会社員の税額はどう決まる?節税の基本「所得は少なく、控除は多く」を税理士が解説

「お金のことは難しいから苦手」「税金なんて、よくわからない」ですって?

なんて……嘆かわしい!

お金の勉強は早ければ早いほど、お金が貯まる速度が速まります。ちまちまと小さな節約をするよりも、お金の知識を身につけて節税をすれば、自分の生活はそのままの水準で、手元に残るお金が節税分増えます。

改めて税の基本を知ることで、ご自身がしっかりと節税できているのかどうか、まだ節税できる余地がないか、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなと一緒に確認しましょう。


会社員の税額が決まるプロセス

会社員の皆さんの中には「税金を安くする方があるなんて考えられない」という方がとても多くいらっしゃいます。それは、「税金というのが勝手に決められて、勝手に引かれている」という思い込みからです。税額決定は「勝手に」されているのではなく「年末調整」の提出資料次第だということを知っておいてください。

年末が近づいてきた11月ごろに横長3枚の用紙を渡されて、住所と名前、生年月日など「もう会社も知っているでしょ?」とツッコミたくなる内容を書かされ、「面倒だなぁ……」と思いながら提出してきましたよね? 最近はデータで提出する企業も増えて、記入の手間がかなり省けているようです。

この年末調整という手続きでは、会社は社員の1年分の給与年収を把握しているので、それ以外の税の計算に必要なデータを社員から回収して、今年1年分の所得税の金額を計算してくれます。

所得税は毎年1月から12月の1年分を一区切りとして計算しますが、1月から11月までは概算で“ちょっと多めの金額”を引いています。給与明細には「所得税」や「源泉所得税」などと表記されています。12月分の給与の金額までの年収と、年末調整で提出した家族や生命保険などのデータを加味して、1年分の所得税が決定するので、12月分の給与に毎月の給与から多めに引きすぎていた金額が戻ってくる、「年末調整の還付」が上乗せされていることが多いです。

そして、ここで計算された所得税のデータを使って、翌年の6月以降に1年かけて支払う住民税の金額も決まってきます。住民税は半年遅れなので、退職後に住民税の納付書が届いて驚かれる方も多いようです。要注意ですね。

つまり、節税したければ、年末調整のときに控除などの書類をしっかりと漏れなく会社に提出して還付をたくさん受けることが重要ということです。さらに、年末調整で織り込めなかった控除などの情報は、翌年3月15日締め切りの「確定申告」という手続きを税務署に行うことで計算のやり直しをしてもらえます。

では、どうすれば控除を活用して税金を安くすることができるのか、具体的に見ていきましょう。

節税の超基本「所得は少なく、控除は多く」

税金の計算は、収入や儲けに該当する「所得(しょとく)」という金額から、税金を安くするための「控除(こうじょ)」という金額を差し引きしてから税率をかけて求めます。

所得税 = (所得 ― 控除)× 税率

これが理解できればもう簡単。所得の金額が少なく、控除の金額が多ければ税金が安くなる、ということがお分かりいただけるでしょう。給与収入のみの方は、所得を増やすことも減らすこともできませんので、控除を増やすというのをしっかりやっておけばOKです。

給与収入とは別でフリーランスなどでの副業収入がある方は、所得の金額に特徴がありますので、場合によっては所得を減らせるケースがあります。どんな場合に所得が減るのか見てみましょう。

所得を減らす

最近は働き方改革で、副業を認める企業も増えてきましたね。なんて……喜ばしい!

しかし副業を始めたとしても、いきなりお客さんがしっかりとついていて、初年度から儲かるケースはまれです。「初めのうちは、準備のために経費を支出する方が多かった」という方も珍しくありません。

このように、給与とは違って自分で収入を得るという場合は、入ってきた収入から使った経費を差し引いて儲けを計算します。このとき、「事業所得」は引き算した結果がマイナスなら給与の分のプラスから差し引きしてもらえるのですが、「雑所得」はマイナスはゼロとして計算することになるので給与分の所得が減ることはありません。

「事業所得」として計算するためには、下記2つの要件を満たした上で、帳簿をつけることが必要となります。

  • 事業として経常的に収入を得ている
  • 税務署に開業届を出している

また、収入から差し引くことができる「経費」は、事業収入を得るために使ったものが該当します。収入と直接関係のないものは認められませんが、「これを支払ったことで収入につながった」と言えるのなら経費にしてOKということです。

「副業を始めたばかりでまだそんなに儲かっていないから」と言って申告をしない方も多いようですが、「まだマイナスです(涙)」という時ほど正しい判断でもれなく経費を計上して、しっかりと税金を安くしてもらってくださいね。

事業所得と雑所得について詳しくは、以前の記事「会社員の副業、雑所得と事業所得の違いとは? 確定申告が必要になるケースと開業届について税理士が解説」をご参照ください。

控除のチェック

控除が多ければ多いほど節税になります。自分が使える控除は全て使えていますか?

  • 雑損控除:災害や盗難などで資産に損害を受けたとき
  • 医療費控除:医療費を支払ったとき
  • 社会保険料控除:社会保険料を支払ったとき
  • 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済掛金やiDeCoなどを支払ったとき
  • 生命保険料控除:生命保険料を支払ったとき
  • 地震保険料控除:地震保険を支払ったとき
  • 寄付金控除:一定の寄付をしたとき

その他にも、本人や家族の状況に応じて受けられる控除もあります。

  • 障害者控除:自分や家族が障碍者のとき
  • 寡婦控除:夫と死別もしくは離婚した後婚姻をしていないなど一定の条件を満たすとき
  • ひとり親控除:婚姻をしていない場合で生計を一にする子がいるとき
  • 勤労学生控除:自分が勤労学生であるとき
  • 配偶者控除・配偶者特別控除:配偶者の所得が少ないとき
  • 扶養控除:扶養親族の所得が少ないとき
  • 基礎控除:所得が一定以下のとき(所得2,400万円以下なら48万円控除)

ご家族のなかに、「去年は正社員だったけれど、今年の途中から会社を辞めてパートしています」という方がいるなら要チェック! 1月から12月を1区切りとする年収で、配偶者控除や扶養控除をチェックすることができますので、ご家族に年収を確認して年末調整の資料に書き忘れないようにしましょう。

ただし、年末調整は実際の年末よりもかなり早いタイミングで締め切られます。年収がはっきりわからない場合は、概算でおおよその金額を書いておいて、もし間違っていた場合は翌年の3月15日までに確定申告で内容を修正すればOKです。

年末調整について詳しくは、以前の記事「年末調整が終わった後にすべきことは?確定申告が必要になるケースを税理士が解説」をご参照ください。

まずはiDeCoとふるさと納税で節税を実感

「何から始めたらいいかわからない……」という方は、一番手軽にできるふるさと納税から始めてみてはいかがでしょうか? ふるさと納税は自分が寄付できる上限金額を確認して、その金額の範囲内で自治体に寄付して、控除の手続きをすれば、翌年6月以降の住民税が安くなります。

また、iDeCoも自分の将来のために掛金を積み立てておくだけで、その掛金分を控除してくれるので、今年からすぐに節税できる簡単なアイテムです。掛金はすぐに解約できずに60歳以降でなければ受け取ることができませんので、その点だけ注意すればとてもお得な制度です。

まずは手始めにふるさと納税またはiDeCoからスタートしてみて、節税できるということを実感すれば、その節税分のお金が毎年貯まっていくので「なんて……喜ばしい!」ですね。iDeCoやふるさと納税は始めたけれど、まだ納税額が高いという方は、自分が利用できる控除の余地がないか、再チェックです。

資産形成のため、少しずつ、出来ることから始めてみてくださいね。皆様の節税を祈念しています。

※本連載は今回が最終回となります、ご愛読ありがとうございました。

© 株式会社マネーフォワード