<社説>24年度防衛省概算要求 沖縄の軍事要塞化予算だ

 沖縄の安全、県民の幸福にはつながらない。軍事要塞(ようさい)化を推し進めるための予算ではないか。 防衛省は2024年度予算の概算要求を決定した。過去最高の7兆7385億円を計上した。政府は23~27年度の防衛費総額を約43兆円とし、中国や北朝鮮を念頭に抑止力を強化する方針だ。23年度当初の6兆8219億円から大幅増となった。

 軍拡競争を加速させる恐れがある。影響を受けるのが沖縄だ。本島や宮古、石垣、与那国などにおける駐屯地拡張、部隊増強の施策がめじろ押しである。地域住民の基地負担は一層高まることになろう。このような予算編成を容認するわけにはいかない。

 宮古島駐屯地と保良訓練場(宮古島市)の施設整備費に約65億円を盛り込んだ。駐屯地の西側を約1.5ヘクタール拡張し、電子戦部隊を配備する方針だ。石垣駐屯地の整備には131億円を計上した。駐屯地西側の用地取得などに充てる。与那国駐屯地では燃料施設整備などに約1億円を盛り込んだ。

 那覇駐屯地は第15旅団の師団化に向けた隊庁舎整備などに47億円。司令部の地下化も進める。空自久米島分屯基地の警戒管制レーダーの更新、北大東への空自移動式警戒管制レーダー配備計画に関連した経費も計上した。

 実戦を意識した「真に戦える自衛隊」を目指す防衛省の意図を打ち出した予算要求だと言えよう。しかし、「戦える自衛隊」は何を守ろうとしているのか、私たちは厳しく問わなければならない。

 今回の概算要求に見られる沖縄の軍備増強は沖縄戦を前にした日本軍増強をほうふつとさせる。1943年以降、日本軍は県内各地の島々で飛行場建設を進めた。44年夏からは日本軍の部隊配備が展開されていった。年末からは、首里城の地下で32軍司令部壕の構築が始まった。

 これらの日本軍増強は「皇土防衛」を目的としたものであり、沖縄戦は本土決戦を遅らせるための戦いでしかなかった。結果的に多くの県民の生命が失われた。この教訓を忘れ去り、今また沖縄の島々を軍事要塞とすることは到底許されない。

 今、日本に求められているのは外交・防衛政策の見直しである。覇権主義的な動きを見せる中国やミサイル発射を繰り返す北朝鮮を見据えながらも、対話による緊張緩和を粘り強く模索するべきだ。

 国連など国際機関の沖縄への誘致がこれまで議論されてきた。国際機関誘致は「基地の島」から「平和発信の島」へ転換するための方策である。沖縄に関する施策で求められているのは軍事要塞化ではなく、平和外交の拠点とすることではないか。

 内閣府は沖縄関係予算として2920億円を概算要求した。政府は沖縄を舞台に平和外交の拠点化を探る施策を積極的に展開してほしい。

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