【MLB】スター不在のジャイアンツ、なぜ強い?

写真:ジャイアンツ移籍初日に大活躍したデヨング

8月も後半を迎え、プレーオフ争いは佳境に入ってきた。ナ・リーグのワイルドカード争いはプレーオフ圏内から2.5ゲーム差までに6チームがひしめく大混戦となっているが、その中でも異彩を放つのが現在ワイルドカード5位のサンフランシスコ・ジャイアンツだ。ビッグネーム不在のジャイアンツの強さの秘密を『ESPN』のデビッド・シェーンフィールド記者が取り上げている。

今年のジャイアンツを象徴するような試合が24日のフィリーズ戦。ワイルドカード1位を走るフィリーズ相手に延長までもつれ込んだ激闘の末、勝利を呼び込んだのは、実に10投手の継投リレーとブルージェイズをリリースされたばかりでチームデビューとなったポール・デヨングの勝ち越し打だった。

今年のジャイアンツはスター選手がおらず、ロスターはまさにこのデヨングのような伏兵たちで構成されている。チームで最も総合指標bWARを稼いでいる選手はウィルマー・フローレスで、フローレスのWAR2.5はメジャー全体でも69位に過ぎない。

要のセンターラインにおいて6人の遊撃手、9人の中堅手、そして12人の先発投手を起用し、20本塁打に到達した打者も不在。ジャイアンツの強さの理由は、チーム組織全体の層の厚さとロスターを最大限に活用する戦略、そしてそれを操る編成トップのファーハン・ザイディと監督のゲーブ・キャプラーにある。

積極的なプラトーン・代打戦略で、ロスターにいる選手全員をくまなく起用し、個々の強みを最大化。ディフェンスでも、先発投手が投げたイニングはメジャー最小、ローガン・ウェブとアレックス・カッブ以外にローテを守り続ける投手も不在ながら、ブルペンデーを活用して乗り切っている。

また、チーム全体として若いのも今年のジャイアンツの特徴だ。今年は正捕手に定着したパトリック・ベイリー、ルイス・マトス、ケーシー・シュミット、そしてエース候補のカイル・ハリソンら評価の高かった有望株が続々とデビュー。先日新たにデビューしたウェイド・メックラーは昨年のドラフト8巡目指名、今年はA+で開幕を迎えたにも関わらず、早速デビューを飾って話題となった。マイナー組織からの供給が滞らないジャイアンツを象徴するトランザクションだったと言えよう。

スター不在のジャイアンツが、スター軍団のパドレスやヤンキースを上回る成功を収めているのは驚くべきことだ。しかし、直近のフィリーズとブレーブス相手のシリーズには負け越すなど、徐々に地力の差が露呈し出しているのも事実かもしれない。それでも、今年ここまでプレーオフ争いを演じているということだけでも、凄まじい成功なのは間違いない。

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