【連載コラム】第27回:白熱するナ・リーグのMVP争い アクーニャJr.か、ベッツか、それともフリーマンか

写真:MVPレースの先頭を走っていたアクーニャJr.は逃げ切れるか

MLBの2023年レギュラーシーズンはまもなく8月の戦いを終え、最後の1カ月に突入します。終盤戦でタイトル争いとともに注目されるのがアウォード争いです。

アメリカン・リーグは大谷翔平(エンゼルス)の2年ぶり2度目のMVP受賞が確実で、おそらく今後1試合も出場しなくても大谷がMVPに選ばれるでしょう。一方、ナショナル・リーグのMVP争いはロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)が先頭を走ってきましたが、8月に入ってムーキー・ベッツ(ドジャース)が猛烈な追い上げを見せ、さらにフレディ・フリーマン(ドジャース)もハイレベルな成績を残しており、大混戦の様相を呈し始めています。今回はナ・リーグのMVP争いについて詳しく見ていきたいと思います。

アクーニャJr.はMLB公式サイトが今季ここまで4度実施しているMVP模擬投票でいずれもリーグトップとなり、MVPレースの先頭を走っています。チームの全131試合に「1番・右翼」でスタメン出場し、打率.335、29本塁打、79打点、61盗塁、出塁率.417、OPS.987という好成績をマーク。史上初の「30本塁打&60盗塁」の達成が目前に迫っており、ラストスパート次第では「40本塁打&80盗塁」という超人的なマイルストーンに到達する可能性もあります。

2019年に41本塁打&37盗塁を記録してMVP投票で5位にランクインしていますが、今回のMVP投票でそれを上回るのは間違いないでしょう。盗塁の量産については今季から導入された新ルールの恩恵を指摘する声もありますが、「史上初」のインパクトはMVP投票において追い風となるかもしれません。

そのアクーニャJr.を猛烈な勢いで追っているのがドジャースのリードオフマンを務めるベッツです。今季はここまで125試合に出場して打率.314、36本塁打、94打点、10盗塁、出塁率.408、OPS1.020をマーク。本塁打数はすでにキャリアハイを更新しています。7月終了時点では打率.277、OPS.942と優秀ではあるものの、MVP争いに加わるほどのインパクトはなかったベッツですが、8月に入って打率.452、9本塁打、OPS1.317と大爆発。打撃成績を大きく上昇させ、一気にMVP争いに加わってきました。

今季のベッツはゴールドグラブ賞を6度受賞した右翼だけでなく、チーム状況に合わせて二塁や遊撃の守備もこなしながらハイレベルな打撃成績を残しています。走攻守トータルの総合的な貢献度を数値化したWARではアクーニャJr.を上回る数値をたたき出しており、MVP争いでアクーニャJr.の強力なライバルとなることは間違いないでしょう。もしベッツが受賞すれば、フランク・ロビンソンに続いて史上2人目の「両リーグMVP」の快挙を達成します。

ドジャースからもう1人、MVP候補に挙げられているのが新型コロナウイルスによる短縮シーズンとなった2020年にナ・リーグMVPを受賞したフリーマンです。当時はブレーブスの主砲でしたが、現在はドジャースでベッツと「球界最強の1・2番コンビ」を形成しており、今季はここまで全131試合に出場して打率.337、24本塁打、87打点、17盗塁、出塁率.412、OPS.991をマーク。すでに50本の二塁打を放っており、MLBでは80年以上達成されていないシーズン60二塁打の大台も視界にとらえています。後半戦は打率.373と打ちまくっており、2度目のMVPも夢ではありません。

MVPレースの先頭を走ってきたアクーニャJr.がこのまま逃げ切るのか、WARで勝るベッツがより多くの支持を集めるのか、フリーマンが両者の争いに割って入るのか。ほぼ無風状態のア・リーグとは対照的に、ナ・リーグのMVP争いは最後の最後まで野球ファンを楽しませてくれそうです。

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