党勢拡大に向け、玉木雄一郎候補と前原誠司候補が大激論!選挙ドットコムちゃんねる国民民主党代表選挙候補者討論会【テキスト要約版】を公開

選挙ドットコムちゃんねるでは8月28日、国民民主党の代表選挙候補者討論会を生放送しました。立候補している玉木雄一郎衆議院議員と前原誠司衆議院議員に登壇していただき、次の衆議院議員選挙を見据えた野党共闘に関する方針、党勢拡大のための支持率向上に向けた方策などを伺いました。この記事はその生放送でのやり取りを要約したテキスト版です。9月2日の投開票に向けて、両候補が訴えたこととは?そして、その差異はどこにあるのでしょうか?

立候補者2人の基本プロフィール

2020年9月に現在の国民民主党が結党して以来、2回目となる今回の代表選挙。立候補したのは現代表の玉木雄一郎衆議院議員と、現代表代行の前原誠司衆議院議員の2人です。有権者は国会議員(21人)や地方議員(271人)、党員・サポーター(3万6682人)です。代表選は、有権者の種別ごとに与えられたポイントを得票数に応じて各候補に配分して、獲得ポイント数が多い候補を選出する仕組みです。

8月21日に告示され、8月29日に郵便投票・8月30日正午に電子投票が締め切られました。9月2日の臨時党大会で投開票が行われ、新代表が選出される予定です。新代表の任期は3年間です。

玉木雄一郎(たまき・ゆういちろう)候補のプロフィール

玉木候補は1969年5月1日生まれ、香川県出身。選挙区は香川2区で、現在5期目です。

東京大学を卒業後、大蔵省(現 財務省)に入省し、行革大臣秘書や専門官などを経て、政治家の道に入ります。

初めて立候補した2005年衆院選では落選しましたが、その次の2009年衆院選で初当選を果たして以降は5回連続で当選しています。

2018年5月から旧・国民民主党代表(共同代表含む)を務め、現在の国民民主党が結党した2020年9月以降、代表を担い続けてきました。YouTubeでの情報発信が盛んな政治家としても知られ、公式チャンネル「たまきチャンネル」に登録者数は17万人(2023年8月30日現在)を超えています。

前原誠司(まえはら・せいじ)候補のプロフィール

前原候補は1962年4月30日生まれ、京都府出身。選挙区は京都2区で、現在10期目です。

京都大学を卒業後、松下政経塾に8期生として入塾し、1991年京都府議会議員選挙に初当選しました。1993年衆院選で京都1区から出馬して当選を果たし、以降は10回連続で当選を重ねています。

国会議員として、民主党代表や民進党代表、国土交通大臣や外務大臣など党や内閣の要職を歴任してきました。現在は、国民民主党代表代行を務めています。

自他ともに認める、政界屈指の「鉄オタ」の顔も。自身のTwitterでは、訪れた先々で撮影した車両や車窓からの風景などを投稿されています。

選コム討論会で両候補が語った野党共闘への姿勢の違いとは?

(以下、8月29日実施の選挙ドットコムちゃんねるの国民民主党代表選挙討論会の要旨になります)

【野党共闘について】

野党共闘に関する各候補者のスタンス(選挙ドットコム編集部まとめ)

Q(TO 玉木候補)

ガソリン価格高騰の際に減税できるトリガー条項の発動に首相が理解を示す答弁をしたことで、玉木候補は昨年度の当初予算に賛成をしました。 しかし、結果的にトリガー条項の発動には至っていません。当時、自民党や公明党とはどこまで握れていたのでしょうか?

玉木雄一郎候補(以下、玉木候補):

我々は2年前の衆議院選挙で一番の主要公約に「トリガー条項凍結解除によるガソリン値下げ」を掲げて戦ったので、何としても実現したいと考えていました。

特に、昨年2月以降はロシアのウクライナ侵攻で、国際的にも原油価格が高くなった。これは国益にも資するだろうということで、引き下げを交渉したわけですね。ただ、我々は小さな政党ですから、普通のことをやっていたのでは見向きもされない。そこで、予算案への賛成をテコに、岸田文雄総理、そして公明党の山口那津男代表に交渉のテーブルについていただいて、トリガー条項凍結解除の議論を始めました。

これはもう現にそうだったし、実は公明党さんも、トリガー条項凍結解除に行こうということでした。しかし、仕入れ時にすでに「蔵出し税」と呼ばれる税金がかかってるので、高くなったものを安く売ることで損が生じてしまう。課税の時期とかタイミングをどのように円滑にするのか、その具体的な対応案をもうまく出せない中で対策は急務だったため、結果として補助金になってしまいました。そこは、未だに非常に残念だし、引き続き(凍結解除を)求めています。

ただ、結果として、最大リッター35円を超えるレベルまで補助水準が拡充しました。リッター168円以下にしようという当時の約束は一応は守られたことになります。100点満点ではないのでご批判もいただいてますけれど、一定の実現には繋がったと思います。

Q (前原候補へ)

現在の党の路線では自民党から利用されてしまうと警鐘を鳴らされていますが、(前原候補が訴えている)立憲民主党や日本維新の会との選挙協力では利用される恐れはないと言えるでしょうか? 

前原誠司候補(以下、前原候補):

そうならないように、しっかりと交渉します。お互いギブアンドテイクなので、我々もプラスになるように交渉するので、私はあまり心配していないですね。

Q(前原候補へ)

民主党政権が終わってから10年が経ちますが、最初の5年間は民主党と民進党という「大きな塊」で、支持率は残念ながら低迷を続けました。 前原候補は民主党代表も務められていましたが、今回トライされていることは同じ失敗にはならないでしょうか?

前原候補:

私が民進党代表だった1ヶ月もなかったんですが、一つの反省は、希望の党との合流をめぐる情報管理です。

安全保障法制には全員が賛成していたにもかかわらず「踏み絵」と言われ、党首を経験した人はダメだという「排除リスト」なるデマや怪文書まで流れ、疑心暗鬼に陥りました。野田さんが排除されていましたが、小池さんは野田さんのことをすごく高く評価されていたので、排除されるはずがありません。

もし今回私が代表にならせていただいて野党協力や大結集を進めていく際には、しっかりと平時から備えておきます。

Q(玉木候補へ)

前原候補の立憲・維新との調整などのお話について、玉木候補のお考えはいかがでしょうか?

玉木候補:

百歩譲って、国民民主党と立憲民主党、国民民主党と日本維新の会で、何かできるのはイメージができます。しかし、野党第1党の立憲と第2党の維新が、現に次の衆議院選挙に向けて70以上の選挙区で重なっています。うちと立憲なら4選挙区でしか重なっていなくて、現職(の選挙区)では全くだぶってないです。

この70以上の選挙区で候補者調整をするのは相当なことです。それに、今の支持率を見ると、比例では維新が野党第1党になる可能性もある中で、小選挙区で負けても立てることの意義が維新側にはあるので譲らないと思うんですよね。例えば、長崎1区や埼玉14区で調整に応じるとは思えない。

そういう中で「大きな塊」と言っても、まず野党第1党と第2党が自公に対して、一枚岩で向き合う体制がとれるかということに私は極めて懐疑的なんですね。うちだけが候補者をおろす・おろさないを調整するということになれば「労多くして益なし」になります。

だから次の衆議院選挙は、我が党として陣営を固め、比例と小選挙区の組み合わせで最大化できるような候補者の立て方や戦略的な取り組みが現実的だと考えています。党を強く大きくすることに集中することが必要です。

Q(前原候補へ)

こうしたお2人の考え方の違いはどのように生じていると考えていますか。

前原候補:

信頼関係ですよね。維新の馬場伸幸代表や藤田文武幹事長と、候補者調整を含めたディープな話ができるのは国民民主党には私以外にいません。

仲間を批判しているのではありません。総支部長や比例復活で当選した1回生の方々は人生を懸けて出馬してくださる。そうした人たちのために、今後のことも含めて立憲や維新としっかり話ができるのは私しかいません。

候補者擁立の考え方、進め方は?

Q(玉木候補へ)

単独路線での党勢拡大を考えると、今の制度ではできる限り小選挙区に候補者を立てることになりますが、その一方で落選するリスクも増えます。どのように考えていますか。

玉木候補:

一つの目安は、全国11のブロックごとに現職を含めて3人立てること。1人は確実に小選挙区で取ってもらって、1人は比例復活して、もう1人は次に向けてと考えています。

もちろん「カカシを立てる」つもりはないので、1人1人を大切にしつつ、でも比例と小選挙区を組み合わせながら、最大限の議席をどう確保していくのかです。

前回は27人立てて、比例5議席と小選挙区5議席を獲得しました。2割ずつ比例票を確実に増やすという目標を達成するには、次の衆院選では380万票の比例票を取る必要があります。そのためには、当然立てる総支部長の数も27から、最低でも2割増の30強を一つのめどに立てていきたいと思っています。積極的に擁立していくっていうのは必要だろうと思ってます。

Q(前原候補へ)

次期衆院選の具体的な数字目標はありますか。

前原候補:

党勢を拡大するなら、やっぱり支部長を立てなきゃ駄目なんですよ。玉木さんは2割2割増やすとおっしゃるけども、他党も必死で、立憲は150人、維新は130人、そして参政党は50人擁立しているのに対し、うちは23人なんですよね。2割ずつ増やすと言われても現実味がないんですよ。

ですから、私はとにかくまず私が代表にならせてもらえればこの総支部長をどうやって増やすか考えなければなりません。具体的な数字目標は現在のオファーの状況なども踏まえて考えなければなりませんが、50人ぐらいでないとね。

Q(前原候補へ)

れいわ新選組と参政党は、枠組みの中に入りますか。

前原候補:

れいわ新選組は入らないですよ。参政党は話をしてみなきゃならないと思っています。

どうする政党支持率?

Q (両候補へ)

国民民主党の現在の支持率の受け止めと、今後の展望をお願いします。

国民民主党と立憲民主党、日本維新の会の支持率(選挙ドットコムとJX通信社の定例意識調査より)

玉木候補:

最近の上昇傾向は、メディア露出に一定程度比例していると考えています。

国政選挙もそうなんですけど、やっぱり地方選挙への候補者擁立も含めて、露出を高めて受け皿を作りたいです。全国で国民民主党を認識していただく機会を作っていくことが一番大事だと思いますね。

前原候補:

皆様のおかげで国民民主党を取り上げていただいてるということが大きいとは思いますが、それでもまだまだ低いですよね。これだとなかなか展望を開けないというのが私の率直なところです。やはりどこかで大きな転換をしなくてはなりません。

 Q(両候補へ)

今後の支持率についてのお考えをお願いします。

玉木候補:

来年の通常国会が終わった頃には、立憲民主党の支持率を上回ってると思っています。皆さん笑うかもしれませんけど、色々なトレンド分析をしていると、そういう可能性もある。次の代表任期の2025年までのその間の責任を負うということなので、その次の任期の終わり頃にはですね、今、支援いただいている4つの民間産別が安心して、我が党で擁立しても大丈夫だと思ってもらえるような党勢・支持率にすることが最優先です。

そのためには、まずしっかり総支部長立てていくことと、常日頃から全国で旗を立てて活動していくことです。

前原候補:

党を大きくしていく、支持率を高めていくことはお互いが目指しているところです。 ただ、やはり大変だなと思うのは1人1人の総支部長のサポートです。

そういう意味でも、立憲と維新とも調整が不可欠で、どれだけできるかはまさに交渉力にかかります。や一緒に政権を担おうという呼びかけのもとで、信頼関係を持って、ある程度の選挙区調整・枠組み作りっていうのはやっていかないと、私は総支部長候補がなかなか出てこないんじゃないかという気がしますね。

玉木候補:

そのときに問題なのが、立憲民主党さんの先に日本共産党さんがいることです。政権を担おうという自負があるから、憲法、安全保障、そして原発を始めとしたエネルギー政策は現実的にやらないといけない。

私は、原発ゼロを綱領に掲げている立憲に変わっていただかなくてはと考えています。

前原候補:

我々のレゾンデートルである政策は大事です。2020年の8月に旧国民民主党の多くは、立憲民主党に行かれたんですね。そこからまた人を集めた原点はやっぱり政策です。政策を横に置いて数を増やすことには与しないという原点を絶対に忘れてはなりません。

憲法改正や原発の安全利用、日米同盟の堅持は必要だし、教育予算の倍増や、農業・エネルギーの自給率を高めることが政策目標です。そして、賃上げにも徹底的に我々はこだわってきました。政権を取ることを考える上でも、こうした価値観を共有できる方々に一緒にやりませんかと呼びかけていきます。

個別質問:党名変更は?単独党勢するなら?

Q(玉木候補へ)

党名変更について、現在はどうお考えですか。

玉木候補:

変更については賛否両論あります。決めうちではなくて、皆の意見を聞いて判断していきたいと思っています。

Q(前原候補へ)

仮に、単独で党勢拡大するとしたら方策はどう考えますか。

前原候補:

現職の全員当選と、総支部長できるだけ上乗せしていくことに力を入れたいと思いますね。

人生かけて総支部長になってくださった方々をどれだけ当選させられるかは代表としての責務です。誤解を恐れずに言うと、新たにこれから総支部長になってくださる方は「カカシ」でもいいという人を選んでいくしかないと思っています。国政選挙後の地方選挙を見据えた候補者擁立など、色々なことをしっかり話をしながら総支部長を選んでいきます。

討論会を終えて…選挙ドットコム編集長より

今回の国民民主党の代表選では、他のメディアでも多くの討論会が開催されていたため、選挙ドットコムの討論会は、政策よりも選挙に焦点を当てた議論を行いました。両候補には真摯にお答え頂きまして、心より感謝申し上げます。

一方で、事前に頂いた視聴者の皆さんからのご質問については、もう少し時間を設けて、当日お伺いできたら良かったという反省があります。ひとえに私の進行によるものであり、次回以降の討論会では改善したいと考えております。

改めまして、大変お忙しい中、選挙ドットコムの討論会にご出演頂きました両候補、そして、討論会をご覧くださった視聴者の皆様に深く感謝申し上げます。

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