「不倫なんて、人から言われる筋合いないもーん」──妻、夫、恋人の危険な関係を描いた山田詠美の文庫最新刊『血も涙もある』、本日発売!

山田詠美の長編小説『血も涙もある』が新潮文庫より本日発売された。 35歳の和泉桃子は、料理研究家・沢口喜久江の助手を務めつつ、喜久江の夫・太郎と付き合っている──。「人の夫を寝盗る」のが趣味と語る桃子と、喜久江、太郎のユーモラスで残酷な行く末を魅力的な料理の数々とともに描いた作品だ。 痛快な「エイミー節」が炸裂する本書。ドキッとするような至言が随所に登場する。 例えば、人気料理研究家の喜久江が売れないイラストレーターの夫・太郎に放つ言葉。

「不倫の三角関係がおっきいスキャンダルに発展するのは、少なくともそのうち二人が成功したビッグネームだった時だけなのよ!」

また、太郎と付き合っている桃子が友人の緑に反論する場面。

「不倫なんて、人から言われる筋合いないもーん。倫理が何かは自分で決める……なんて、すいません、偉そうで」

そして、テレビの料理番組に出演している妻を見る太郎の心情。

男の胃袋をつかむなんて言い回し、まるでホラーではないか、と思うのです。しかも、そこでにこやかに同調するのが、自分の妻とは。

いわゆる不倫を描いた作品だが、男女の関係に世間一般の基準を持ち込むことがいかに無意味なことであるかを突き付ける小説だ。桃子と太郎の関係はやがて喜久江の知るところとなり、彼らは互いを傷つけ合うことになるが、その後予想もつかない展開が待っている。 有名人の不倫が取り沙汰されるたびに、「そんなに騒ぐことか?」と実は感じている方へ、ぜひ読んでいただきたい一冊だ。

書籍内容

不倫? 倫理が何かは自分で決める──。35歳の和泉桃子は当代随一の料理研究家・沢口喜久江の助手を務めつつ、彼女の夫・太郎と付き合っている。「人の夫を寝盗ること」を趣味とする桃子だったが、喜久江を心から尊敬してもいる。一方の喜久江は、太郎の女癖を受け流すのが常だったが……。“lover”と“wife”と“husband”三者の視点で語られる「危険な関係」の行方は。極上の詠美文学!

【著者紹介】

1959年、東京生れ。明治大学文学部中退。'85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞を受賞しデビュー。'87年に『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、'89(平成元)年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、'91年『トラッシュ』で女流文学賞、'96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、'05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、'12『ジェントルマン』で野間文芸賞、'16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。ほかの著書に『ぼくは勉強ができない』『学問』『血も涙もある』『私のことだま漂流記』などがある。

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