乗馬初心者が注意すべき安全対策

乗馬は幅広い年齢層が楽しめ、何歳になっても始められるスポーツです。気軽な体験から技術の習得まで様々なレベルに応じたレッスンを受けることができます。
しかしながら馬と共に行うため、どんなに気を付けていても乗馬中の事故が発生してしまうことがあります。
今回は、乗馬をおこなう際に注意しておきたいこと、また万が一事故にあった際の対応についてまとめました。

乗馬施設での事故の種類

平成27年消費者庁より、落馬事故による注意喚起の文書が配信されました。
消費者庁によると、平成21年9月から平成27年9月までの6年間に、落馬による骨折や馬にかまれてけがをした等の事故情報が40件寄せられ、そのうち13件は治療期間が1か月以上の重傷とのことでした。
事故の内容は落馬が29件と最も多く、馬にかまれる(4件)、馬に蹴られる・踏まれる(3件)などもありました。事故のうち13件は、骨折等で治療期間が1か月以上の重傷となっています。
事故の発生状況を見ると、乗馬クラブにおける初心者の乗馬の際の事故が13名と最も多く、次いで観光地などでの乗馬体験中に事故に遭った人が7名いました。事故は10歳未満から70歳代まで幅広い年代で発生しています。

乗馬初心者や乗馬体験での事故は、本人の不注意よりも施設や指導者の安全管理対策に問題がある可能性があります。

参考までに消費者庁の文書にまとめられた、安全な乗馬を楽しむための注意事項をご紹介します。
・乗馬クラブを選ぶ際は、指導者や施設等の安全管理対策について確認しましょう。
・観光地などで乗馬をする際は、自分のレベルにあった乗馬をするようにしましょう。
・乗馬中は必ずヘルメットなどの安全装具を装着し、馬を驚かすような行動は避けましょう。

どれも当たり前のことですが、初めての乗馬クラブや観光乗馬施設での乗馬の際には、再度確認すると良いですね。

ヘルメットや手袋などの保護具の安全規格

日本には乗馬用品の安全規格がありません。そのため安全性の低い安価な製品が販売されている場合があるので注意が必要です。
ヨーロッパでは、落馬や柵への衝突、馬の踏みつけなど、あらゆる事故を想定した厳しい衝撃試験に合格した製品にのみ安全規格が付与されます。さらに、脊髄など身体の重要な部分をカバーできる構造となっているか、乗馬中にヘルメットやプロテクターが脱落しないかなど、様々な角度から安全性を確認しています。
身体を守れない保護具では着用しても意味がありません。購入する際には、ヨーロッパで制定されている安全規格を満たした製品を選ぶことをおすすめします。

乗馬用品の安全規格について、以下にまとめましたので参考になさって下さい。

乗馬用ヘルメットの安全規格

・VG1
2016年より開始された、より安全性を高めた新しい安全規格です。
日本でも多く見かける一般的な安全規格であるEN1384よりも、強い衝撃からの保護が求められるため、ヘルメットがやや厚くなっています。
・PAS
イギリスのヘルメット安全規格です。
BSI (英国規格協会) Kitemark®(カイトマーク)と一緒に表記されています。
・ASTM
アメリカの乗馬ヘルメット安全規格です。

上記以外の安全規格表記のある製品は、安全性に問題があるのもが含まれます。できるだけ上記の安全規格表記があるものを選んでください。

乗馬用ボディプロテクターの安全規格

・EN13158
日本でも多く見かける一般的な安全規格です。レベル1~3に分けられており、レベル3が最も安全性の高い規格となります。
・EN1621
まれに日本でも見かける安全規格ですが、乗馬用の安全規格ではないためおすすめしません。

現在乗馬クラブでは、エアバッグ式プロテクターが推奨されています。新しい保護具なので安全規格はありませんが、安全性が非常に高いことが認められ、世界的に普及しています。

※CEマ一クについて
CEマ一クは、製品のEU法令への適合を示す表示ですが、単体では乗馬用品の安全規格を満たす表示とはなりません。EN1384やVG1、EN13158など、乗馬安全規格を満たす表示もある製品を使用しましょう。

ヘルメットやプロテクターは、一度衝撃を受けると内部の衝撃吸収材が変形するため安全性が低下します。強い衝撃を受けた場合は外観上変化がなくとも新品に交換しましょう。また、経年劣化により安全性が低下する場合があります。5年を目安に新品に交換することをお勧めします。

安全規格はないものの、乗馬の際には手袋も乗馬専用の製品を使用しましょう。乗馬では騎乗前はもちろんのこと、騎乗時に手綱を握って馬とコンタクトを取ります。乗馬用の手袋は、汗をかいても滑りにくく、また摩擦による火傷の予防や防寒の効果もあります。

落馬時の対処方法

馬術競技において発生する落馬の原因は、馬が何かに驚いて急に跳ねた場合や、何かにつまずいて転んだ場合、障害を前にして拒止した場合などが大半です。また、乗馬クラブや学校馬術部などでのレッスンや部班運動などの練習においては、バランスを取り損ねての落馬もあります。

通常、乗馬クラブでは落馬による負傷や死亡事故防止のため、ヘルメットやプロテクターベストの着用を義務付けたり推奨していますが、馬場馬術競技のような正装での競技では着用は認められていません。

乗馬・馬術においては、一般的に落馬時の対処について以下のように指導されています。
・馬の首にしがみついた場合、回転して馬の前に落ちてしまわないように注意する。
(→前に落ちてしまうと、そのまま馬に踏まれてしまう危険性があるため)
・落ちるときはできるだけ鐙を外す。
(→鐙を支点として回転して頭から落ちると危険なため)
・着地するまではできるだけ手綱から手を離さない。
(→これにより足のほうから着地できる可能性が高まるため)
・着地した後はすぐ手綱を放す。
(→手綱を持ち続けていると、走り去ろうとする馬に引きずられてしまう危険性があるため)

頭では理解していても、突然のアクシデントの際に瞬時に対応することは難しいでしょう。しかし、知らないよりは知っておいた方が、いざという時に対応できるかもしれませんね。

乗馬の保険

馬の世話やレッスンの中で事故が起きてしまった場合、病院での治療や入院が必要になるかもしれません。乗馬クラブによっては、騎乗日のみ有効の傷害保険への加入を勧めている場合もあります。万が一に備えて傷害保険に加入しておけば、いざというときに安心ですね。
乗馬用の傷害保険でおすすめのプランを3つご紹介しますので、是非参考にして下さい。

1.公益財団法人スポーツ安全協会「スポーツ安全保険」
「スポーツ安全保険」は、保険料が比較的安価な点が特徴です。加入者も多く公益財団法人が主体となっています。補償されるのは加入団体の管理下での活動中と、活動のための往復中に起きた事象です。
2.楽天超かんたん保険「スポーツプラン」
こちらの「スポーツプラン」は、加入時に希望の商品を買い物かごに入れて支払いをおこないます。ネットショッピングのような手軽さが人気です。補償の充実度と掛け金のバランスにより、3コースから希望のコースを選択できます。
3.三井住友海上「GK ケガの保険(パーソナル生活補償保険)」
「GK ケガの保険(パーソナル生活補償保険)」は、スポーツに限らず職場や家庭での事故もまとめてカバーしてくれる保険です。日常生活での事故までカバーできるので、現在病気での入院や治療のための保険にのみ加入している方にはお勧めです。

いずれの保険についても、補償内容や金額の詳細については各保険会社のホームページをご覧下さい。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
乗馬は馬と共に楽しむスポーツですから、多少のアクシデントはつきものです。できることなら落馬は経験したくないですが、日頃から万が一に備えて万全の対策をおこなっておけば、いざという時に慌てずに済みます。安全管理対策をしっかりとおこなっている施設を選び、騎乗時に身に着けるものは安全規格に適合している製品を着用して、安全で楽しい乗馬をおこなって下さいね。

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