【MLB】アクーニャJr.か? それともベッツか? ナ・リーグのし烈なMVP争い

写真:満塁弾で史上初の記録を達成したアクーニャJr.

MLBは8月の全日程が終了。今季のMLBは10月1日がレギュラーシーズン最終日のため、残すところあと1カ月程度となった。有望株が次々に昇格し、ウェーバーで最後の移籍が行われるなどシーズンがラストスパートを迎えており、地区優勝争いやポストシーズン争いが面白くなってくる時期である。

しかし、この時期におもしろいのはチームの勝ち負けだけではない。選手個人のタイトル争いや賞レースの行方もMLBの魅力の一つだが、今季はここにきてナ・リーグのMVP争いがし烈を極めている。

ア・リーグは大谷翔平の2度目のMVPが確実視されており同等の対抗馬がいない状態だが、ナ・リーグはロナルド・アクーニャJr.やムーキー・ベッツの2人のリードオフマンが最有力候補としてしのぎを削っている。

アクーニャJr.はベネズエラ出身の外野手で、デビューした2018年に新人王、翌2019年には41本塁打、37盗塁を記録するなどパワーと足を兼ね備えたスター選手として有名だ。2021年にはプレー中に右膝前十字靭帯を断裂する大ケガを負い、以前のような走力は発揮できないのではないかと危ぶまれた時期もあった。

しかし今季は開幕直後から足が止まらず、4月に12盗塁を決めるとそこから8月まで5カ月連続で二桁盗塁を決めている。足だけでなく打撃もキャリアハイを狙える勢いで、これまでのキャリア5シーズンで一度も打率3割を超えたことがなかったが、今季は首位打者をも狙える位置につけている。打率だけでなく自慢のパワーも発揮しており、前半戦で20本塁打、50打点、40盗塁を記録した史上初の選手となった。

そんなアクーニャJr.の今季成績は8月31日(日本時間9月1日)時点で133試合に出場し、打率.337、30本塁打、83打点、OPS.993、62盗塁。今日の試合で30号満塁本塁打を放ち、MLB史上初の30本塁打&60盗塁を記録した選手となった。なんとこの試合の数時間前にはロサンゼルスで結婚式を挙げたばかりだったというから驚きである。

本来ならばこれほど記録的な活躍を見せているアクーニャJr.がMVP間違いなしと言いたいところだが、今季は同等の対抗馬がいるのがおもしろいところ。その対抗馬となっているのがまさに今日ブレーブスと対峙したドジャースのベッツだ。

レッドソックス在籍時にはア・リーグMVPを獲得し、ドジャースに移籍してきてからも常にトップクラスの活躍を見せているが、今季は序盤から活躍していたわけではなかった。開幕前にはアメリカ代表としてWBCに出場し、決勝戦では最終回に大谷に併殺に打ちとられ悔しい思いをした。WBC出場が調整に影響したのかどうかはわからないが、4月は打率.242で本塁打は3本だけとやや低調な滑り出し。

5月以降は本来のパフォーマンスを取り戻し、7月終了時点では打率.277、27本塁打、68打点、OPS.942。そこから8月に打率.455、11本塁打、30打点、OPS1.355という驚異的なパフォーマンスを発揮し、シーズン序盤からMVP候補と言われたアクーニャJr.の対抗馬となるほどの数字を残してきた。

ベッツの今季成績は8月31日時点で127試合に出場し、打率.317、38本塁打、98打点、OPS1.033、10盗塁。アクーニャJr.に比べると記録としてのインパクトは小さいかもしれないが、実はベッツも史上初の記録を樹立するかもしれない。

MLB公式サイトのサラ・ラングス記者によると、シーズンで一番打者として放った本塁打数38本というのは、アルフォンソ・ソリアーノ(2006年)、ジョージ・スプリンガー(2019年)の39本に次ぐ歴代3位。8月中に38本に到達してしまったベッツが一番打者として史上最多の40本に届く日はそう遠くないだろう。

また、ベッツは総合的な貢献度を図る指標であるWARでもアクーニャJr.を大きく上回っている。『Baseball Reference』が算出しているWARではアクーニャJr.が6.7であるのに対してベッツは7.8。守備の名手としても知られているベッツは今季チーム状況に合わせて外野だけでなく二塁や遊撃を守るユーティリティとしてハイレベルな活躍を見せている。守備貢献度の高さも考慮されて、総合力ではアクーニャJr.をも上回っていると言っていいだろう。

し烈な争いが繰り広げられているナ・リーグのMVP争いには他にもこの2人ほどではないものの有力な選手がいる。史上初の30本塁打&60二塁打が狙えそうなフレディ・フリーマンや、現在二冠王のマット・オルソンらだ。ベッツが1カ月でMVP最有力候補にまでのし上がったように、この2人にも9月の活躍でチャンスが出てくるかもしれない。今後も彼らのパフォーマンスから目が離せそうにない。

© 株式会社SPOTV JAPAN