【関東大震災100年】逗子・小坪で津波経験 紙一重で命つないだ112歳の証言 

100年前の津波の体験について語る高嶋フジさん=7月、横須賀市内

 「津波が来るぞー」。叫ぶ漁師がいなければ、海にさらわれていたかもしれない。100年前の9月1日、関東大震災の津波に逗子・小坪で遭遇した。当時、12歳だった髙嶋フジさん(112)は紙一重で命をつないだ経験が今も忘れられない。節目を前に、あの日の記憶をたどった。「そりゃあ怖かったよ、怖かった。津波のことなんて、知らなかったんだから」

 7人きょうだいの長女だった。1923(大正12)年9月1日午前11時58分。相模湾が目の前の小坪に住んでいた髙嶋さんは突然、激しい揺れに襲われた。「誰かが雨戸を外せって。それを地面の上にね」。地割れをしのぐためだった。

 「雨戸は割れないからいいと思ってたら、地割れがどんどんひどくなって。これじゃいけないから、浜へ逃げようと。浜は砂地で割れないから」。2歳の弟を抱え、余震が続く中を海辺へ向かった。

 ほどなくして、漁師が叫ぶ。「津波が来るぞ。丘へ上がれ」

 今、通ってきたばかりの道を戻り、高台へ。途中で振り返ると、足元まで海水が迫ってきていた。髙嶋さんは「初めてだったから、津波だと分からなかった。もう少しで私もさらわれたかもしれない」と危険が迫った瞬間を振り返る。傍らでは「木につかまったまま流されていった人もいた」という。

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