まちづくりとSDGsを掛け算する「大丸有SDGs ACT5」、9月からSDGs映画祭開催

東京の大手町・丸の内・有楽町(以下、大丸有)には多くの企業が集まり、多くの人の流れがある。このエリアで企業の枠組みを超えて共にSDGs達成に取り組んでいるのが「大丸有SDGs ACT5」だ。2020年から三菱地所や農林中央金庫など11の企業と団体が連携。SDGs達成に向けた5つのACT(テーマ)から、エリア内の企業・団体・個人の参加を促進、さらにその効果をデータ検証し、社会課題の解決につなげることを目標にしている。取り組みを始めて4年目。これまでの成果や目指すこと、メインイベントである「大丸有SDGs映画祭2023」について、実行委員会・運営委員長を務める三菱地所の井上成氏と映画キュレーターのアーヤ藍氏に話を聞いた。(松島香織)

まちづくりとSDGsを掛け算する壮大な社会実験

井上成氏

SDGs目標は17あるが、大丸有SDGs ACT5が取り組みテーマとしたのは、「サステナブルフード」「環境」「ひとと社会のWELL」「ダイバーシティ&インクルージョン」「コミュニケーション」の5つだ。その理由を井上氏は、「SDGsには、自分たちの利益や成長を優先させ過ぎて社会や地球がおかしくなるのはいけない、という考えが根底にある。だが取り組み範囲が広く、日本のビジネス街にある企業で構成された団体に何ができるのかを考えたとき、取り組み方法やテーマが違ってくると思った」と説明する。

2020年からの3年間は、参加者がどういうテーマに関心を持っているのかや、誰が中心になって実行していくかなどの体制づくりに注力した。「大丸有SDGs ACT5という、持続的な活動が生まれてきたことが成果」と井上氏はこれまで取り組んできたことに自信をのぞかせる。

5つのACTの取り組みには、大丸有エリアを中心に回収BOXを設置して呼びかける古着の回収や、ジョギングをしながらまちのごみを拾う北欧発のスポーツ「プロギング」の開催などがあり、参加するとポイントが付与される仕組みになっている。この「ACT5メンバーポイント」は買い物を含めたSDGs活動に応じポイントが付き、貯まったポイントは、サステナビリティに配慮した商品との交換や、SDGsに貢献する団体への寄付などに利用できるという。

井上氏は、「こうしたアプリを利用したポイント付与も、データ分析して活動の参考にしていく。それが社会のシステムとして上手く活用されていくような、まちづくりとSDGsを掛け算した社会実験を目指している」と壮大なエコシステムを描いている。「そのためには、地域の商店会や自治体、他のいろいろな地域などとの連携が必要」だと井上氏は付け加えた。

SDGsを学ぼうと身構えずに、“何か”に出会いに

アーヤ藍氏

大丸有SDGs ACT5がSDGsへの取り組みの間口を広げるため、多くの人に、気軽に社会的なさまざまな視点を知ってもらいたいと開催しているのが、「大丸有SDGs映画祭」だ。今年は9月4日から大丸有エリアで、ホームレスとなった若者と野良猫の交流を描いた「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」や、砂漠化が進むアフリカのミュージシャンが、8000キロに及ぶ植林事業の真実を見つめる「グレート・グリーン・ウォール」など、「いま考えたい世界のコト」をテーマに9作品を上映する。

映画キュレーターのアーヤ藍氏は、「多くの人がSDGsという言葉を知っているが、その背景にどういう目標があって、目標の範囲にどんな人たちがいて、どういう問題を抱えているか。どういう気持ちでその場所で生きているのかなどが、“置いてきぼり”になっていると感じていた」という。映画は、ACT5のテーマに沿いながら、「そのSDGs目標が作られた背景に生きている人たちのことを、映画を通じて知ってほしい」と作品を選んだ。

また、ほとんどの作品が、わかりやすい一つのテーマを描いているのではなく、例えば「グレート・グリーン・ウォール」であれば、気候変動対策をきっかけに経済問題、難民問題など、複雑な問題が絡み合う“問題の連鎖”が見えてくる。その問題に対してアクションを起こそうとしたとき、どういう視点で見るかでその姿勢も変わってくる。アーヤ氏は、「“問題の連鎖”を俯瞰した視点から考えてもらう作品を入れているのは、今年ならでは」だという。観た人それぞれが、テーマを深堀してもらうため、映画の内容に合わせて、有識者や活動家によるトークセッションを設けている。

アーヤ氏は、「できれば自分が関心のあるテーマと、今まで関心がなく触れてこなかったもの(作品)に触れてほしい。映画はハードルが高くないので、何か学ぼうと身構えるのではなく、ぜひ“何か”に出会いに来てほしい」と期待を込めて話した。

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