社説:性加害の認定 重いジャニーズの責任

 「芸能界の闇」という次元にとどまらない。夢を追う少年を食い物にした空前の性被害である。

 芸能大手ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川前社長(2019年死去)による性加害問題で、外部専門家の「再発防止特別チーム」は、喜多川氏がおよそ50年にわたって「数百人」ともいわれる少年に対し、性加害を繰り返してきた事実を認定した。

 喜多川氏のめいである藤島ジュリー景子社長の辞任も求めた。

 取締役時代から性加害疑惑を認識していたと断じられた社長が辞めるのは当然としても、記者会見で自ら経緯を説明し、被害者への謝罪など誠意ある対応を尽くさねばならない。

 多くの人気アイドルを抱える同事務所は、再発防止の徹底はもとより、今も身心の苦痛や告発への中傷に苦しむ被害者を救済する責務を果たすべきだ。

 特別チームが関係者聴取などでまとめた調査報告書によると、喜多川氏は1950年代に性加害を行って以降、同事務所では70年代前半から2010年代半ばまで、ジャニーズJr.と呼ばれる所属タレントの思春期少年にキスや口腔(こうくう)性交、肛門性交などを強要したとしている。「強制わいせつ罪等に該当し得る犯罪行為」と明記した。

 背景には喜多川氏の性嗜好(しこう)異常に加え、事務所の最高権力者だった姉のメリー喜多川元会長(21年死去)が弟による性加害を知りながら、放置・隠蔽(いんぺい)を続けた同族経営の弊害があったとする。組織ぐるみと言わざるを得まい。

 未成年を支配する関係を作り、つけこんだ悪質さも際立つ。喜多川氏はタレントの採用からデビューまで「生殺与奪」の権力を一手に握っていたため、被害少年らは冷遇への恐怖から従ったという。

 政府は来月にも男性・男児の被害に特化した相談窓口を開く予定だ。今回の問題を受けた緊急対策だが、十分ではない。関連法の整備も含め、社会全体で性被害防止対策を強める契機にしたい。

 報告書は、過去に週刊誌報道などがあったのに、多くのメディアが正面から問題を取り上げなかった点も批判している。本紙も含め真摯(しんし)に受け止めねばならない。

 特に今も多くの所属タレントを番組に起用する放送局には、影響力を行使して「人権侵害をやめさせるべきだった」と指弾する。

 タレントの争奪や視聴率優先で喜多川氏を持ち上げ、深刻な被害に目をつむった面はないか。各放送局の説明責任が問われよう。

© 株式会社京都新聞社