青森県内ホタテ加工業者、宮下知事に窮状訴え 中国禁輸で対話集会

中国による水産物輸入停止の問題を巡り意見を交わす宮下知事(右)とホタテ加工業者=31日夕、青森市

 宮下宗一郎知事は31日、青森市で対話集会を開き、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出に伴う中国の水産物輸入停止について、県内のホタテガイ加工業者と意見交換した。業者側は販売先を失った加工品の保管料がかさんでいる上、国内で水産物が供給過剰となり、価格が下落していると窮状を説明。宮下知事は「売り先の確保に新しい手を打たなければならない」との考えを示した。

 加工業者5社の幹部が出席した。渡辺水産(むつ市)の渡辺大起常務は「中国向け出荷の見通しが立たず、加工品の保管料の負担が蓄積されてくる」と先行きを不安視。成邦商事(青森市)の笹原真社長は、輸出拡大に向けて設備投資を進めていたとし「大変困っている」と経営への影響を口にした。

 小田桐商事(同市)の岩谷孝社長は中国向けに輸出したホタテが通関できず積み戻されていると説明。50トンが船ごと戻されたほか、輸出停止で350トンの在庫を抱えているという。

 県産ホタテだけでなく、国内最大産地の北海道産が行き場を失い、国内の需給バランスが崩れることも懸念材料の一つ。山神(同市)の穐元美幸専務は「中国だけでなく米国の業者も相場が崩れるとみて、買い控えをしている」と嘆いた。

 業者側は中国に代わる輸出先として、欧州連合(EU)や東南アジアなどの販路拡大に向けた支援を県に要請。青森県では貝毒が発生しない冬場に漁獲されたホタテしかEUに輸出することができず、マルイチ横浜(野辺地町)の横濵充俊社長は「出荷量が多い4月から夏場までの時期は、輸出したくても出せない状況」と課題を指摘した。

 宮下知事は集会後の取材に「国に対して現状を訴え、県としても販路拡大に向けた調査をしっかりとやっていく」と述べた。

 宮下知事が県民から直接意見を聞き、政策立案に生かす「県民対話集会」は今回が2回目。9月にはホタテ漁師との集会も開く予定。

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