1人の女性が作り上げた理想の幼稚園 ドキュメンタリー映画「風の谷幼稚園」公開決定

自らが理想とする幼稚園「風の谷幼稚園」を作り上げた天野優子さんを中心に、2021年4月の入園式から四季を通じて、「風の谷幼稚園」の子どもたちの成長を1年間に渡って追ったドキュメンタリー映画「時代遅れの最先端 ―風の谷幼稚園の子どもたち―」が、2023年10月7日より劇場公開されることが決まった。

川崎の雑木林に囲まれた丘にある学校法人「風の谷幼稚園」。ここには、まわりの道路や田畑とをへだてる塀もなければ、鉄製の遊具もなく、制服もなければ通園バスもない。登園・降園時には、必ず親子は手をつないで園に通う。そんな今風ではない「風の谷幼稚園」は、「身体を動かす」「手を使う」「いっぱい歩く」を基本とした、子どもが子どもとして子どもらしい時を過ごせる、「これからの時代のこれからの幼稚園」として親しまれている。

”理想の幼稚園”を作りたいという思いを胸に裸一貫で行動を起こし、理想の幼稚園を作り上げたのは天野優子さん。資金も資産もなく、あるのは情熱と実行力だけという状況から、家族を説得して家を担保に莫大な借金をし、10年間ほぼ無給で働いて自分の”理想の幼稚園”である「風の谷幼稚園」を作り上げた。トップアスリートとして活躍中の、サッカーの久保建英選手も卒園生の一人である。

監督は、「地雷を踏んだらサヨウナラ」「島守の塔」の五十嵐匠。ベトナム戦争の最前線で多くの写真を撮影したカメラマンである沢田教一のドキュメンタリー「SAWADA」(1997)以来のドキュメンタリー映画を手掛けた。構成は、岩波映画出身のベテランでドキュメンタリー監督の四宮鉄男。撮影は数多くの子供たちのドキュメンタリーで定評ある秋葉清功が、編集はドキュメンタリー映画の老舗であるグループ現代の寺崎みずほが務めている。

五十嵐匠監督、天野優子さんのコメントも公開された。コメントは以下の通り。

■五十嵐匠監督

天野優子さんは、たまらなく信念の人だ。自分の理想の幼稚園を作るため私財をすべてなげうって川崎の小高い丘に、素敵な幼稚園を作ってしまった。私は、1年にわたり秋葉キャメラマンと風の谷に通った。そこには、天野優子さんを中心に「風の谷の宇宙」があった。そこはとても風通しがいいし、規律ある自由があった。何より生き生きした子供たちが飛び跳ねていた。
撮影中、私は天野さんに一度だけ怒られたことがある。それは年中組の授業中のことだ。私が、1人の子に声をかけようとしたその時、天野さんは叫んだ。「監督!子どもに声をかけないで!」。
天野さんにとって授業中は、まさしく戦場だった。私は、久しぶりに叱られながらも何だかうれしくなった。

■天野優子さん
子どもの心と身体は、とても柔らかです。普通の生活をしていれば、すくすくと育っていくものだと思います。それなのに「最近の子供はなにかヘン」と言われているのはなぜなのでしょう? それは子ども問題というよりも、大人の問題であるような気がしてなりません。子供を取り巻く環境や大人の意識が、どこかでゆがんだ子どもを生み出してはいないでしょうか。大人中心の生活パターンや食生活、一見子ども中心に見える、知育や知識偏重の幼児教育の数々。幼児期の子どもに本当に与えたいものはなんなのか。「風の谷幼稚園」で大切にしたいと思っていることは、とてもシンプルです。私たちは、子どもが本来持っている育つ力を信じています。そして、幼児期に思いきり身体を使うことこそが、バランスのとれた賢い頭と心と身体の発達を促すのだということを確信しています。

【作品情報】
時代遅れの最先端 ―風の谷幼稚園の子どもたち―
2023年10月7日(土)より ポレポレ東中野 ほか全国順次ロードショー
配給:株式会社ストームピクチャーズ
©風の谷幼稚園

© 合同会社シングルライン