「娘のいる世界に…踏みとどまって何とか生活している」父親の変わらぬ“愛”と増す“怒り” 通園バス園児置き去り死事件 9月5日で1年

2022年9月、静岡県牧之原市の「川崎幼稚園」で3歳の女の子が通園バスの中に置き去りにされ、熱中症で死亡した事件から9月5日で、1年が経ちます。亡くなった女の子の父親は8月30日、報道陣の取材に応じ、変わらぬ娘への“愛情”と、日ごとに増していく園への“怒り”を語りました。

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<河本千奈ちゃんの父親>
Qこの1年間は?
「すごく長く感じた。いままでの人生の中で一番長かった。何をするにも幸せとか、楽しいことがいままでは当たり前すぎて、実感できないことがあったが、それを事件後、千奈がなくなってからあらためて実感する毎日」

2022年9月、牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で起きたバス置き去り事件。河本千奈ちゃん(当時3)が送迎バスの中に約5時間取り残され、重度の熱中症で死亡しました。

9月5日で事件から1年。千奈ちゃんの父親(39)は報道陣の取材に応じ、時折、声を詰まらせながら、いまの心境を語りました。

<河本千奈ちゃんの父親(39)>
「事件当日も気づいてあげられなくてごめんなさいと、親として、いまも自分の行動が正しいかどうかわからないが、無念を晴らせたら、晴らして千奈に報告できればなという思いがある」

一方で、「千奈ちゃんのいる世界に行く」。夫婦でそう話すこともしばしばあるといいます。

<河本千奈ちゃんの父親>
「いま、親として何もできていないので、千奈に対して。なので、お世話をしてあげたい。次女の存在も大きいので、踏みとどまっている状態だが、毎日毎日、何とか生活をしているような状況」

いまも変わらない娘を大切に思う気持ち。一方で、その命を奪った園への怒りは、日ごとに増していると語りました。

川崎幼稚園は、事件後の会見で、子どもたちの降車を確認していなかったことやクラス担任が千奈ちゃんの姿が見えないことについて、職員室や保護者に確認しなかったことなどを釈明。

<榛原学園 増田立義元理事長>
「(遺族から)廃園をしないのか?といわれていた。廃園という言葉を書くようにした」

事件当初、当時の理事長は川崎幼稚園について、遺族の意向を踏まえて「廃園に致します」と念書を交わしていました。しかし、川崎幼稚園は事件の1か月後には再開し、今年度も新たな園児を受け入れています。

千奈ちゃんの父親は、SNSを通じて園への疑問を発信しています。

<河本千奈ちゃんの父親>
「はじめの方は『在園児がいなくなるまでは続けさせてください』とか『後任者ができたらやめる』とか話していた。2023年の6月くらいから、もうそういったことには一切答えずに『弁護士に聞いてください』と放り投げるような回答が多くなっている」

警察は2022年12月、バスを運転していた増田立義元理事長や元担任ら4人を業務上過失致死の疑いで書類送検。静岡地検はきょうに至るまでおよそ9か月間、捜査を続けています。

さらに、事件は国を動かしました。2023年4月から保育所や幼稚園などの送迎バスには、安全装置の設置が義務付けられました。しかし、国の調査によりますと、2023年6月上旬時点で設置が完了した保育施設は、全国で55.1%、静岡県内では62.8%にとどまっています。

<河本千奈ちゃんの父親>
「『自分たちは大丈夫』という他人事というのがどうしてもあると思う。命を預かる仕事をするならしっかりやってほしいと思う」

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