<社説>石垣オスプレイ飛来 住民負担増の訓練やめよ

 国民保護を名目としているが、民間空港使用の実績づくりではないか。住民負担がかさむことに変わりはない。 陸上自衛隊は10月14~31日、県内などで米海兵隊との合同の実動訓練「レゾリュート・ドラゴン23」を実施する。この訓練で陸自の輸送機V22オスプレイが石垣市の新石垣空港に飛来する。

 患者を空輸する訓練を予定している。陸自のオスプレイの県内初飛来である。

 米海兵隊のMV22オスプレイがオーストラリアで墜落したばかりである。海兵隊仕様のオスプレイはクラッチに不具合が発生する問題が判明している。エンジン停止時にローターが回転して軟着陸する「オートローテーション機能」の欠如という機体の問題も指摘されてきた。陸自の機体といえども市民に不安を与えることになろう。

 しかも民間空港を使用するのである。石垣市の人流・物流の拠点が訓練の舞台となることに市民は強い抵抗を覚えるはずだ。市民生活への負担となり、経済活動にも逆行するオスプレイ飛来と実動訓練の実施に反対する。

 昨年12月に閣議決定した安全保障3文書は、平素の訓練を含め民間空港・港湾を自衛隊が柔軟に使用する方針を盛り込んでいる。

 米国は3文書を「重要な進化だ」と歓迎しており、今年1月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)はこの方針を日米双方にまで拡大することを確認している。今回の「レゾリュート・ドラゴン23」は、その延長上にあるのではないか。

 今回の訓練は、島しょに侵攻する敵に日米共同で対処することを想定している。鹿児島県の奄美大島や北海道でも展開する。全体で陸自から約2800人、米軍から約1400人が参加するという大規模な訓練である。

 沖縄では部隊指揮や情報共有、兵たん、衛生に関する連携強化を図る。県内各地で訓練が計画されている。離島などで分散して戦う海兵隊の戦略構想「遠征前方基地作戦(EABO)」の拠点に見立てているとみられる。

 このような日米実動訓練の大規模展開で中国など周辺国との間で緊張感を高めることにもなろう。米国の戦略によって住民生活に重大な影響を及ぼす軍事拠点化が強行されることがあってはならない。

 今回の訓練について防衛省は、海兵隊のMV22オスプレイが県外の訓練計画に組み込まれている点を踏まえて「沖縄の負担を軽減する」訓練移転だと説明している。しかし、このような説明はほとんど説得力を持ち得ない。これまでも日本本土への訓練移転以上に外来機飛来などで基地負担が増加していることは県民の目にも明らかだ。

 墜落が相次ぐオスプレイが新石垣空港を含む県内民間空港を使用することは許されない。訓練計画の変更を強く求めたい。

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