明治維新の背景に地球寒冷化? 歴史をつくるのは空か人か 

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 「今夏も暑かった」と過去形にしたいものだ。外は危なく、休日は家で冷房代を気にしつつ本を広げる。<グローバルヒストリー>なる言葉に出合った。世界史を地球規模で眺める新しい研究分野である。

 西がローマなら東は漢が栄え、西で十字軍遠征や地中海交易が盛んな頃、東は元が興隆。ローマと漢の衰退はほぼ同時期で、欧州がペスト禍で暗い時代になった頃、元も滅亡した。シンクロ具合に地球寒冷化の影響を見て取る。

 ローマは温暖化の中で繁栄し、かの英雄ユリウス・カエサルも時代に恵まれたといえよう。その後、寒冷化の訪れで牧草や作物の生育が悪くなると、各地で飢えた民族の大移動と玉突き現象が発生し、異民族の流入を許したローマは著しく衰えた。

 西洋中心史観のためか、グローバルヒストリーでは寒冷化と逆の温暖化の弊害があまり指摘されない。実際は緯度の高い英国でワインのブドウ栽培が盛んになるなど北半球の北側が温暖化の恩恵を受け、南側や大陸内部は豪雨や干ばつが相次いだ。

 南北差と呼べる現象は日本も同様で、温暖化したとされる平安時代末期、西日本は猛暑と干ばつ、洪水が頻発。対して緯度の高い東日本は作物の収量が上がったという。一転して寒冷化の江戸時代は特に東北諸藩が冷害による飢饉(ききん)に苦しみ、暖かな薩長両藩は幕末に台頭。いったい歴史をつくるのは人か空か。読書の秋に調べてみたい。

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