台風から離れた地点も油断禁物…9月は“竜巻発生”のピーク

21年5月、竜巻とみられる突風の被害を受けた民家(静岡県牧之原市/写真:アフロ)

「日本では毎年8月、9月に台風の発生、接近件数が多く、とくに9月は過去30年で上陸する件数が最も多い月です。台風は猛烈な暴風雨をもたらすだけでなく、台風本体の外側にも帯状の降雨帯があるため、そこでも断続的に激しい雨が降り、竜巻などの突風が発生することがあります。台風本体から離れた場所でも油断は禁物です」

そう注意喚起をするのは、ウェザーマップの気象予報士・原田雅成さんだ。8月15日、和歌山県潮岬付近に上陸後、近畿地方を縦断しながら日本海に抜けた台風7号。兵庫県では矢田川が氾濫し、香美町を中心に111棟が浸水被害に。京都府福知山市では、土砂崩れによる建物崩壊など、近畿地方を中心に大きな被害をもたらした。

そして直撃は免れたが、台風の中心から300km以上離れた静岡県では、車が横転する強い竜巻が発生し、負傷者が出た。

「竜巻は、積乱雲に伴う上昇気流によって発生した激しい渦です。9月以降は、上空に寒気が流れ込みやすくなります。冷たい空気が流れ込むと、暖かい空気は上昇しようとします。こうして積乱雲が発達し、上昇気流が生まれやすい条件がそろうため、竜巻などの突風のリスクが高まるのです」(原田さん、以下同)

気象庁の統計によると、竜巻の月別発生確認数では8~10月が多く、なかでも9月が突出している。日本では、平均して年に25個程度の竜巻が発生(海上竜巻を除く)。竜巻は一度発生すると家屋や鉄柱の倒壊、車両の横転、飛来物の衝突により負傷、死者が出るなど、これまでにもたびたび大きな被害をもたらしている。

「竜巻が発生しやすい場所の傾向としては、海岸線や平野部。東北地方の日本海側から北陸にかけて、関東地方から九州の太平洋側、沖縄で発生確認数が多いです。ただし、竜巻は日本全国どこでも起きると考えておいたほうがいいでしょう」

竜巻は通常の大気現象とは異なり、突然かつ局地的に発生するため、予測や対応が困難であるとされる。とくに今年は、東京都心で過去最多の猛暑日を記録するなど、大気の状態が不安定な日々が続いているだけに、竜巻に関しても十分な警戒が必要なのだ。

そんな“ゲリラ竜巻”から身を守るためにはどうすべきなのか。まずは竜巻が襲来するシグナルについて原田さんに教えてもらった。

■冷たい風

「体感的には、ヒヤッとする風を肌で感じたり、急に冷たい風が吹いてきたなと思ったら危ないと判断してください」

■墨のような黒い雲

「黒い雲が近づき、あたりが急に暗くなる。これは発達した積乱雲が近づいているという兆候です」

■遠くの雷鳴

「昔は、雷が光ってから雷鳴が聞こえるまでの秒数を数えて、雷がどれくらい離れたところにあるかを測る人もいましたが、実際には雷の音が聞こえたら、次はどこに落ちてもおかしくありません。遠くで雷が鳴っていたり、稲光が見えた時点で、積乱雲は近くに迫っています」

■大粒の雨、雹

「大粒の雨や雹が降るのは、かなり危険な状態です。その時点で、発達した積乱雲が上空近くに来ているので、その前段階(冷たい風、黒い雲、遠くの雷鳴)のうちに安全確保をしましょう」

では、次に身の安全を確保するために取るべき行動とは?

「外出中の場合、頑丈なコンクリートの建物の中に早めに避難してください。車の中や車庫、プレハブの建物などは強風で飛ばされる危険性があるので、近づかないようにすること。家の中にいる場合は、窓ガラスから離れ、なるべく家の中心部にある部屋に移動しましょう」

万一、屋外で周囲に避難できる頑丈な建物がなかった場合にはどうすれば?

「側溝など、くぼんだ箇所で身をかがめて、少しでも安全を確保し、被害を最小限にするための行動を取ってください」

気象庁の3か月予報(9~11月)では、積乱雲の発生がフィリピンの東から西部太平洋赤道域で多いと予想されている。すでに、この海域で新たな台風9号、10号が発生しており、日本に接近する可能性も。

いつ自分の身に襲来してもおかしくないゲリラ竜巻の恐怖。できるだけ落ち着いて対処できるように“いざそのとき”を想定しておくことが大切だーー。

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