通園バス置き去り死事件からまもなく1年…「園に対する怒りは当初よりも強くなっている」女児の父親が心境を語る(静岡県)

2022年9月、静岡県牧之原市の認定こども園で通園バスに3歳の女の子が置き去りにされ、重度の熱中症で亡くなりました。事件からまもなく1年、取材に応じた父親は園に対する怒りが「さらに強くなっている」と話しました。

( 河本千奈ちゃんの父親)

「『園を廃園にする』また『主要な管理職の方々が辞職をする』と私たちの前で約束したのに反故にされた」「面談を続ける中で、私たちに対して、あぐらをかきながら誠意ある対応をしなかったり、妻に対して、にらみつけて声を荒げて受け応えをしたりとか、自分たち遺族に直接、『いま気晴らしに友人と出かけている』など言ったり、信じられない対応をしているので、“怒り”は当初よりもさらに強くなっている」

ゆっくりとした口調でこども園に対する“怒り”を口するのは、わずか3歳で亡くなった河本千奈ちゃんの父親です。

(河本千奈ちゃん 当時3歳)

「赤ちゃんが動いている。動いてる 」

産まれて間もない妹にミルクをあげる千奈ちゃん。

2022年9月、牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で、通園バスに約5時間にわたり取り残され、重度の熱中症で亡くなりました。

事件当日、休みだったバスの運転手に代わり、急きょハンドルを握ったのは増田立義元園長。

事件後に開かれた会見は、耳を疑うものでした。

( 川崎幼稚園 増田立義 元園長)

「僕がいなくなったら(園が)さらによくなるように」

(弁護士)

「園を続けるかは決まっていない」

( 川崎幼稚園 増田立義 元園長)

「そうか(笑)廃園になるかもしれないよね」

細心の注意を払うべきはずの元園長は、バスから園児を降ろす際に確認を怠ったほか、当時の担任も千奈ちゃんが園にいないことを把握していながら、保護者への連絡をしませんでした。

この事件をめぐっては、増田立義元園長と元保育士ら計4人が、業務上過失致死の疑いで書類送検されています。

事件からまもなく1年。

千奈ちゃんの父親は「これまでの人生の中で一番長かった」と話しました。

( 河本千奈ちゃんの父親)

「朝起きるときも妻の泣いている声で起きたり、妻と一緒に気持ちを吐き出して、共感しあったり、そういった中で育児もやっていかないといけないし、生活もしていかないといけない。つらい時間は長く感じる」「日々次はどういうことをしていけばいいのか、どういうことができるかと考えたり、手探りの中で自分たちの精神的な部分も含めて進んできたので、分からないことだらけの中で生活してきたのがすごく不安で」「ものすごく長く感じた、いままでの人生の中で一番長かった」

事件直後には園を運営する「榛原学園」は、「川崎幼稚園」や牧之原市から指定管理を受けている3つの保育施設の運営を辞退することを申し出ていましたが、現在は一転、「継続」を主張しています。

川崎幼稚園は事件から1か月後に再開し、日常を取り戻しています。

父親は、園の対応は「不誠実」だとして「一刻も早くケジメをつけてほしい」と話します。

( 河本千奈ちゃんの父親)

「厚生労働省からの通知の内容を、再園後も全く知らなかった」「ダブルチェック、トリプルチェックをやるという話もあったが、その方法はいま少し変わっているようだが、具体的には話してくれなかった」「本当に再園していいのかなと」「自分たちが求めているのは約束した通り、園の廃園、または榛原学園が違う法人になることを望んでいる」

父親は毎週、事件現場を訪れ、千奈ちゃんがなぜ命を落とさなければならなかったのか考え続けているといいます。そして今も「娘を助けられなかった無念の思い」を抱え続けています。

( 河本千奈ちゃんの父親)

「助けてあげられなくてごめんなさい。事件当日も気づいてあげられなくてごめんなさい。親としていまも自分の行動が正しいの分からないが、無念を晴らせたら、晴らして千奈に報告できれば」

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