【バスケW杯】男子日本代表、最速なら8/31にパリオリンピック出場権獲得 - 17-32位決定戦展望

FIBAバスケットボールワールドカップ2023は8月30日にグループステージの1次ラウンド全日程を終えた。27日にフィンランドを倒した男子日本代表は1勝2敗得失点差-28の成績。17-32位決定戦に回ることとなったが、アジア勢6チームの中でもトップの成績だ。もし日本が31日にベネズエラに勝利し、他のアジア勢5チームがすべて敗れると、その時点で日本はパリオリンピック出場権を獲得することができる。

☆アジア勢6チームのオリンピック出場権争い(1次ラウンド終了時点)
※勝敗と得失点差を基準とした順位、チーム名、勝敗成績(得失点差)
1. 日本 1勝2敗(-28)
2. フィリピン 0勝3敗(-23)
3. イラン 0勝3敗(-63)
4. ヨルダン 0勝3敗(-77)
5. 中国 0勝3敗(-80)
6. レバノン 0勝3敗(-100)

1次ラウンドの各グループで3位、4位となった計16チームが4つのグループ(グループM、N、O、P)で総当たり戦を行う17-32位決定戦(1次ラウンドで対戦したチーム同士の対戦成績は持ち越しとなり、再戦は行われない)の順位決定方法は、上記の勝敗がそのまま反映されるわけではない。各グループ1位は17-20位に、2位のチームは21-24位、3位ならば25-28位、最下位なら29-32位に自動的に割り振られ、さらにグループ順位が同じチーム同士の順列は、FIBA公式ルールブックの規則に従って決められる。そのため多様なシナリオが想定できる状況だ。

連勝ならパリオリンピック出場とワールドカップ歴代最多の3勝目
日本が17-32位決定戦で所属するグループOは、カーボベルデ、ベネズエラ、フィンランドが同組。日本はこのうちベネズエラと31日に、カーボベルデと9月2日(土)に対戦する予定だ。まずは日本の可能性と戦況を、そしてさらに各チームの可能性を見ていこう。

8月29日のオーストラリア戦で気迫のこもった表情を見せる渡邊雄太。チーム全体に緊迫感や自信がみなぎる日本代表は、ここまでアジア勢1位の成績を残している(写真/©FIBAWC2023)

☆日本の戦況と今後の予定(8月30日時点)
※グループ順位は17-32位決定戦でのもの、チーム名右のカッコ内はFIBA世界ランキング(後述のアジア勢各チームについても同じ)
日本(36) 1勝1敗(グループO1位)
8/25 63-81ドイツ(11)
8/27 98-88フィンランド(24)
8/29 89-109オーストラリア(3)
8/31 vs.ベネズエラ(17)
9/02 vs.カーボベルデ(64)

アジア勢で唯一1勝を挙げている日本は、残る2試合に勝利できれば、文句なくアジア勢1位としてパリオリンピック出場決定。同時にそれは、史上初めて単一のワールドカップで3勝を挙げることを意味し、新たな歴史が刻まれる。仮に1勝1敗(通算成績2勝3敗)、あるいは2連敗(同1勝4敗)の場合は、他グループのアジア勢の勝敗によりタイブレーカーで上回る必要性が出てくる可能性が高い。31日の日程でほかのアジア勢5チームが全敗という他力本願がかなわない場合、どんな状況が想定できるだろうか。

☆日本の今大会におけるパリオリンピック出場決定の場合分け(8月30日までの日程消化時点)

1. ベネズエラ、カーボベルデに連勝した場合(日本の通算成績=3勝2敗)

グループO1位に加え、アジア勢を勝敗成績で上回るため、他チームの動向に寄らずパリ行き決定!

2. ベネズエラに勝ち、カーボベルデに敗北(日本の通算成績=2勝3敗)

この条件ではいくつものシナリオが想定できる。カーボベルデはフィンランドと日本に勝つと3勝2敗でグループO1位になる。仮にフィンランドに負けて日本と並ぶ2勝3敗となった場合にも、直接対決結果により日本は上回られる。

ただしこのケースでフィンランドがベネズエラにも勝つと、2勝3敗の三つ巴。この場合には3チーム間の得失点差も絡んでくるので、順位は最後まで決まらない(フィンランドがベネズエラに負けて1勝3敗となる場合、日本は上記のカーボベルデとのタイブレーカーにより2位となる)。

3. ベネズエラに敗れカーボベルデに勝利(日本の通算成績=2勝3敗)

この場合にも様々なケースが想定される。カーボベルデがフィンランドに勝つとすると、日本とカーボベルデは通算成績2勝3敗で並ぶが、日本がタイブレーカーで優位に立つ。ただし、ベネズエラが日本に続いてフィンランドに勝つとすると、日本とカーボベルデ、ベネズエラが2勝3敗で三つ巴となる。

カーボベルデがフィンランドにも敗れる想定だと、日本のタイブレーカーの相手はフィンランド、あるいはベネズエラになる。この場合、並んだ相手がフィンランドなら直接対決結果で日本が上位。ベネズエラになった場合は日本が下位となってしまう。

4. ベネズエラとカーボベルデに連敗(日本の通算成績=1勝4敗)

これが日本にとっての最悪の想定となるが、このケースでも、フィンランドが少なくともベネズエラに敗れることを条件に、日本はグループO3位の座を確保できる。この場合はフィンランドがカーボベルデに勝つとしても1勝4敗で日本と並ぶのが精いっぱい。日本はグループEでの対戦成績(98-88で日本が勝利)により、フィンランドを上回るのだ。

ただし、フィンランドがベネズエラに勝つと、日本、フィンランド、ベネズエラが1勝4敗で三つ巴となる。

フィンランドがカーボベルデとベネズエラに勝つと、フィンランドが2勝3敗でカーボベルデと並び、フィンランドが直接対決結果でグループO1位。日本はベネズエラと並ぶが、タイブレーカーで最下位となる。

ちなみに、この場合にも他グループの動向しだいで日本がパリ行きをつかむ可能性がないわけではない。しかし、日本としては、2連勝以外でパリ行きを期待する他力本願の流れは避けたいだろう。すべて圧倒的に弱いチームなわけではない他の5チームが、それぞれの所属グループで日本と同順位以下となり、タイブレーカーで日本を上回る可能性を感じたとたんに急激に勢いを強める可能性がある。隙を見せないためにも、日本はまず31日のベネズエラ戦は絶対に落とせない。

\--{堅実なディフェンスと爆発的なオフェンスで勝機を見出す日本}--

堅実なディフェンスと爆発的なオフェンスで勝機を見出す日本
日本がオリンピック自力出場をかなえられるとすれば、1976年のモントリオール大会以来48年ぶりの快挙。また、1979年に中国が国際オリンピック委員会に加盟して以降初めてであり、この意味でも新たな歴史を作ることになる。

日本はチームとしての平均得点83.3がアジア勢6チーム中1位。本来大きな武器となるべき3Pショットの成功率が28.1%で同最下位(大会全体で32チーム中30位)と振るわないが、逆に2P成功率61.5%がアジア勢トップで大会全体でも8位の高水準だ。平均ターンオーバー数13.7はアジア勢の中では2位タイ(少ない方からの順位)であり、強豪相手にロングレンジの不振に苦しみながらも、オフェンスでは一定以上の威力と堅実さを発揮できている。

日本の屋台骨となっているのは、現在フィールドゴール成功率70%で平均23.3得点、そして12.0リバウンド(いずれもチームトップ)を記録しているジョシュ・ホーキンソンの獅子奮迅の活躍だ。日本はリバウンドでも平均35.0本がアジア勢6チーム中3位。その健闘を支えているのはホーキンソンに他ならない。

期待通りの大活躍を見せるジョシュ・ホーキンソン。日本にとって非常に頼もしい存在だ(写真/©FIBAWC2023)

平均16.0得点の渡邊雄太が、数字では見えにくいディフェンス面でのハッスルや、失点後のクイックスタートなど目立たない部分でチームに勢いをもたらしているのも大きい。また、見逃せないのは富樫勇樹(平均17.5分の出場で4.7得点、4.7アシスト、1.7ターンオーバー)と河村勇輝(平均20.5分の出場で11.7得点、6.3アシスト、2.3ターンオーバー)というコートに立つ時間が長いポイントガードの二人。世界的にも強豪とされるドイツ、フィンランド、オーストラリアを相手に二人合わせて15得点越え、アシスト・ターンオーバー比率で2.75と好数字を残したことは高く評価されるべきだろう。

172cmと小柄な河村勇輝だが、今や世界の注目を集める存在だ(写真/©FIBAWC2023)

3試合目のオーストラリア戦で今大会初得点を記録した富樫勇樹。調子を上げて臨む17-32位決定戦でのさらなる活躍に期待がかかる(写真/©FIBAWC2023)

対戦相手のベネズエラとカーボベルデはそれぞれ特徴があるチーム。初戦で当たるベネズエラはランキングでは格上で、1次ラウンドのグループFでは4チーム中地区予選段階の平均失点(67.2)が最少、スティール数10.7とブロック数(3.6)が最多というディフェンシブなチームだ。しかし、今大会ではまだ勝ち星がない。

ベネズエラは、フェルナンド・ドゥロHCが30日のジョージア戦後に明かしたところでは、196cmのパワーフォワードで得点源の一人として期待されたマイケル・カレラが、故障のためスペインの所属チームに戻ってリハビリを開始するため、日本戦を欠場する。カレラはスロベニアとの初戦で10得点、4リバウンド、2アシスト、1スティールの活躍を見せていた。ベテランの離脱は少なからずベネズエラのチーム状況に影響を及ぼしそうだ。また、ベネズエラではポイントガードのグレゴリー・ヴァルガスも、同じく故障で日本戦欠場の見込みとのことだ。

日本にとって今大会の締めくくりとなる対戦相手のカーボベルデは、221cmのビッグマン、ウォルター・タバレス(公式サイト等ではEdy Tavaresと表記されている)がリバウンダーとして存在感を発揮し、得点源としては運動能力の高いイバン・アルメイダ(197cm、フォワード)、ベティーニョ・ゴメス(203cm、スモールフォワード)、ウィリアムズ・タバレス(195cm、フォワード)らが活躍している。ワールドカップ初出場のチームだが、ベネズエラから歴史に残る勝利を挙げ、士気も高い。確立されたビッグマンがいてチーム全体のフィジカリティーが高い相手であり、ランキングでは格下であっても、日本にとっては大きなチャレンジだ。

8月28日のベネズエラ戦でワールドカップ初勝利を挙げたカーボベルデ。ランキング上は日本より下位とはいえ、勢いの面でも決して軽視できない強敵だ(写真/©FIBAWC2023)

ただし、上記の核となる戦力を持つ一方で、今大会での平均得点は72.7得点(32チーム中28位)と相対的に低く、データ上では爆発力の点で日本に分があるようにも思える。

実はベネズエラも平均73.0得点で27位と同様の傾向。17-32位決定戦での日本は、これまで以上にハイレベルなディフェンスを40分間徹底して高得点を阻止することが、勝利をつかむカギとなりそうだ。その上で、高水準を維持している2Pショットでの得点力を維持しながら3P成功率を高められれば、2連勝が見えてくる。

\--{下位のアジア勢にも、現時点では全チームにチャンスあり}--

下位のアジア勢にも、現時点では全チームにチャンスあり
日本以外の5チームは勝ち星が一つもなく、いずれも所属グループで3位以下に位置している。しかし上位もすべて2敗以上しているチームばかりであり、逆転でグループ1位の座をつかむことは可能だ。現時点での得失点差における上位から順を追って、簡単にまとめる。

大ベテランのビッグマン、ハメッド・八ダディーを擁するイランもまだまだ諦めていないはず各グループの動向は要注意だ(写真/©FIBAWC2023)

フィリピン(40) 0勝3敗/得失点差-23(グループM3位)
8/25 81-87ドミニカ共和国(23)
8/27 70-80アンゴラ(41)
8/29 83-90イタリア(10)
8/31 vs.南スーダン(62)
9/02 vs.中国(27)

1次ラウンドで3連敗(得失点差-23)のフィリピンだが、3試合はいずれも競った内容であり、17-32位決定戦でも怖い存在であることに変わりはない。先行する日本に追いつき、追い越すには南スーダンと中国に対する連勝が必須。特にアジア勢同士の激突となる最後の中国戦は、両チームとも1勝を手にして迎える場合に、どちらも負けられないビッグゲームとなる。そんな戦況で、ホームの大観衆に背中を押されたフィリピン代表が、奇跡を起こさないとは誰にも言えない。そのためにも初戦の南スーダン戦は必勝を期して臨まなければならない。

イラン(22) 0勝3敗/得失点差-63(グループP3位)
8/26 59-100ブラジル(13)
8/28 69-71コートジボワール(42)
8/30 65-85スペイン(1)
8/31 vs.フランス(5)
9/02 vs.レバノン(43)

イランは17-32位決定戦で2連勝できる可能性がかなり高いと言えるかもしれない。31日は、よもやの1次ラウンド敗退となった東京2020オリンピック銀メダリストのフランスが相手だが、フランスは主力が離脱した状態で戦った1次ラウンド最終戦のレバノン戦で85-79と大苦戦。緊迫感が切れてしまったかのような相手に対し、イランが隙を突いて金星を挙げることも十分考えうる。また、最終戦ではそのフランスを苦しめたレバノンと対戦するが、順当にいけば勝つべき試合だ。ただ、逆転でグループ1位となって日本を脅かすためには、大量得点もほしいところ。どんな戦いぶりを見せるか注目だ。

ヨルダン(33) 0勝3敗/得失点差-77(グループN3位)
8/26 71-92ギリシャ(9)
8/28 87-95ニュージーランド(26)
8/30 62-110アメリカ(2)
8/31 vs.エジプト(55)
9/02 vs.メキシコ(31)

強豪に翻弄された1次リーグを終えたヨルダンが、17-32位決定戦で対戦する相手の力量は明らかにそのレベルからは一段下がり、比較的伍しやすい相手だと言える。しかし、オリンピック行きの切符を手にするには間違いなく連勝が必要であり、かつ相当な点差をつけて圧倒的勝利を収めなければ、-77の得失点差からの逆転は難しいだろう。

中国(27) 0勝3敗/得失点差-80(グループM4位)
8/26 63-105セルビア(6)
8/28 69-89南スーダン(62)
8/30 89-107プエルトリコ(20)
8/31 vs.アンゴラ(41)
9/02 vs.フィリピン(40)

中国の残る2試合はランキング下位の相手となった。ここまでの3試合で元気なく3連敗しただけでなく、心が折れそうな得失点差のマイナスを抱えてしまっただけに、まずは1勝をつかんで弾みをつけたいところだろう。逆にこのまま31日のアンゴラ戦を落とすようだと戦況が非常に厳しくなる。できれば点差も離して勝利をつかみ、アジア勢のライバルであるフィリピンとの決戦に臨みたいところだがどうなるか。

レバノン(43) 0勝3敗/得失点差-100(グループP4位)
8/25 70-109ラトビア(29)
8/27 73-128カナダ(15)
8/29 79-85フランス(5)
8/31 vs.コートジボワール(42)
9/02 vs.イラン(22)

1次ラウンドの最終戦で、フランスに対して大健闘を見せたレバノンは、世界3位のオーストラリアに対して後半互角の勝負を展開した日本とともに、現在アジア勢の中でも士気を高めているチームかもしれない。ただ、得失点差-100を日本やフィリピンのレベルまで改善するのは並大抵のことではない上に、最終戦では世界ランキングでアジア最上位のイランとの対戦が待っている。逆転でのオリンピック出場権獲得は相当難しいと思われる。

© 日本文化出版株式会社