【関東大震災から100年】 100年前の映像が語る被害 継承には

関東大震災から100年。今週は毎日、防災に関する特集をお伝えしています。100年前、東京で何が起きたのか、当時の状況を記録した貴重な映像を通して、震災を未来につなげる取り組みを取材しました。

国立映画アーカイブの研究員のとちぎさん:「関東大震災の(映像)は、ある意味では異例なぐらい、奇跡と言っていいぐらい映像が残されている」

100年の時を経て残されたフィルム映像には、炎と煙に包まれる有楽町の帝国劇場や、路上にがれきが散乱する京橋でトタン板を引きずり歩く男性の姿が。音声は記録されていませんが、当時の様子が克明に伝わってきます。

1923年9月1日、関東大震災は、東京や神奈川などで震度7相当の地震を観測し、死者・行方不明者は約10万5千人に及びました。未曾有の災害をとらえた当時の映像フィルムは、国の専門機関、国立映画アーカイブが、全国のフィルム所有者から寄贈を受けるなどした約20本、保管しています。

記者:「こちらは文化庁所管の国立映画アーカイブの保存庫になっています。すごく冷えてまして、私もコートを着ているんですけれども、国立映画アーカイブでは8万6千本を超える映画フィルムが収められていまして、こちら、関東大震災に関連する映画フィルムも保管されています」

フィルム映像からは煙の流れや、人々の動作、表情に至るまで鮮明に読み取ることができます。

国立映画アーカイブ とちぎ研究員:「一人一人の人間の姿が、映像の中でありありとすごくリアリティを持って伝わってくる。100年後に見る我々が現実感をもって、映画をみるだけですぐに把握できる、映像の力をすごく感じると思う」

100年前の震災を、私たちが映像を通してより身近に感じることで、改めて身の回りの防災を見直すきっかけになりそうです。またこの貴重なフィルム映像の一部は、一昨年からインターネット上にデジタルアーカイブ化されていて、誰でも無料で見られるようになっています。

とちぎ研究員:「ネットは場所を問わない。ネットを通じて関東大震災の映像をみることによって、時代の記憶をもう一回体験するというのは非常に大きなこと」

インターネットの活用で、若い世代にも震災の教訓が届くことに期待が寄せられています。

とちぎ研究員:「ユーザーに共通の知として共有して、それが、将来の防災などの教訓につながればいいという思いで…」

また当時の映像を使い、震災の風化を防ぐ取り組みは他にも。関東大震災を伝える現在、公開中のドキュメンタリー映画「キャメラを持った男たち」。新聞などの紙媒体が主流の時代に、震災を映像で撮影した3人のカメラマンにスポットを当てた作品です。

井上さん:「彼らが撮った映像を1つの物語として覚えていただくことが、忘却に抗うといいますか、忘れないための一つの表現になるのかなと思う」

大震災などの犠牲者を悼む墨田区の慰霊堂で行われた特別上映会には、約150人が訪れました。

30代女性:「情報に左右される時代になってしまったので、正しい情報を発信する人は必要なのだと思ったので、とても貴重な映像だなと思った」

70代女性:「私たちも(関東大震災を)経験していませんけれども、若い人たちとか子どもたちにもこういう悲惨なことがあった、記録して残すということは大事なことだと思った」

受け継がれた100年前の映像。そこから今の私たちが学べることが数多くあります。

とちぎ研究員:「気象変動が激しく大きな災害が日常的に起こっている中で、どうやって自分たち生き延びていけばいいんだろうかと。関東大震災というのは大きな歴史的な教訓を得るための事件なのかもしれない」

映画「キャメラを持った男たち」は、東京や横浜の映画館で公開中で、都内では中野区のポレポレ東中野で9月15日まで上映されます。

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