「女性のひとり行動=ナンパ待ち」のカン違い…“しつこい”男性への適切な対処法は?

ひとりで気楽に飲む時間を邪魔されても「大人な対応」が大切(Fast&Slow / PIXTA)

女性が動物園やフランス料理店などを訪れ、“ひとり時間”を満喫する日常を描くドラマ『ソロ活女子のススメ』が現在シーズン3まで制作される人気シリーズとなっている。

クロス・マーケティングが実施した「おひとりさま消費に関する調査(2022年)」によれば、「ひとりで自由に使える時間」が必要だと答えた女性は94%に上り、実際に41%の女性は直近1年間に百貨店などへのショッピングや音楽イベントへの参加、劇場、映画館、美術館などにひとりで出掛けていたこともわかった。

こうして多くの女性がひとり時間を満喫している一方で、SNSなどには「ひとり時間を楽しんでいたのに男性に邪魔をされた」として、ナンパやマンスプレイニング(※)の“被害報告”が投稿されている。

※「man(男性)」と「explaining(説明する)」を掛け合わせた言葉で、「女なのに酒好きとは関心だ」「若い女だからゴルフのことは詳しくないだろう」など男性から女性に対して、性差別を含んだ上から目線で行われる説明のこと。

今年6月には、ソロキャンプを行っていた女性に「LINEを教えて」などと声をかける男性の動画がSNS上で拡散され話題となった。投稿には「怖い」「無事でよかった」という反応のほか、「ひとりで行動してる女性=ナンパ待ちだと思ってるおじさんいたからな…」などと一部の男性の誤った認識を指摘する声も寄せられた。

「ナンパ」には“法律名”で対処する?

女性にとってナンパやマンスプレイニングといった行為は、ほとんどの場合が迷惑だろう。

しかし、自身もナンパやマンスプレイニングといった迷惑行為の被害に遭ったことがあるという青木千恵子弁護士は、「面識のない人に声をかける行為自体は、法律的に規制できるものではない」と言う。

ただし、“しつこい”声かけなどは犯罪に当たる可能性があるようだ。

「『飲みに行きませんか』と声をかけられて、『行きません』と断ったり無視するなどして“拒絶”を表したにもかかわらず、しつこく誘う、立ちふさがる、ついて歩くなどの行為があれば軽犯罪法に違反する可能性があります(軽犯罪法1条28号)。

また『ちょっと待って』などと言って腕をつかんで引き止めると暴行罪、『一緒に行かなければ〇〇するぞ』などと脅すと強要罪も成立し得ます」(青木弁護士)

断っているのにもかかわらず、しつこく食い下がる相手には、法律名をつげる」ことも撃退法のひとつだと青木弁護士は話す。

「これは私が弁護士になってから身につけた方法ですが、『軽犯罪法違反ですよ』と法律名を言うと引き下がる人が多いです。『この人は警察に通報しかねない』『付きまとわない方がいいな』と早く相手に伝わるのがいいのかなと思います。

もし、それでもさらに食い下がってくる人がいたら、これはもう本当に警察に通報するなり、周りの人に助けを求めるなり、ひとりで対応しないようにして、自分を守ることに専念すべきだと思います」(青木弁護士)

“ひとり時間”の守り方

街中であれば、声かけを断ってすぐに立ち去ることもできるが、ひとり時間を満喫するために訪れた場所では、声をかけてきた人と長時間同じ空間にいなければならないこともあるだろう。

青木弁護士は「ひとり時間を一方的に邪魔されているわけで、難しいところですが」と前置きしつつ「大人の対応」がカギになるという。

「もし相手が『ひとりで寂しいかも』『女性だからこの知識は知らないかも』と声をかけて“あげてる”、教えて“あげてる”のだとしたら余計なお世話ですが、『声をかけられたくない』ということが伝わっていない段階では、相手が悪意の人とは決めつけられません。

同じ趣味の人を見つけてうれしくなって声をかけたかもしれないし、仲間を増やしたいと思ったのかもしれない。マンスプレイニングも同じで、失礼な話だけど本当は一緒に楽しみたいだけかもしれません。そうして声をかけてきた相手に対して、最初からけんか越しに挑むと、必要のない争いを生み、怖いことに巻き込まれる可能性はむしろ高まってしまうと思います。

ですので、まずは穏やかに『ひとりで楽しんでいます』と伝えてほしいです。悪意や下心のない人であれば『そうなんですね』と去っていってくれるはずですから」(青木弁護士)

実際に青木弁護士は「ひとり飲み」の際に声をかけてくる相手に対し、無視はせず「ひとり飲みが好きでひとりで飲んでいる」と伝えるようにしているという。

「人とのコミュニケーションを排除するのではなく、コミュニケーションをとって自分の思いをわかってもらうほうが、むしろトラブルは少ないのかなと思います」(青木弁護士)

アウトドアでは先手「コミュニケーション」も有効

さらに、青木弁護士は「断る」ことの心理的負担を考えて、時には“先手”を打つことも有効だと次のように説明した。

「たとえばキャンプであれば、周囲のサイトの人たちにあいさつしておく。テントに「声かけお断り」と貼っておくのも一案ですが、やはり事前にあいさつし、「ひとり時間を楽しみにきた」と周囲に告げておくと、“ひとり時間を邪魔されずに、緊急時には助け合える環境”が整えられるのではないかと思います。

アウトドアのイベントでは、人数や性別を問わず、嫌な思いや怖い思いをする可能性はありますので、最低限のコミュニケーションはとり、セーフティーネットを張っておくというのは、ひとりの女性に限らず重要なことだと思います。自分にとって心地よい空間を、周りの人と協力して作り上げてほしいです」

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