「リジェネラティブ」とは何か?「サステナブル」との違いは?――単なる流行語で終わらせないために必要なこと

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「リジェネラティブ(regenerative)」という言葉がトレンドになっている。「再生型」を意味する言葉で、ポジティブな印象と安心感を与えるためにさまざまな分野で使われる。だが、この言葉には必ずしも明確な原則や統一的な定量化の指標がないため、使用するには具体的な事柄と合わせて使うなど、注意が必要だ。(翻訳・編集=茂木澄花)

最近「リジェネラティブ」が「サステナブル」の代わりに使われている。

「リジェネラティブ」という言葉の使用は昨年、全世界のネット上のニュース記事では43%、SNSでは282%増加した。企業が環境問題に対してポジティブな取り組みを伝える言葉として選ばれることが増えており、建築、ファッション、お茶、旅行、スキンケア、皮革に至るまで何にでも使われている。

だが、本来はどういう意味なのだろうか。もとは主に農業の取り組みを説明する言葉だった。「リジェネラティブ農業(環境再生型農業)」とは、劣化した土壌を再生し、減少した野生生物や植物種の数を回復させながら食物を生産することを指す。この文脈で「リジェネラティブ」という言葉を使うことは筋が通っている。自然の生態系を回復・再生し、バランスを保つことを指しているからだ。具体的な結果を測定する指標もある。土壌中の有機物比率の改善、昆虫の数の増加などの指標によって、変化を記録することが可能だ。

「リジェネラティブ」という言葉を人間の経済社会システムに当てはめると、話は途端に分かりにくくなる。「リジェネラティブ・エコノミー」とはどのようなもので、成果をどのように評価するのか。現状、この言葉は大雑把に使われすぎているため、こうした問いに対して筋の通った意味のある答えを出すことができない。

「リジェネラティブ」の考え方を経済に当てはめた「リジェネラティブ・エコノミー」は、「ウェルビーイング・エコノミー」の考え方と似ている部分が多い。しかし、後者のほうがずっと明快だ。なぜなら、人間の健康と地球の健康の程度を測る指標がすでにあるからだ。

例えば、WHO(世界保健機関)は世界の平均寿命や母子死亡率といった数字を発表している。動物については、IUCN(国際自然保護連合)が絶滅の危機に瀕している野生生物の最新のレッドリストを公開している。草木の種類数も同様に追跡可能だ。しかし「リジェネラティブ」に関するこのような指標はない。

本当の意味での「リジェネラティブ・エコノミー」の進展を担保するためには、それを裏付ける普遍的な原則と、成果を定量化する統一的な方法が必要だ。それがなければ「リジェネラティブ」という言葉は無意味なものになり、例によってグリーンウォッシュ企業や気候変動否定論者に乱用されるだけだ。

このことを踏まえて、コミュニケーションに携わる私たちは、言葉の使い方に慎重になることを改めて心がけたい。「サステナブル」という言葉はもはや重要ではない、などと決めつけてはならない。「サステナブル」は環境だけに関する言葉だと多くの人に誤解されてはいるが、人間と地球の両方にとってインクルーシブでレジリエントな未来を築くという意味で依然として重要な言葉だ。

国連は「サステナブル」を「未来の世代が自らのニーズを満たすことを妨げずに、現在のニーズを満たすこと」と定義している。これを実現するためには、自然界の回復・復興・再生(regeneration)が不可欠だ。

「リジェネラティブ」を単なる流行にすべきではない。ポジティブな印象と安心感を与えるために何にでも貼り付けられるラベルにしてしまってはならない。「サステナブル」や「リジェネラティブ」といった言葉を使う人は、常に具体的な事柄、考え、影響と結び付けて考える必要がある。言葉とそれが意味するものは社会全体に影響を与え得るため、慎重な使い方を求めたい。

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