1時間雨量300ミリの世界 音が聞こえない 前が見えない…集中豪雨で命を守るアイテムとは【防災WEEK】

9月1日は「防災の日」です。28日からの1週間を「防災WEEK」として、地震や豪雨などの災害から命を守るための「備え」や「心構え」について考えます。第1回は豪雨です。

「1時間雨量300ミリ」という、いまだかつて日本では観測されたことがない「とんでもない豪雨」を体験できる施設が、茨城県にあります。突然の豪雨に備えて、どんなものを身につけていればいいのか、記者が体験しました。

8月5日、茨城県つくば市の防災科学技術研究所で行われた施設の一般公開。おもちゃで地震の揺れを学ぶ実験教室や、模型を使って川の仕組みを知る実験など、2200人を超える来場者が、楽しみながら防災について学んでいました。

(記者)
「雨かなり強いです。傘も片手では持っていられないので、両手が塞がってしまいます」

中には「1時間雨量300ミリ」の豪雨を体験できるエリアが。それは、どれほどの雨なのでしょうか。

雨音以外聞こえず 前も見えず

(記者)
「愛知県豊橋市です。線状降水帯の影響で非常に激しい雨が降り、視界もかなり悪くなっています」

ことし6月、台風2号の接近に伴って線状降水帯が2度発生し、豪雨で愛知県豊橋市や豊川市の広い範囲が冠水しました。このときの1時間の最大雨量は、愛知県新城(しんしろ)市で記録した「69ミリ」です。

(記者)
「名古屋市中区に来ています。猛烈な風とともに、激しい雨が降っています」

8月中旬、東海地方の各地に大雨をもたらした台風7号。鳥取県では一時、「大雨特別警報」が出されるほどの猛烈な雨を記録しましたが、このときの1時間の最大雨量は鳥取市佐治町の「97.5ミリ」でした。

これまで日本国内で記録された1時間の最大雨量は、41年前の「長崎豪雨」で記録された「1時間187ミリ」(長与町役場)です。

防災科学技術研究所では、これをはるかに超える、1時間雨量300ミリの豪雨を体験できます。天井にあるノズルから水が放出されます。

(記者)
「雨が強く打ち付けて音が全く聞こえません。視界も悪く全く前が見えません。恐怖を感じます」

(体験した見学者)
「雨が強いときは家の中でじっとしていた方がいいと思った」
「歩きにくかった」
「強い雨が降ったらすぐ逃げる。視界が悪く音が聞こえないのが怖い。この距離でも話にくいので怖いかもしれない」

「見えない」「聞こえない」という状態で、一体どうやって助けを求めればいいのでしょうか。

“命を守る”アイテムとは

これについて、こんなSNSの投稿が。

(SNSより)
「『緊急時はホイッスル』 台風や豪雨等の激しい音は、救助を求める声を簡単にかき消してしまいます」

これは、警視庁の警備部災害対策課の投稿です。日頃から災害時に役立つ知識をのせています。ほかにも。

(警視庁警備部災害対策課の投稿)
「大雨の際の避難では、両手を塞がず防寒にも優れた雨合羽が活躍します。目立つ色や反射材付きがおすすめです」

ということで、実際にやってみることに。まずは1つ目は「ホイッスル」です。

(記者)
「きこえますかー!?」

およそ10メートル離れただけで声は聞こえなくなります。

ここで、ホイッスルを吹いてみると。相手は手を挙げ、聞こえていることがわかります。笛のように高い音だと雨の音にまぎれず聞き取れるのです。

そして2つ目は「雨がっぱ」です。

雨がっぱに反射材つきのアームバンドをつけて比較してみると…反射材が目立ちます。こうした反射材をつけたり、より目立つ色の雨がっぱを着たりすれば、視界の悪い雨の中でも居場所を知らせることができます。

大雨で逃げるときは「長靴」を避けて

そして3つ目。豪雨体験後の記者の長靴の中を見ると…水がたまっています。

「これだけ水が溜まっていると、すごく歩きづらい。長靴自体が重いのでそれで足がとられる」

普通の長靴だと、こうして中に水がたまって、歩くたびに脱げそうになるため、避難が難しくなる場合もあります。

(防災科学技術研究所 水・土砂防災研究部門 酒井直樹副部門長)
「大雨で逃げるときは長靴ではなく、普通のシューズを履いて脱げないようにする」

豪雨で道路が冠水しているような時には、運動靴の方が歩きやすいともいえます。

(記者)
「雨で体力を持っていかれた。びしょびしょ。すごく濡れてる」

今回記者は、15分間豪雨に打たれながら歩き、大声で叫び続けたことで体力が奪われました。

予想を超える集中豪雨が毎年のように起こる今、笛や、目立つ色のものを身につける、脱げやすい長靴は避けるなど、いざという時への備えを常に考えておくことが必要です。

© CBCテレビ