金融教育、高まるニーズ 国家戦略化やNISA拡充で 横浜銀行などが出張講義を活発化

横浜銀行の講義を受ける横浜国立大の学生=5月、横浜市保土ケ谷区(横浜銀提供)

 政府の「資産所得倍増プラン」を支える金融教育。2024年の国家戦略化やNISA(少額投資非課税制度)の拡充で、そのニーズが高まっている。地方銀行は出張講義を活発化させる。

 「お金自体に価値はない」。横浜国立大(横浜市保土ケ谷区)で7月、横浜銀行(同市西区)地域戦略統括部の橋本長明さんが教育学部の2年生に力説していた。

 1万円札は日本銀行が発行する「券」に過ぎず、現行の製造コストは約20円。価値付けているのは信用で、貨幣は幸せに生きるための「道具」─。橋本さんはそう強調し、使い方にも言及する。「ニーズ(必要なもの)か、ウォンツ(欲しいもの)か。自問してみて」

 横浜銀が推進する「おかねの教室」の一こまだ。社会や環境に配慮した「エシカル消費」や寄付といった他者のための使途も紹介。学生は「ただお金が欲しいと漠然とバイトしていた」「消費か浪費か考えるようにしたい」と啓発されたようだ。

 銀行や証券会社によるこうした金融教育が、教育現場や企業で急速に広がっている。成年年齢の引き下げで18歳以上は親の同意なくクレジットカードやローンを契約できるようになったほか、長寿化に伴って老後の資産形成が求められるようになり、金融リテラシー(知識)を身に付けようという機運が高まっているためだ。

 政府は「資産所得倍増プラン」の一環で、24年から国家戦略として推進する方針。小中高校では学習指導要領が改訂され、20年度以降に授業で段階的に取り入れられている。

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