スポーツ合宿、活況戻る 茨城・神栖の波崎地区 今夏、コロナ前の8、9割

神栖市内で合宿を開いたサッカーチームの練習試合=同市矢田部

■〝完全回復〟へ 立地・施設PR

スポーツ合宿が盛んな茨城県神栖市に活況が戻りつつある。新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされていたが、波崎旅館業協同組合によると、今夏は「(コロナ禍前と比べ)8、9割程度戻ってきた」という。ただ、大学生サークルの動きはまだ鈍く、市は〝完全回復〟に向け、都内や成田空港から近い好立地や、運動施設が豊富な強みを生かし、懸命にPRしている。

■100面超のコート

同市は波崎地区を中心に官民合わせて、100面以上のサッカーコートがあり、コロナ禍前は年間延べ30万人以上が訪れていた。いったんは〝ゼロ〟に近い状況まで追い込まれたが、新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に移行後、常連団体を中心に回復を見せている。

サッカーチームのブリジャールFC(埼玉)は常連の一つ。8月3日から3日間、中学生世代の合宿を開催した。指導する与那嶺輝樹さん(42)は「練習環境が素晴らしい。合宿しているチームも多く、練習試合も簡単に組める」と話す。

だが、大学生サークルの合宿の戻りは遅れているという。同組合の山崎芳一会長によると、小中高の部活動は指導者が変わらなければ継続性があるが、大学生サークルはコロナ禍の4年間で活動自体が低迷してしまっているほか、サークル内のメンバーも入れ替わり、「合宿のノウハウが受け継がれていないようだ」と推察する。

■大会団体に助成

そこで、市は新たな利用団体獲得や大会誘致に力を入れる。6月には、合宿先や大会の会場を探している団体・チーム向けの総合展示会「スポーツツーリズムEXPO」(東京)に出展。過去3年以内に全国ベスト4以上の実績を持つトップレベル団体の延べ30泊以上の合宿に最大50万円、8割以上が市外からの参加者で半数以上が宿泊を伴う大会開催には最大30万円をそれぞれ助成する取り組みを紹介した。

さらにサッカーだけでなく、野球やテニス、インドアスポーツなどにも対応できることや、都心からのアクセスの良さ、気候の良さもアピールした。市の木村正朋スポーツツーリズム推進室長は「静岡の時之栖や長野の菅平などに比べると、まだまだ知名度が低いことが課題だが、県単位での参加が多い中、市単独で参加し、優位性をアピールできた」と説明する。

このほか、市は宿泊事業者ら向けに、プロアスリートの食事をサポートしている栄養士や調理師を講師に招いたセミナー・実演会を開催し、各旅館などのレシピ開発を後押し。さらにボディービルダーの横川尚隆さんを起用したユーチューブ動画を制作し、多方面にPRしている。

■交流人口増期待

一方で、長期休暇以外の閑散期を補うことも課題の一つ。そのため、市は昨年まで市剣道連盟が開催していた小中学生対象の剣道大会に着目した。主催に加わり、県内チーム中心だった大会を県外からも参加できるように、宿泊が伴う2日間の大会に拡大リニューアルし、11月11、12日に開催する予定だ。選手と保護者らを合わせて900人程度の宿泊を見込んでいる。

同室は「スポーツ合宿は交流人口増が期待され、地域への経済効果が高い。今後も優位性を磨き、差別化を図っていけるようにしたい」と力を込める。

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