<金口木舌>人災をも心に

 天災とともに人災をも心にとどめたい。あす1日は防災の日。ちょうど100年前の1923年9月1日。関東大震災は正午前に発生した

▼マグニチュード7.9と推定される地震が首都圏を襲った。南関東から東海地域と広く被害が出て、死者は10万人を超えた。加えて発生したのが人災だった

▼「朝鮮人や共産主義者が井戸に毒を投げ入れた」。そんなデマが流れ、朝鮮人や一部の日本人を含め6千人超が虐殺された。東京にいた沖縄史研究者の比嘉春潮さんが当時の様子を書き残している

▼著書「沖縄の歳月」に自宅での自警団とのやり取りがある。「朝鮮人だろう」「ちがう」「ことばが少しちがうぞ」に始まり、押し問答の末、比嘉さんは交番に連れて行かれた。地方訛(なま)りなど言葉の違いも排除対象となり「普通の人」が凶行に及んだ。それだけにひとごとではない

▼集団の同調圧力は時に個人の良心を押しつぶす。その怖さは関東大震災に限らず場面を変えて今も起こりうる。史実を踏まえ、内心に向き合い続ける。あらためて誓う節目を迎える。

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