1980年代【テレビから聞こえてきた音楽 ドラマ編】刑事ヨロシク、君の瞳をタイホする…  大好評ラジオプログラムWave Re:minderで紹介しきれなかった “80年代 テレビから聞こえてきた音楽”

「80年代 テレビから聞こえてきた音楽〜ドラマ編」番外編

前回のコラム『1980年代【テレビから聞こえてきた音楽 ドラマ編】男女7人夏物語、青が散る…』は、私こと親王塚リカがゲスト出演したRe:minderのラジオ番組『Wave Re:minder - 懐かしむより、超えていけ!』(bayfm ※現在radikoでは聴けません)のオンエア連動企画コラムでした。

ラジオの選曲テーマは「80年代 テレビから聞こえてきた音楽〜ドラマ編」。その時ご紹介できるドラマは5本が限界で、その5本を選ぶために泣く泣く選んだ残りをカットしました。

今回「どうしても残りのドラマと音楽のコラムも書きたい! という私の悲願を編集部が聞き入れてくださり、「番外編」と称してご紹介します。今回も80年代という流れを考えて、特に順位はつけずに時系列に並べました。

それではいってみよー!

サブカル風味溢れるビートたけし初の主演ドラマ

「ビートたけしの刑事ヨロシク」(1982.5~1982.8)
◆ 概要:TBS系 / 日曜夜8時
◆ 主題歌:朝倉紀幸&GANG「ライオンは起きている」
◆ 出演:ビートたけし、岸本加代子、梅宮辰夫

当時人気絶頂だったビートたけし初の主演ドラマ。ドラマとバラエティーの境界線を行き来する「ムー一族」などで知られる一流演出家・久世光彦と、80年代カルチャーの申し子・たけしの強烈な個性が相まった、何ともドタバタかつサブカル風味あふれる一作に仕上がっている。

東京の警察署の少年特捜班に配属された原平太ことヨロシク(ビートたけし)が、スナック “ママリンゴ” にたむろする不良グループ「虚無僧」を補導するため同僚の岸本加代子らとドタバタ捜査を繰り広げる。署のお茶くみ係で幽霊のように暗い西ツヤ役はなんと戸川純。ロケ地は原宿渋谷近辺が多かった模様で、竹の子族やローラー族の抗争などもファッショナブルに描かれている。ちなみに「虚無僧」のメンツは皆バリバリ盛り盛りリーゼントに赤い革ジャンスタイル。ミッキー役の小柄なミッキー岡野がキュートで女子に大人気だった。

主題歌は虚無僧やたけしらがスタジオで愉快に踊り狂う姿を背景にした「ライオンは起きている」。ドゥーワップの名曲「ライオンは寝ている」(トーケンズ)のアップビートなロカビリーカバーだ。あのオープニングは何と言うか、何だかダサカッコよかった。梅宮辰夫や安岡力也の起用もピリリと効いていた。脚本には、岩松了や高田文夫が参加している。

ちょっぴりアダルトな社会派系ホームドラマ

「野々村病院物語Ⅱ」(1982.11~1983.5)
◆ 概要:TBS系 / 火曜夜9時
◆ 主題歌:谷村新司「青年の樹」
◆ 出演:宇津井健、津川雅彦、夏目雅子

当時のTBSにはこうしたホームドラマ枠が多く、1970年代の大ヒット作『ありがとう』シリーズが大好物の私としては結構観ていたが、本作は中でもちょっぴりアダルトな社会派系。1981年に放映された「野々村病院物語」続編にあたるが、設定も物語もまったくの別物なのでこちらをセレクトした。地域医療の理想に燃える院長・野々村隆之(宇津井健)と金儲けに走る医師・木井省三(津川雅彦)との病院職員を真っ二つに割るような静かな抗争。悪役津川がギラギラしていてカッコよく、そりゃ愛人看護師の倉方(夏目雅子)も惚れて当たり前だ。

共演者も老若男女バラエティ豊かで、野々村の娘役には当時人気絶頂アイドルの柏原芳恵、木井派につく医師の蟹江敬三、とぼけた職員役の山田辰夫、しっかり者の看護師長に山岡久乃、看護師の山田邦子らが出演していた。オープニングではいつも谷村新司の真面目で重厚な歌声が響き渡った。中年の心に染み入るような若さゆえの悲哀と抒情にあふれた歌世界が印象的だった。

令和の現在は『渡る世間は鬼ばかり』の終了を以て連続ホームドラマは廃れてしまったようだが、時代とはいえ寂しい。TBSは単発でよいから今後もホームドラマを制作し続けてほしいものだ。

売れ残り目前の25才にスポットを当てた青春群像劇

「25才たち・危うい予感」(1984.6~1984.8)
◆ 概要:日本テレビ系 / 金曜夜9時
◆ 主題歌:世良公則「導火線」
◆ 出演:桜田淳子、宮崎美子、世良公則

脚本は金子成人と宮村優子。山田太一の『想い出づくり。』は結婚適齢期の24才を取り上げたドラマだったが、本作はその後、売れ残り目前の25才にスポットを当てた青春群像劇。波子(桜田淳子)、恵利(宮崎美子)、たまき(萬田久子)、令子(中井貴恵)は短大時代からの仲良し。「M25作戦」と称して25才までに結婚すると誓ったものの25才の壁を前に大きなため息をついている。

「役を地で演じてほしい」という制作側の希望により、当時25歳の宮崎と26歳の桜田、中井、萬田が選ばれたそうだ。主演の桜田と世良公則のじれったい恋愛模様がとにかく胸キュンで、女子高生だった私はバブル前夜の東京で「25才ってなぜそんなに特別なんだろう」と思いながら、2人が約束の列車ですれ違うシーンに身悶え、女4人で歌うユーミンに切なくなっていた。

主題歌は阿木燿子作詞による世良公則のソロ第3弾シングル。エキサイティング&メロウなギターに乗せて別れ際の駆け引きがハスキーに描かれる。そういえば、桜田ら4人はプライベートでも仲が良かったらしく、ドラマ終了後はトーク番組で毎年同窓会のように集まっていた。今現在はどうなのだろう、なんて想像するともっと切なくなる。

ゴールデンタイムに進出したとんねるずの初主演作

「お坊っチャマにはわかるまい!」(1986.4〜1986.7)
◆ 概要:TBS系 / 火曜夜9時
◆ 主題歌:とんねるず「やぶさかでない」
◆ 出演:石橋貴明、木梨憲武、麻生祐未

深夜ドラマ『トライアングル・ブルー』後にゴールデンタイムに進出したとんねるずの初主演作。東京・自由が丘を舞台にタカさんノリさんが扮する高卒コンビが、職場の財閥御曹司やその取り巻きのお嬢様を相手に大暴れする、80年代バブル目前当時の彼らの破竹の勢いを余すところなくぶち込んだコメディーだ。モノマネやアドリブの連発、スタジオに観客を集めて行った公開生放送の回も話題を呼んだ。放送翌日にとんねるずが出演していた『夕焼けニャンニャン』の生放送でドラマの視聴率を発表するのもお約束だった。

物語としてはアレだけど、何をしでかすか予測できないわくわく感で毎週観ていたっけ。ただドラマでの二人の関係性は『傷だらけの天使』の萩原健一と水谷豊を意識した風だし、最終回でタカさんが最後に手紙を読むシーンは『前略 おふくろ様』を思い起こさせた。

オープニング曲「やぶさかでない」に至っては、軽快なブギーサウンドといい、曲中の役名での二人のセリフの掛け合いといい、ショーケンが歌って水谷が参加した「兄貴のブギ」へのオマージュのように思えてしまう。まさにガチの遊び心だけで成立したドラマだったのだ。音楽を担当した高中正義が医者の役で出演していたのも忘れられない。

トレンディドラマの草分け、「月9」シリーズの記念すべき第1弾

「君の瞳をタイホする!」(1988.1〜1988.3)
◆ 概要:フジテレビ系 / 月曜夜9時
◆ 主題歌:久保田利伸「You were mine」
◆ 出演:陣内孝則、三上博史、柳葉敏郎、浅野ゆう子

80年代後半〜90年代前半を席巻したトレンディドラマの草分けともいえる、いわゆる「月9」シリーズの記念すべき第1弾。制作は山田良明と大多亮。架空の渋谷道玄坂警察署を舞台に、制作発表も東京・渋谷パルコPART2で行われるなど、お洒落な街としての渋谷を激推しした。

刑事を主役にはしているが事件や捜査は二の次で、当時のデザイナーズブランド(肩パッド!)に身を包んだ刑事たちの合コンやナンパを軽いコメディータッチで描く。オープニングでは公園通りやスペイン坂、109ビルといった渋谷の街並みを思い切りフィーチャー! ロケ地にも「チャールストンカフェ」や「OLD NEW」などが登場しており、当時渋谷を根城に大学生活を送っていた私としては胸が熱くなるのであった。

そして陣内やギバちゃんより、三上博史のカッコよさに夢中だった。初回、自殺未遂を起こす「静香」役の工藤静香はおニャン子クラブを卒業したばかり。浅野ゆう子はナチュラルメイクのシングルマザーを演じて一躍女性の共感を得た。

主題歌を歌った久保田利伸は、初のオリコンチャートトップ3入りを果たし、この曲で一躍人気アーティストに仲間入り。ファンキー&パワフルなボーカルで日本のソウルミュージックのレベルを格上げした。ちなみにドラマの音楽は鈴木康博が手がけている。

―― さて、親王塚ドラマセレクション「番外編」はいかがだったでしょうか?

今回は期せずして東京という街を舞台に、当時の都市部の風景を切り取って映し出したようなセレクトが多かったように思います。私はもちろん恋物語もサスペンスも好きだし、俳優陣にも興味はあるのだけれど、どちらかというとファッションや小物使いなどのディテールや背景といった、制作陣の遊び心のほうに胸がキュンキュンしてしまうタイプなのかもしれません。

カタリベ: 親王塚 リカ

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