キアヌ、59歳おめでとう!『ジョン・ウィック』最新作公開目前、ファンもスルーしてそうなキアヌ・リーヴス主演の近作を今こそオススメ

『レプリカズ』© 2017 Riverstone Pictures (Replicas) Limited. All Rights Reserved.

我らがキアヌ・リーヴスが、2023年9月2日に59歳を迎える。2014年の『ジョン・ウィック』でアクションスターとして再ブレイクを果たした“ハリウッドの聖人”ことキアヌも、もういくつ寝れば還暦だ。

たしかに、厳しいトレーニングを積んだ上で撮影に挑んでいる『ジョン・ウィック』でもシリーズを重ねるたびに足取りはドタドタ、アクションシーンの端々で身体機能の限界を感じさせるようになってきた。

それでも私たちファンはキアヌの新作が公開されれば劇場に足を運び、哀愁を帯びた背中を、疲れがにじむ横顔を、じっと見つめるのだ。作品の前評判など関係なく、主演だろうが顔出し程度だろうが、そこにキアヌがいれば全力で凝視し、良作であれば大いに楽しみ、迷作であってもせっせと骨を拾って帰るのである。

そんなキアヌが自身の誕生月に、主演シリーズ最新作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を携えて日本に上陸する。ハリウッド俳優らが加入する全米映画俳優組合のストライキの影響でプロモーションはできないが、奇しくも(?)同タイミングで自身がベースを弾くバンド<ドッグスター>の21年ぶりとなる来日公演を行うため、キアヌはいま日本に滞在しているのだ。……今回はどこでラーメン食べるんだろう?

というわけで、キアヌ・ファンを自称している人でもスルーしているかもしれない、もしくは公開されていたことすら知らない可能性もある、キアヌのキャリアでも屈指の問題作をピックアップしてみた。『~コンセクエンス』公開前の“キアヌ柔軟”にも、あるいは傷だらけ&血まみれ“キアヌ詣で”の息抜きにも最適な、抗いがたい魅力を放つ2作品をぜひお楽しみいただきたい。

クレイジー黄泉がえりSF『レプリカズ』

1作目以上の大ヒットを記録した『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年)の翌年、ノリにノッている怖いものなしのタイミングで公開されたSFスリラーが『レプリカズ』だ。公開時から賛否の分かれた作品ではあるが、「とにかく必死なキアヌ」という点においては『ジョン・ウィック』シリーズを大きく上回っている。物語の軸にあるのはズバリ、亡くなった人間を“蘇らせる”ことの是非だ。

キアヌ演じる神経科学者ウィリアムは、人間の意識をコンピュータに移す実験中。そんなとき、愛する家族4人を事故で失ってしまう。悲しみに暮れるウィリアムは家族のクローンを作り、そこに意識を移すという禁忌に手を出してしまい……。

科学の進歩と命に対する倫理観とのせめぎ合いがテーマではあるが、主人公ウィリアムが問題ありまくりな人物というのがキモ。基本的に家族を蘇らせる=実験の成功のことしか考えておらず、これまで築いてきた人生のディテールは完全無視。協力してくれる同僚エドへの態度も酷いもので、なんとも不憫になってくる。

とはいえ、禁忌をおかした者は報いを受ける……的なセオリーに中指を立てるようなクライマックス~結末は衝撃的で、ある意味とても痛快。重要なはずのロボットのクオリティが稚拙なところには狂気すら感じるが、それよりも猛烈にぬぼ~っとしたキアヌのほうが気になってしまう、という信じられない現象が起こっていて驚かされる。

寂しんぼハードボイルド『ブルー・ダイヤモンド』

『レプリカズ』と同年製作の『ブルー・ダイヤモンド』は、シリーズ3作目『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年)の2ヶ月前に日本公開されたクライムサスペンス。公開時は『JW』にあやかってかアクションものとして宣伝されていたが、実際にはざっくりしたハードボイルド小説というか、口当たりはいいのに妙に度数が高いお酒のような不思議な作品である。

本作でキアヌが演じるのは、いくつも危ない橋を渡ってきたらしき宝石商ルーカス。目利きは確かで、扱うのは一級品だけ。顧客はいかにも反社な方々ばかりだが、そのあしらいかたも心得ているようだ。そんなルーカスが希少なダイヤモンドの取引でロシアに出向き、トラブルに巻き込まれて……という展開も王道である。

いま観ると別の味わいが生まれてしまうキアヌinロシアな本作だが、格闘方面の特殊スキルを持たないキアヌが異国の地でギリギリの戦いを繰り広げ、人肌が恋しくなったり、これでもかと硬派にケジメをつけたりする様子は、ちょっと新鮮。唐突なベッドシーンも用意されていて、ファンでなくともまったり楽しめるチル・ムービーだ。

『レプリカズ』『ブルー・ダイヤモンド』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:2ヶ月連続!キアヌ・リーブス」で2023年9月放送

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