「離れて暮らす高齢親が心配…」60歳で故郷にUターンしても大丈夫?

高齢者のひとり暮らしの割合は年々増えています。離れて暮らす高齢親が心配、なんらかの形でサポートをしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。


離れて暮らす高齢親に「自治体のサービス」をチェック!

意外と知られていないようですが、多くの自治体ではひとり暮らしなど高齢者への支援サービスを提供しています。代表的なものが「見守り・安否確認」です。サービスの名称は自治体によって「緊急通報システム」「高齢者見守り支援事業」など異なります。

ちなみに筆者の母と義母もこれらのサービスを利用しています。どちらも民間の警備会社が提供する見守りサービスで、自治体を通して申し込みをします。基本的なサービス内容は、警備会社が貸し出した機器やセンサーを親の自宅に設置、急な体調不良などの時に機器やセンサーを通して警備会社に通報がおこなわれるしくみです。興味深いのは、同じ警備会社でも自治体によって利用料金やサービスの内容が異なる点です。例えば、利用料金について、住民税非課税世帯は無料、あるいは月額1,000円など、自治体により料金設定に違いがあります。サービス内容についても、センサー設置場所をトイレや冷蔵庫の扉と選択できたり、できなかったり、自治体と警備会社の契約に基づいたサービスが提供されるようです。

離れて暮らす高齢親になんらかのサポートが必要と思われているのであれば、まずは親が暮らす自治体のホームページをチェックするのがオススメです。高齢者は、ほかの世代と比べて家庭内での事故が多い傾向がありますから、自治体の見守りサービスは積極的に活用したいところです。申し込みから利用開始まで1ヶ月ほどかかるため早めに検討することをオススメします。

60歳でリタイア、実家のある地方で暮らしていける?

自治体のサポートを利用しながら自立して暮らしていても、親の高齢化が進むにつれて心配なことは増えてきます。最近、ライフプラン相談にこられたAさんのケースをご紹介します。1年後に60歳で定年を迎えることになったAさんですが、都内勤務の会社員で独身です。継続雇用で65歳になるまで今の勤務先で働くこともできるものの、田舎でひとり暮らしをしている父親(85歳)のことが気がかりです。Aさんの希望は、働いているうちに実家をリフォームして60歳で退職して田舎に戻りたいけれど、はたして経済的に可能なのか?オンライン面談に申し込まれてきたわけです。

そこで、まずは、60歳で退職して経済的に暮らしていけるのかを一緒に考えていきました。具体的なところでは、Aさんが公的年金を受け取るまでの生活費と年金生活で不足するお金を算出し、退職金や準備してきた貯蓄でまかなうことができれば目処はたちます。勤務先の総務部に問い合わせて退職金の見込額を確認したところ、思ったよりも少なく、一時金で400万円ほど。準備してきた老後資金と合わせても60歳で完全リタイアが厳しいことがわかりました。つまり、実家に戻ることは可能なものの年金生活が始まるまで働いて収入を得る必要があります。事務職としてお仕事をされていたAさんですが、田舎で仕事を得ることができるのかが最大のポイントになります。

実家のリフォームは可能?あるいは他にベターな選択肢はある?

次に、実家である築50年以上の戸建ての一部をリフォームしたい希望についてお話ししました。詳しくお聞きしたところ、数年前の豪雨被害で浸水したこと、独りで暮らしている父親には広すぎること、今でも通院するために父親が車を運転していることが分かりました。たしかに築50年の戸建てであれば冬の寒さは厳しいものです。筆者も木造戸建て暮らしですから、健康のために一定の断熱性のある住居は必須であると共感するところではあります。

ただし、リフォーム費がかかるとなれば、ある程度のまとまった資金が必要になります。Aさんの父親は年金暮らしで、数年前の豪雨による家の修理で貯蓄をほぼ使い果たしてしまったとのこと。Aさんが全額負担することになりますから、リフォームは資金的に厳しい状況です。そこで、敢えてお伝えしたことがあります。ご実家はAさんご家族の思い出がつまった大切な家ですが、果たして多額のリフォーム代を費やす価値があるのか?今後、親子二人で暮らすにはどのような住まいが理想か、この機会に考えてみましょう。と提案しました。つまり、実家に住まなければいけない、という考えをいったん頭から取り除いていただくことにしたのです。Aさんの口から出てきたのは、二人で暮らせるコンパクトな広さ、かつ、病院の近くであれば十分、でした。Aさんだけの考えではありますが、実家を売却した資金で住み替えができればそれもベター、という選択肢が出てきたのです。

ここまでで、Aさんの悩みの全てが解消されたわけではありませんが、複雑に絡みあっていた問題を一つずつ分けて考えられて気持ちがだいぶ楽になったとおっしゃっていました。「秋になったら有休を取って実家に帰って父とこれからのことを話してみます、そして、60歳以降の求職について地元にいる同級生に会って相談してみる」とのことでした。

今回のAさんのように、定年前後の世代は親の介護や自分自身のセカンドライフなど複数のテーマが重なり頭を悩ますことも多いものです。ぜひ、その時は他人の意見も聞いてみると新たな視点が生まれ、前に進めるのではないでしょうか。

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