私は最強」。あらゆる不安や怖れから開放され、強さを得られるような魔法のようなメロディが会場いっぱいに降り注いだ。しかし、その後、神殿は暴風雨に包まれたまま深海へと潜るような演出。レーザーが激しく飛び交う中で心の叫びを表現する「Loneliness」、センターステージに大森がひとりで水と光の渦に飲み込まれるようにしながら歌い上げた「絶世生物」など、目が離せない展開に。そこから再び地上へ戻ってきてからの「ダンスホール」では、みんなで喜びを分かち合うかのようなオーディエンスの歌声とジャンプ!そのキラキラとした祝祭ムードがたまらなかった。続く本編ラストの「Magic」では<いいよ もっと自由で良いよ>というメッセージと共に、観客のエネルギーが一気に弾ける。ミセスのタフなポップ・ミュージックがとびきりの高揚感を生み出した瞬間だった。

アンコールでは「10周年で、こんなドームで2日間ライブがやれて嬉しいね」と藤澤が話すと「楽しかったな~。こうしてたくさんの方と10周年を一緒に祝えることが本当にありがたいです」と若井も感謝を口にした。曲が始まった途端に多くの人が嬉しそうな歓声を上げた「我逢人」、藤澤のフルートが朗らかに鳴り響いた「庶幾の唄」を演奏すると会場全体がグリーンの光に包まれるような美しいハイライトとなった。大森はこの日のライブを振り返り「みんなに力をもらいました、音楽って素晴らしいなと思える日でした」「活動休止もしたけど、こうして僕たちのライブを楽しみに来てくれるみんながいることが、励みであり、活力であり、原動力です」と語った。そして「僕らは変わったりしてないけど、多面的になろうとしたし、それは必然的な変化でした。どの場面の僕らを切り取って好きだと言ってくれても嬉しいです。これからも素敵なページをみんなと作っていけたら」という言葉の後で、オーラスの「ケセラセラ」へ。バンドの結成から10年、まさに紆余曲折ありながらも〈なるようになるのさ〉と歌えている彼らの現在は何て素晴らしいんだろう。

そしてこの日、今年の12月から来年の3月にかけてファンクラブツアー【Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR “The White Lounge”】を開催することが発表された。さらに、終演後のスクリーンには「To Be Continued To “BABEL no TOH”」とのメッセージが突如映し出され、 “EDEN no SONO”から“NOAH no HAKOBUNE”、そして“Atlantis”へと繋がれてきた物語の続編ライブの制作決定までも発表した。いつかたどり着く場所を信じて音を楽しむ3人の勇者たちの旅路は、この夏かけがえのない思い出を刻みながら、未来へと続いていく。

Text by 上野三樹
Photo by 田中聖太郎写真事務所

◎公演情報
【Mrs. GREEN APPLE DOME LIVE 2023 “Atlantis”】
2023年8月12日(土)、13日(日)
埼玉・ベルーナドーム(西武ドーム)

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