八朔祭、「男性のシンボル」持った天狗は登場せず 数百年続く福井県美浜町の奇祭

神棒を持ち、見物客の女性を追い回す天狗=2019年9月1日、福井県美浜町新庄
区の役員が参加して営まれた神事=9月1日

 子孫繁栄や五穀豊穣を願う福井県美浜町新庄の奇祭「八朔祭」は9月1日、区内の日吉神社で神事のみが行われた。人口減少や高齢化のため、奉納行列や「樽神輿(たるみこし)」をかついでの練り歩きは行わず、男性のシンボルを模した神棒を持った天狗も登場しなかった。区長は「伝統を未来に残していくため、祭りの在り方を考えていかないといけない」と話している。

 同祭は数百年前から伝わる行事。区内で東西に分かれ、東字は午前中に行列をなして笛と太鼓ではやしを奏でながら日吉神社に向かって歩き、樽を奉納する。西字は午後に八朔音頭を歌いながら樽神輿を担いで練り歩き、同じく日吉神社で樽を奉納する。東西とも露払い役として長さ約50センチの神棒を持った天狗が登場。つつかれた女性は子宝に恵まれるとされる。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020~22年に続き、今年は樽神輿を担ぐ人員を確保できないため神事のみに。来年に向け祭りの実施方法について考えることとした。

⇒【写真】天狗の出番はなかった今年の「八朔祭」の神事

 同祭は9月1日に行う決まりだったが、来年以降は住民らが参加しやすいようにするため9月の第1日曜に行う。祭りの手順の見直しや東西の枠をなくした実施なども検討しているという。

 1日は日吉神社で区の役員が樽を奉納し、神事が営まれた。髙木伊佐男区長(68)は「奇祭といわれ歴史があるのでなんとしても継承していきたい」と話していた。

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