クルマ好きゴルファーの隠れた最適解といえる BMW「アルピナ D4S グランクーペ」

BMW「アルピナD4Sグランクーペ」は、クーペライクな4ドアボディの「4シリーズ グランクーペ」をベースとし、アルピナが仕立てたディーゼルエンジンを積んだ快速ツアラーだ。

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ディーゼルといってもBMWらしい直列6気筒エンジンで、3.0リッターのビターボ(ツインターボ)ユニットが発生させる最高出力は355psをマークする。また、アルピナのスペックを語る上で重要な最高巡航速度は270km/hと公表されている。

オーナーが実際にこの速度を体験するかどうかは別として「ずっとその速度で走れる」という性能表示は、アルピナによるチューニングが、エンジンのパワーアップ以外にも及んでいることを証明するものだ。

乱暴な言い方をすれば、D4Sの中身はアルピナがリリースしている「D3S」の4ドアリムジン(アルピナはセダンのことをリムジンと呼ぶ)、またはツーリング(ステーションワゴン)とほぼ同じである。つまり、カチッとしたリムジンスタイルが好みならD3Sを、ステーションワゴンが好みなら「D3Sツーリング」を選べばいい。「ほぼ同じ」と記したのは、標準のタイヤ径がD3Sは19インチ、D4Sは20インチになるからだ。

では、あえてD4Sを選ぶメリットはどこにあるのか? それはテールエンドに向かってなだらかに下っていくクーペライクなシルエットと、BMW「M4」に代表される縦長のキドニーグリルを据えたフロントマスクが醸し出す雰囲気ということになるだろう。フロントマスクの最下段には「ALPINA」の文字が入ったチンスポイラーが追加され、厚みを増した表情はなかなか凄みがある。

一方アルピナのラインアップには、同じ「4シリーズ グランクーペ」のボディに、直6ガソリンエンジンを搭載した「B4」というモデルも存在している。このB4に対しあえてディーゼルエンジンのD4Sを選ぶメリットとは何か?アルピナB4が搭載するガソリン直6ユニットはまさに回転フィールと音を楽しむもの。一方ディーゼルは、意外に思われるかもしれないが静粛性を味わうものとしてある。

D4SのディーゼルとB4のガソリンエンジンは、最大発生トルクが730Nmとまったく同じだが、発生回転数はディーゼルの方が低いため、高速道路走行ではD4Sの方が早めに高いギアへと移行する。その結果、静粛性の高いドライブが楽しめるのだ。ディーゼルの方が燃費も有利なので、ハイパフォーマンス車でありながらランニングコストが抑えられるという点もメリットだろう。

初めてアルピナをドライブした時の感動するポイントは人それぞれだが、アルピナに心酔した熱狂的なファンが必ず口にするのは、タイヤからの微振動がなく、ピタッと直進する点である。低速から超高速までケタ違いにピントが定まっていることが分かるのだ。

通常は2、3社から供給される専用開発タイヤがアルピナの場合ひとつしかなく、その1銘柄のタイヤにサスペンションやボディ剛性を完全に合わせているため、というのが動的質感の高さに対する説明である。性能面におけるチューニング、バランス取りは、他の量産車とは一線を画すレベルにある。一方で、内外装の仕様をオーナーの好みに合わせて細かく選べる点はアルピナが培ってきた特徴といえる。一台ずつが究極のオートクチュールなのである。

D4Sを指名するゴルファーは、おそらく300kmを超える日帰り移動をこなす人だろう。長距離になると、BEVでは途中で充電する必要が出てくるし、ガソリン車に対する快適性のアドバンテージを感じやすくなるからだ。スタイリングの色気とディーゼルの省燃費性能、そして静かに主張する個性。D4Sはクルマ好きゴルファーの「隠れた最適解」といえるポテンシャルの持ち主である。

BMW アルピナ D4S グランクーペ 車両本体価格: 1280万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4790 X 全幅 1850 X 全高 1440 mm
  • ホイールベース | 2855 mm
  • 車両重量 | 1970 kg
  • エンジン | 直列6気筒ビターボ ディーゼル+MHEV
  • 排気量 | 2992 cc
  • 変速機 | アルピナ スウィッチ トロニック 8速 AT
  • 最高出力 | 355 ps(261 kW) / 4000 - 4200 rpm
  • 最大トルク | 730 N・m / 1750 - 2750 rpm

Text : Takuo Yoshida

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