4年ぶりの夏祭り 小劇場 商店街の人々の思いを演劇に

豊島区の大塚にある商店街で、4年ぶりに夏祭りが開催されました。祭りで注目を集めたのは、地元商店街の人々をテーマにした「演劇」です。新型コロナウイルスの影響で打撃を受けた演劇界の人々が、商店街の人々と共に街を盛り上げようと奮闘しました。

今月、豊島区北大塚で開催された「折戸通りの小さな夏祭り」。「折戸通り」はJR大塚駅から780メートルにわたって続く通りで、4年ぶりのお祭りは多くの人でにぎわいました。

記者:「今回のお祭りの目玉となるのがこちら、商店街の中ほどにある小劇場『萬劇場』で行われる演劇です」

萬劇場は、演劇やライブなどができるホールとして、約30年前から地域で親しまれてきました。TOKYO MXでは3年前、コロナ禍の萬劇場を取材していました。劇場は500万円以上をかけて、徹底した感染対策を行っていました。あれから3年、客席の仕切りはなくなり、この日は満席となりました。

萬劇場支配人 飯村弘一さん:「今日のようにやっと制約がなく、公演ができる状況になったというのは喜ばしい」

しかし、その一方で…

萬劇場支配人 飯村弘一さん:「(新型コロナの影響で)演劇界の若い皆さん、傷つきました。でも私たちの地元の地域の皆さんもみなが元気ではない。今回のお祭りも、人と話すきっかけとなってほしい、まずそこからだなと」

街の活気を取り戻したい…そこで劇場が企画したのが、商店街をテーマにした演劇です。出演する8つの団体が、街の店舗をまわり、店の歴史や店主の半生を取材。それをもとに、それぞれの団体が30分の物語にまとめました。折戸通り商栄会の伊藤会長は、折戸通りの魅力をこう話します。

折戸通り商栄会 伊藤勝利会長:「思いもかけなかったところに、ちょっとした名店がある。それをぜひ掘り起こしたいただきたい」

演劇となったお店の一つがこちら、「マスミ東京」です。創業約60年、掛け軸や屏風などの仕立てや修復を行っていて、今はボストン美術館など海外の美術館にも和紙を納めています。今回、マスミ東京を取材したのは、東京を拠点に活動する「NO DAY BUT TODAY IN ACT」のメンバーです。

マスミ東京 横尾靖代表:「今、日本の伝統文化はみんな消えようとしている。紙すき(職人)だってみんな辞めようとしているし。大事にしてきたものを辞めてしまうというのはもったいないということがきっかけで、この分野に入った」

取材の後、メンバーは、横尾さんが大切にしてるという掛け軸を見せてもらいました。この掛け軸との出会いをきっかけに、メンバーは掛け軸をめぐる物語を作ることにしました。そして本番。物語は、祖母の掛け軸を真澄家の孫の誰が受け継ぐのかというところから始まりました。そして舞台に現れたのが、横尾さんが大切にしていたあの掛け軸でした。

終演後、横尾夫妻がメンバーを訪ねました。

マスミ東京 横尾靖代表:「いやあ素晴らしかったですよ。最初はどうなるかなと思って、掛け軸を若い人が理解できるのか。でも私の想像以上に、本当に私が伝えたいことをうまく小森谷さんたちが演じてくれて感動した」

メンバーにとっても伝統文化との出会いは、新たな発見があったようです。

NO DAY BUT TODAY IN ACT主宰 小森谷朋基さん:「(伝統文化など)本気でやっていく人がどんどん減っていくのはすごく寂しい。俳優として役作りのために勉強したときに、愛しい何か、これは残さないといけないという思いが芽生えることがある。今後もお芝居を通してそういうものを広げていかれたら」

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