インボイス 準備大詰め あと1カ月 茨城県内周知なお課題

インボイス発行事業者の登録の説明を受ける男性(右)=水戸市桜川の水戸商工会議所

消費税のインボイス(適格請求書)制度が始まる10月1日まで1カ月と迫り、茨城県内でも準備が大詰めを迎えている。納税義務のある課税事業者の86%が登録したものの、中小零細企業の中には、様子見だったり、当初から検討していなかったりする事業者も多いとみられ、周知の徹底がなお課題となっている。

国税庁によると、県内では7月末までに約6万7千件が登録した。内訳は課税事業者は5万3千件、免税事業者が1万4千件。課税事業者の登録率は全国平均と同水準となっている。

常陽銀行(水戸市)は、制度についての中小企業向けセミナーを2年前から20回以上開催、延べ約7200人に説明してきた。この1年は2万社以上にヒアリングしながら、具体的に案内してきた。

制度内容や手続きが分からないという事業者への支援も強化。インボイス管理が可能なクラウドサービスを勧め、同時にペーパーレス化も促す。担当者は「対応できていない人へのサポートが必要」とする。

筑波銀行(土浦市)は、取引先に担当者が出張するなど相談体制を強化。周知や登録準備のためのセミナーを開催し、制度の基礎から、実際に登録するまでの手順を紹介しているほか、オンラインでの個別相談にも応じている。

取引先から値引きや取引減を迫られる恐れもあることから、国税庁のコールセンターには毎月数万件の相談が寄せられるなど不安払拭も課題となっている。

水戸税務署は、県トラック協会や水戸小売酒販組合が開催するインボイスの説明会に署員を講師として派遣するなど、企業や団体と連携して周知の徹底に努めている。

売上高が1千万円以下の免税事業者が登録した場合は、インボイスを発行できる代わりに新たな税負担が生じる。免税事業者のままインボイスを発行しないことも可能だが、取引先の税負担が増える仕組みだ。

弁当販売の「いせよし」(水戸市)を営む小川悟さん(61)は「企業や団体からも弁当の注文がある。登録は欠かせない」と話し、水戸商工会議所の職員から説明を受けながら申請した。必要性は分かっていたが、忙しさを理由に手続きを後回しにしていたと明かす。

小川さんは「取引できる体制を取れば、お客にも安心してもらえると思う」と話した。

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