[地域発 未来へ]滋賀・JA東びわこ ブドウ産地化へ新たに研修施設

ブドウ栽培トレーニング施設の受講生に摘芯の仕方を説明するJA職員(右)(滋賀県多賀町で)

先駆者育成めざす 滋賀県のJA東びわこは4月、研修施設を新たに整備し、ブドウの技術指導を始めた。露地やハウスなど複数の栽培条件を用意することで、研修中に自身に合う手法を見極め、早期の経営安定につなげる。1期生には木の育成を経験してもらい、産地の先駆者を育てる。地産地消の拡大と農家所得の向上を目指す。

県内は果実の生産量が少なく、量販店などに並ぶ果実は県外産が多くを占める。県産果実の需要に目をつけたJAは2022年度、「彦根梨」に続く新たな特産品を生み出そうと3カ年計画で果樹振興を打ち出した。中でも育成期間が比較的短いブドウに着目した。

研修施設「ブドウ栽培トレーニングセンター」の新設はその第一歩だ。管内ではブドウ栽培のノウハウを学べる場が少なく、生産者は自力で知識や技術を磨く必要があった。挑戦するきっかけを提供しようと、研修制度を立ち上げた。

ブドウ栽培トレーニング施設の受講生に摘芯の仕方を説明するJA職員(右)(滋賀県多賀町で) 4月からは、1期生として15人の研修を受け入れ、「シャインマスカット」の栽培を教えている。肥料・農薬や農機レンタル代などを除き、研修費用は無料。教材や設備費はJAが負担する。

受講生は1人当たり7、8本を管理する。数本ずつ、簡易棚やパイプハウス棚、雨よけ短梢(たんしょう)棚、露地など、異なる栽培条件で植えるのが特徴だ。成長の具合や作業性を比較できるため、研修終了までに自分に合う方法を選べ、早期の経営安定が期待できる。

ブドウは一般的に、定植から数年は実を切り落とし、木を育成する期間に充てる。そのため、原則3年間の研修期間を、1期生だけは5年間とし、苗の植え付けから指導。1期生を産地の先駆者として育て、担い手をけん引してほしい考えだ。

研修修了後はJA部会組織に加入することが条件。JA直売所や地元の市場などで県産のブドウを販売し、地産地消につなげる。

栽培技術は県の普及指導員や県OBが教える。JAの営農指導員7人も毎回参加し、指導をサポートする。

営農指導員の八田翔希さん(23)は、外部の研修や教科書を使い技術を習得した。「生産者と共に果樹振興に取り組んでいる実感が湧いた」と話す。

JAは25年度までに合計4ヘクタールの園地形成を目標に掲げる。資材の共同購入によるコスト削減や、施設費の負担軽減などのメリットが見込める果樹園の団地化も推進する。

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