福山雅治ライブ「不正転売チケット」“購入者”もファンクラブ「永久退会」処分は重すぎる?

福山雅治さんのX(旧Twitter)アカウントでもスタッフ名義で「チケット転売」に関するアナウンスがあった。

俳優でシンガー・ソングライターの福山雅治さんの所属事務所が、8月15日に行われた福山さんのライブコンサート(以下、ライブ)に関連して発生したチケットの不正転売行為・および不正転売チケットでの入場について公式サイト上で声明を発表した。

声明によると、福山さんの事務所はチケットを不正転売した人物と不正転売チケットを購入した人物を共に特定、ライブへの入場を禁止にするとともに、ファンクラブから「永久退会」処分にしたという。

「ジャニーズも」「野球でも!」各界ファンから絶賛の対応

福山さんの所属事務所では、以前からやむを得ない事情でライブに参加できなくなったファンのために、定価でチケットを譲渡できるリセール(マッチング)システムを導入するなど、チケットの不正転売対策を強めていた。

しかし、今年8月15日に行われた武道館ライブの開催に先立ち、5月の時点で不正転売チケットの流通を福山さんの所属事務所が確認。規約違反であるためチケットを転売・購入をしないようファンらに呼び掛けていた。

その際、転売などの不正行為が発覚したチケットは無効とし、さらにチケットの不正転売と不正な転売チケットを購入した場合は、それぞれファンクラブから強制的に永久退会となることを宣言していた。それでも不正な転売チケットの売買は収まらず、当日も転売チケットでの入場があったことから、声明発表につながったようだ。

福山さんの所属事務所では、プレイガイド、イベンター(※)の協力のもと不正転売をした人物を事前に特定。公演当日には、不正転売チケット購入者にも事実確認の上、チケットを無効化、入場は断ったという。

※プレイガイドとは、音楽ライブなどの興行チケットの予約・発券業務を代行する事業および店舗。イベンターとは、興行の企画・手配などを行う人。

SNSでは不正転売行為への毅然とした対応に、「 他のアーティストもあとに続くべき」「ジャニーズ事務所もこのぐらい強気にしてほしい」「野球でも頼む」とさまざまなアーティストや興行ファンからの称賛が集まっている。

転売チケット「購入者」に罰則はない

学生時代に軽音サークルに所属し音楽好きという大門孝嗣弁護士も、チケットの不正転売について「本来チケットを欲している人の手元に十分に行き渡らない状態は望ましくない」と語り、福山さんの所属事務所の対応を好意的に受け止めている。

そもそも、チケットの不正な高額転売などは、「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」、通称「チケット不正転売禁止法」で禁じられており、違反した者は、一年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科される可能性のある行為だ。

「チケットを不正に転売する行為に罰則を設けることにより、転売行為の抑止効果を期待し、チケットの適正な流通の確保の実現を目的とした法律です」(大門弁護士)

しかし、現在法律で禁止されているのは、不正転売自体や不正転売を目的としたチケットの譲り受け(仕入れ行為)であり、不正な転売チケットを購入すること自体は処罰の対象にはならない。

「処分」に対しファンは不服を申し立てることはできる?

不正転売チケットに手を出した結果、「ファンクラブから永久退会」という今回の処分。充分に反省したファンが「重すぎる」と処分に対して不服を申し立てることはできるのだろうか。

大門弁護士は、福山さんの所属事務所が処分について“事前”に予告し、会員規約にもその旨を明記していたことを挙げて、次のように説明した。

「今回の永久退会については、ファンクラブの会員規約に基づいて行った対応であり、法的な妥当性が認められる可能性が高いと考えます。したがって、不正転売チケットの“購入者”であっても、永久退会の処置に対して、不服申し立ての主張は認められないのではないかと思います」

福山さんの所属事務所は、購入者について「チケット転売は、『購入者』がいなければ、取引が成立しません」と声明内でも言及。その上で「どうか今後とも正規ルート以外でのチケットの購入は決しておこなわないよう、強くお願い申し上げます」とファンに呼び掛けた。

大門弁護士も「転売チケットの購入それ自体が、直ちに違法性のある行為に該当する可能性は高くはありませんが、違法な不正転売目的を疑われる可能性もあり、望ましい行為とは言えません」と不正転売チケットの‟購入に警鐘を鳴らす。

「『チケット不正転売禁止法』が施行(2019年6月14日)されてから、まだ日が浅いですが、このような不正転売行為の禁止が世間の“常識”となり、転売問題が是正され、一人でも多くの方が好きなアーティストのライブを純粋に楽しむことができる日が来ることを願っています」(大門弁護士)

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