日本の世界遺産【4】原始的なブナ天然林が残り神々しい景色が見られる「白神山地」

青森県南西部から秋田県北西部にまたがる標高200~1,250mの山岳地帯「白神山地」。東アジア最大級の原生的なブナ林が分布し、多種多様な動植物が生息・自生していて貴重な生態系が保たれています。今回は、ブナ原生林やコバルトブルーの青池など美しい自然を堪能できる白神山地をクローズアップ。概要や見どころのほか、行き方、周辺の人気スポット・グルメもご紹介します。

東アジア最大級のブナ天然林が分布する「白神山地」

「白神山地」は、青森県と秋田県にまたがる約13万haにもおよぶ山岳地帯の総称です。そのうち、中心部の1万6,971haが、1993年12月に屋久島とともに世界自然遺産に登録されました。登録地域内の散策はハードであるものの、白神山地の神々しい大自然を満喫できるいくつもの散策ルートが整備されています。

白神山地は人の影響をほとんど受けていない原生的なブナ天然林が東アジア最大級の規模で分布しているのが特徴。約1万2,000〜8,000年前に北日本の丘陵や山地を覆っていた冷温帯ブナ林が残存しているのです。

このブナ天然林には、ブナーミズナラ群落、サワグルミ群落といった多彩な植物が生育しています。加えて、高緯度にもかかわらず、ツキノワグマ、ニホンザル、クマゲラ、イヌワシなど多くの動物が生息し、まるで白神山地全体が、広大な森林博物館のようです。

特に世界遺産登録地域は、地形が急峻なために森林の伐採がほとんど行われておらず、最も良い原生状態が保たれています。

さらに、深い谷が入り組んでいて、落差の大きな滝が多く、風光明媚なスポットが豊富です。

見どころは?

青池

白神山地の見どころは多数! ということで、おすすめの散策コースをご紹介します。

白神山地の麓、日本海側に位置する33の天然湖沼がブナ林の自然林に囲まれた十二湖地域は、優れた自然景観が魅力です。「十二湖散策コース」は、「森の物産館 キョロロ」を拠点に、コバルトブルーの「青池」をはじめ、鶏の頭のような形をした「鶏頭場の池」、約500m続く「ブナ自然林」、青池に匹敵する透明度の「沸壺の池」などを約1時間30分(休憩時間10分含む)かけて巡ることができます。

白神山地の歩道

アップダウンが少なく、歩道が整備されていて歩きやすいため人気のコースです。季節によって景観が変わり、太陽の日照角度が高い4~8月が見頃といわれています。

マザーツリー

そのほか、樹齢400年の「マザーツリー」に出会える津軽峠から往復20分のコース、暗門の滝入口から整備された暗門川の渓畔をつたい、「第三の滝」から「第二の滝」、そして「第一の滝」へ向かう「暗門渓谷ルート」、世界自然遺産登録地域内に設置された遊歩道でブナ林を手軽に散策できる「世界遺産の径 ブナ林散策道」など、一度は歩いてみたいコースがいっぱいです。

鶏頭場の池

さらに、登山コースも充実。「十二湖コース」は、「鶏頭場の池」や「青池」を眺めながら登山口へ行き、ブナやカツラなどの自然林のほか、珍しい草木に出会えるコースです。山頂からは12個の湖を眺めることができます。

また、コテ山コースの途中から分岐する歴史と伝統がある登山道「二股コース」はハードな上級者向けのコースです。沢をまたいだり、ロープを握って登る急坂が長く続いたり、エキサイティングな登山を楽しめます。

しかし、白神山地には携帯の電波が届かない場所があり、山岳遭難の場合、救助に時間を要します。そのため、登山をする際は、自身の経験や体力に合った山を選び、必ず登山計画書を作成・提出して、安全な登山を心がけましょう。

主な散策・登山コースの詳細はこちらからご覧ください。

白神山地への行き方

トレッキングコースの散策情報などが知れる「白神山地ビジターセンター」へは、JR「弘前駅」からバスで約55分の「田代(西目屋村役場前)」で下車します。

白神山地(白神山地ビジターセンター)

住所:青森県中津軽郡西目屋村大字田代字神田61-1

電話:0172-85-2810

開館時間:8:30~17:00(4月1日~10月31日)、9:00~16:30(11月1日~3月31日)

休館日:4月~12月は第2月曜日(祝日の場合は翌日)※8月は第4月曜日

1月~3月は毎週月曜日と木曜日(祝日の場合は翌日)

12月29日~1月3日

駐車場台数:普通車60台、大型車5台(駐車料金は無料)

公式サイト:https://www.shirakami-visitor.jp/

四季折々の絶景を眺められる「弘前城」

白神山地とあわせて訪れたいのが、現存する日本最北端の天守「弘前城」です。白神山地の玄関口にあたる弘前市に位置します。弘前城公園内には門、橋、濠といった歴史的な情緒を感じる建造物があり、これだけ大規模な城郭が当時の姿を残しつつ公園として開放されているのです。

また、弘前公園には、約50種類、2,600本ほどの桜が植えられています。例年4月下旬~5月上旬には「弘前さくらまつり」を開催。国内外から多くの観光客が訪れます。桜が満開のピークを迎え散り始めると、外濠の水面を桜の花びらが埋め尽くす「花筏(はないかだ)」の絶景を拝むことができますよ。

春だけでなく、秋には「弘前城菊と紅葉まつり」、冬には「弘前城雪燈籠まつり」が開催され、季節ごとの美しさを満喫できます。

弘前で食べたいのは、イガゲソ(イカの足)を包丁でたたき、季節の野菜などと一緒に小麦粉を混ぜ、油で焼いたり、揚げたりする「弘前いがめんち」。「母の味」として受け継がれてきた郷土料理で、津軽内陸部では、貴重な海産物だったイカを無駄なく余すところなく使うという、先人の知恵と愛情が詰まった食文化でもあります。ご当地グルメとして提供する店舗も多いため、食べ歩くのも楽しそうですね。ごはんのおかずとしてはもちろん、お酒のおつまみとしても優秀ですよ。

弘前公園

住所:青森県弘前市下白銀町1

電話:0172-33-8739(弘前市役所 公園緑地課)

弘前城本丸・北の郭の開館時間:9:00~17:00(4月1日~11月23日)、7:00~21:00(さくらまつり期間)

弘前城の休館日:11月24日~3月31日

弘前城本丸・北の郭の入園料:大人320円、子ども100円(11月24日~3月31日の期間は入園無料)

交通アクセス:JR「弘前駅」から弘南バスで約15分「市役所前」下車、徒歩約4分

公式HP:https://www.hirosakipark.jp/

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