歯周病検診率低迷5%台 県内20~22年度 ナッジ理論で行動変容促進へ

 栃木県内の歯周病の検診受診率は低下傾向にあり、2020~22年度は5%台にとどまったことが27日までの県のまとめで分かった。命に関わる病気ではないという認識などが要因とみられる。受診率の向上に向け県は本年度、2市町を対象にしたモデル事業に乗り出す。行動経済学のナッジ理論を活用した受診勧奨のはがきを送り、行動変容を促す。

 歯周病は、放置すれば糖尿病を悪化させたり認知症のリスクを高めたりするなど全身に影響するとされている。検診は市町が健康増進法に基づき実施。40歳と50歳、60歳、70歳の住民が対象で無料の自治体と自己負担金が必要な自治体がある。

 22年度は県内の対象者8万4928人のうち、受診者は4961人にとどまった。受診者の9割以上に「要精検」「要指導」との結果が出た。

 市町別受診率では最も高い真岡市でも9.8%で、最も低い塩谷町は0.4%。県全体の受診率は16~19年度は6~7%台だったが、20年度は5.3%、21、22年度はいずれも5.8%と以前にも増して低迷している。

 県健康増進課は「県内で歯に対する健康意識が高まっていない」とみている。

 県が新たに始めるモデル事業は、住民に伝わる言葉に言い換えるなどして、より良い選択を自発的に促す「ナッジ理論」を活用。東京都八王子市では、大腸がん検診の検査キットを送る際、A集団に「検診を受ければ来年もキットを送付する」、B集団に「受診しないと来年はキットを送付しない」と別々のメッセージを送ったところ、B集団の受診率がA集団より7.2ポイント高くなったという。

 「得する喜びより損する苦痛の方が強い」とされる人間の心理が、結果に表れたと考えられている。

 県のモデル事業の予算は約550万円。同市のような施策を想定しており、2市町の検診対象者計約5500人にはがきを送付するほか、効果を検証するためのアンケートも行う。

 同課は「痛みや違和感がなくても検診を受けることが歯の健康には重要。事業が受診のきっかけになれば」としている。

© 株式会社下野新聞社