人間国宝の狂言師・野村万作さん、3年半ぶり青森で指導 60年来交流の愛好家団体に

青森万水会の会員に狂言のせりふを丁寧に指導する野村万作さん(左)

 人間国宝の狂言師・野村万作さん(92)が30、31の両日、青森市で、60年来の交流がある県内の愛好家団体「青森万水(まんすい)会」(川村倖一代表幹事)に狂言指導を行った。新型コロナウイルス感染拡大による中断を経て約3年半ぶりとなった稽古では、野村さんが狂言のせりふ回しや小謡(こうたい)などに熱のこもった指導を見せた。

 野村さんは2008年から2年ごとに県内で狂言の特別公演を開催している。1960年結成の同会は野村さんが地方で直接指導する唯一の団体で、毎年3回の稽古を行ってきたが、コロナ禍で19年12月以降は中断していた。

 31日、同市の東奥日報新町ビルで行われた稽古では「力強さが足りない。もう一回」「言葉の抑揚を大切に」と人間国宝の熱い言葉が飛び交う中、40~80代の会員9人が小謡「掛川」や狂言の演目「魚説法」などを練習。むつ市の後藤憲和さん(51)は「一般愛好家に対してもこれだけの熱量で向き合ってくれる万作先生には感謝しかない」と語り、川村代表幹事(86)も「久しぶりの指導は、変わらず厳しくユーモアにもあふれ、楽しかった」と充実した表情を見せた。

 野村さんは「長いつきあいの青森の方々と久しぶりに顔を合わせ、声を出せて新たな気持ちで臨んだ。稽古にプロ・アマは関係なく、一緒に真剣に臨む時間が持ててよかった」と語った。

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