社説:有機フッ素 影響見極め早い対応を

 フライパンなどの日用品から半導体の製造まで、幅広く利用されているのが有機フッ素化合物(PFAS)である。

 水や油をはじき、熱や化学物質にも強く重宝されているが、一方で自然界では分解されにくく、環境中や生物の体内に蓄積するという特徴を持つ。

 近年は発がん性を指摘する声もあり、人体への影響が懸念されるようになった。

 このため環境省は、有害性の調査研究を本格的に始める方針を固めた。来年度予算の概算要求に、関連経費を盛り込む。

 どのように有害なのか、しっかりと見極めることが大切だ。

 そのうえで、適切な規制を導入するなどして、国民が安心できるようにしてもらいたい。

 PFASは1万種類以上もあるとされる化学物質群で、未解明な部分も少なくない。

 代表的なものはPFOA、PFOSと呼ばれる。欧州食品安全機関は、この二つの体内濃度とコレステロール値の上昇に関連があると報告した。

 米国の専門家チームの調査によると、精巣がんや腎がんのリスクを増大させる可能性もあるとされている。

 国際がん研究機関は、PFOAを「発がん性が疑われる物質」に分類する。

 こうしたことから厚生労働省と環境省は2020年、海外の対応を参考に、飲み水と環境中の水の暫定目標値を、PFOAとPFOSの合計で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)と定めた。

 問題は、国内の各地で目標値を超過する事例が、相次いでいることである。

 沖縄県では15年以降、米軍嘉手納基地や普天間飛行場の周辺などで目標値を上回った。米軍施設との関連を訴える向きがある。

 沖縄県以外でも、21年度の調査で、13都府県の河川など81地点で超過があった。

 このまま現状を放置するわけには、いかないだろう。

 環境省は、神経と生殖、免疫への毒性や発がん性などに着目し、摂取した場合の影響を研究する。環境中の分布状況も調べ、水質管理の暫定目標値を見直すかどうか、検討するという。

 米国は、さらに厳しい基準を飲み水に導入するようだ。国によっては、血中濃度の目安を設けたところもある。

 環境省などには、調査研究を進めながら、より迅速に対応していくことが求められよう。

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