「頑張って逃げてよかった」春香クリスティーンさん スイスでいじめ体験「いまの環境がすべてではない」

経済活動が活発になり、社会にも活気が出ている一方で、新生活に馴染めず、悩んでいたり、孤独を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。同じような経験をしたり、そうした子どもたちに接してきた著名人に当時の話、それから、いまになって思うことを聞いていきます。

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3回目は、小学校のときにいじめを受けた経験のあるタレントの春香クリスティーンさんにSBSラジオ『IPPO』パーソナリティの近江由佳アナウンサーが聞きました。

極度の人見知りだった幼少期 眼鏡を床に投げられたり、ボールを頭に当てられたり…「これって嫌がらせ?」仲間意識持てずに孤立

近江:春香さんは、お父様が日本人でお母様がスイス人ということですね。スイスの生まれで、小中高はスイスでお過ごしになったんですか。

春香:そうですね、高校2年生の途中といいますか、1学期のあたりまで、スイスのチューリッヒに住んでいました。

近江:テレビで見る限りはとっても明るい印象があるんですけれども、幼い頃につらい経験をされたということなんですね。

春香:そうですね。いまでこそ明るいという印象を持っていただけるみたいなんですけど、本当に極度の人見知りで、思うことがあっても人にいえない、相手にそれを伝えることができなくて自分で飲み込んでしまうようなタイプでしたね。

近江:そうなんですね。どのようないじめ被害を受けましたか?

春香:極端ないじめに遭っていたというわけではないと思うんですけれども、スイスの小学校へ通っていたときにクラスに馴染めなくて、嫌がらせなのかもわからないんですけど、何か嫌なことが積み重なっていった経験がありますね。

例えばなんですけれども、人がいない教室で、私が眼鏡を探してウロウロしてたら、あなたの眼鏡ここだよって床に投げられたんです。ただ単にわからなくて投げたのが床に落ちたのか、あえて故意に床に投げられたのか、わからなかったのですが、それで眼鏡が曲がったり壊れたりして、すごくショックを受けました。

あとは体育の授業で気づいたらよくボールが頭に当たっていて、私がぼやぼやしてたからか、わかんないんですけど、そういう嫌なこと、辛いことが積み重なっていって、特に私は当時すごく敏感だったので、何か一つ拒否されると、何かそれがどんどん嫌なこととか辛いことの積み重ねになっていて、クラスメイトに「遊んで」っていうことも、もちろん言えなくて、なんか「遊んでもいいですか」ってなんか下手に出て聞いたりしたこともあったんですけど、「いいよ」っていう日もあれば、「いや、今日は駄目」とか、断られたりして。クラスメイトだから別に上下関係とかないはずなんですけど、なんかあの子たちと一緒にはなれないみたいな、なんか同じ仲間というような意識を持てずになんか辛かったですね。

汚いものを見るかのように見られて…クラスメイトとの人間関係がつらかった

近江:クラスメイトに結構気を使っていたんですね?

春香:そうですね。気を遣っていましたし、できれば接したくなかったんですよ。一緒に遊びたくもなかったんですけど、1人で休み時間過ごしていると、それを先生に注意されて遊びなさいっていわれたので、なんかもう嫌でした。

近江:そういったことをされるきっかけみたいなものって、思い当たる節はあるんですか?

春香:はっきり、これっていうのはわからないですけど、自分のなかですごく強烈に印象に残っているのは、自分があんまり衛生的でなかったんですけど、子どもの頃の遠足か何かで噛み終わったチューインガムを捨てようと思って、捨てる前に手の中でこねくり回してたんですけど、それをクラスメイトが見ていたんですよね。「キャー」って、すごく気持ち悪いっていわれて、その行為は汚いんでしょうけど、でも、私自身も汚いものを見るかのような目で見られて、それからその子とは、ほとんど会話をかわさなかった気がします。そこで何か冷たい目で見られたことが原因というか…。本当に些細なことなんですけれども、いま思うと、それがきっかけで、もう人間関係を築くのに、その後すごく苦労しました。

近江:どういったことに苦労されました?

春香:自分から話せないですよね。その子に話しかけることもできないし、きっと汚いと思われてるだろうなとかって思ってたので。

「逃げることは決して悪いことじゃない」日本語学校が居場所に…

近江:小さいときにそういう経験をするって、大きな傷になると思うんですけども、そんな中で春香さんを支えてくれたものだったりはありますか?

春香:そうですね、学校に相談しようとしたことがあったんですけれども、ホームルームで手を挙げて、先生にみんなの前でこういうことがあるんですっていうふうにいったんですけど、そこではいじめた子に「先にそういうこといってくれればよかったのに」って言われてしまったので、なんかもう閉ざされてしまったような気がしたんですね。

それがすごくつらかったんですけど、その代わり、家でも勇気を出してもう1回打ち明けたら、家族は全面的に味方になってくれました。味方になってくれる人がいたっていうのはすごく大きかったです。

近江:そのときは、日本人のお父さんともコミュニケーションをかなり取りましたか?

春香:そうですね。コミュニケーションも取りましたし、日本語学校にも当時通っていたんですね、週に1回。そこで日本語文化というか、普段の学校と違う環境に身を置けるっていうのも大きかったです。日本語学校には幼稚園からずっと通ってたんですけど、そこは、自分にとって、もう一つの居場所みたいになってたんで、現実逃避になってましたね。なんか、やっぱり一つ辛い場所があったときに、もう一つ何か心のよりどころにある場所っていうのは、必要ですね。もう何でもいいと思うんです。私はたまたま日本語学校があったんですけれども、本当に趣味とかでもいいと思いますし、何かもうアニメとかゲームとかそういう世界とかでもいいと思います。

逃げ場があるってのは大事だなと思います。逃げることは決して悪いことではないということだと、強く思います。

環境が変われば人も変わる「あのときの自分がすべてじゃないんだ」

近江:例えば中学に入ったり、高校に入ったりとか、そういった変化によって何か変わったりしたことはありますか?

春香:やっぱり変わりました、大きく。小学校にいたときは、もう目の前のことが辛かったので、もはやこの環境を抜け出すっていうことしか考えてなかったんですけども、いざ環境が変わってみれば、人からの見られ方も変わりますし、自分の気持ちも変わりますし、こんなにも人間って変われるんだって、あのときの自分がすべてじゃないんだなっていうふうに思いました。

近江:いま振り返ってみると、あのときの自分に何か伝えたいことや助言とかありますか?

春香:そうですね。逃げていいんだよっていう、そのひと言ですかね。いまの環境がすべてじゃないよっていうのはいってあげたいですね。逃げることは恥ずかしいことでもないし、逃げることによって、何か自分は弱いわけでもないよっていう、そうやって自分を守っているんだよって。だから、大丈夫だよっていってあげたいですね。

近江:春香さんがいままで嫌がらせなども受けてこられた中で、なんかもっとこういうふうに世の中がなったらいいなとか、こういう制度があったらいいなとかそういったことはありますか?

世界のどこかに話を聞いてくれる味方は必ずいる

春香:いろんな制度とかあるとは思うんですけど、なかなか活用しづらかったり、知らなかったりっていうのもあると思うので、とにかく相談できるところを、話を聞いてくれるところが一つでも二つでも多ければ多いほど、救われるなと思います。世界中どこかに必ず味方がいるんですけど、それもなかなか気づけないので、本当に何か聞いてくれる人がいるっていうことに気づくことが、一番だと思います。

近江:そうですよね。いま悩んでいる小中高生がいると思うんですけれども、そういった人たちに向けて何かメッセージがあれば、聞かせてください。

春香:はい、きょうお話した中でも出てきたと思うんですけど、味方は必ずいるっていうこと。それから、いま置かれてる環境がすべてじゃないっていうことですね。なので、もう逃げることは恥ずかしくないので、自分が過ごしやすいと思う環境や場所を見つけてほしいなって。それが将来的に自分にとって、その楽しいとか、ほっとするっていうものにつながれば、私にとっては日本だったんですけど、日本に来たことによって、何か開花して夢が叶ったりするっていうこともあると思うので、その逃げ道が逆に将来か何か近道につながることもあるので、悲観的にならないで欲しいなと思います。

近江:そのとき悲観的にならずにっておっしゃいましたけども、何かいまに生きているなっていう手応えはありますか?

春香:もうすべてが生きているなと思います。当時の気持ちがあったからこそ、その日本への強い執着っていうんですかね、日本に行きたいって思いにつながりましたし、それによってこうやっていま、日本で活躍できるようになったというか、生まれ変われるようになったという、こういう人生が待っていたので、本当に当時の自分がなかったら多分今の自分もないなと思う。よかったなと思う。頑張って逃げてよかったなって思います。

近江:「頑張って逃げてよかったな」ってすごく大人にも響く言葉だなと思いますね。いま、悩んでいる方もいらっしゃると思いますけれども、春香さんの「逃げてもいい」という言葉を胸に刻んでいただいて、肩に入った力を抜いていただければなと思います。

【厚生労働省がHPで紹介している主な悩み相談窓口】
◇いのちの電話
0120-783-556(午後4時~午後9時、毎月10日は午前8時~翌日午前9時)
0570-783-556(午前10時~午後10時)

◇#いのちSOS
0120-061-338(日~火、金は24時間対応、水、木、土は午前6時~深夜0時)

◇こころの健康相談統一ダイヤル
0570-064-556(相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります)

◇よりそいホットライン
0120-279-338(24時間対応)
岩手県、宮城県、福島県からは0120-279-226(24時間対応)

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